【続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!)
【佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】自分の住む地域とつながるオリジナル曲を聴こう!の2回目。今回紹介するのは仙台出身のピアニストで作・編曲家、指揮者の秩父英里さんが書いた組曲「Sound Map ←2020→ Sendai 」です。秩父さんは米国のバークリー音楽大学で学びました。新人音楽家に与えられる数々の賞を受けましたが、コロナ禍の影響もあって一時帰国。仙台地域のミュージシャンとの再会を通じて、実現したのが「Sound Map ←2020→ Sendai 」です。
「Sound Map ←2020→ Sendai 」は空港、バス、河川など、仙台のまちの音を収集し、映像をつなぎながら気鋭の音楽家らしいジャズサウンドに仕立ててあります。初演は2020年7月、仙台市青葉区にある仙台国際センター「青葉の風テラス」で開かれたライブ(仙台ジャズギルド主催)です。コロナの感染拡大が進む中、半屋外になっているテラス環境を生かし、感染症対策を入念に講じながらのライブ運営でした。
初演を聴いた限りでは、あの日、出演したミュージシャンの緊張感が伝わるステージでした。譜読みやリハーサルにかける時間はどれだけあったのでしょうか。初演ならではの、相手の音を確認し、手探りしながらの演奏に触れることができたような気がします。即興演奏や聴衆との「コール&レスポンス」を重視するいかにもジャズっぽい時間でした。
初演の様子を新しい映像作品として再編集した作品がYouTubeで公開されています。仙台市市民文化事業団の助成を受けて実現しました。最後にリンク情報を付記します。「今回の狙いはライブ音源と映像を使いつつも仙台を旅する映画のように楽しんでほしいというところにあったので、映像にも実写など織り交ぜて奥行きを持たせました」(秩父さん)。特筆しておきたいのは仙台フィルハーモニー管弦楽団の山本純さんのチェロ。初演の聴きどころの一つでした。以下、4つのパートに分かれた組曲に関する取材メモの一部です。
Part1 プレリュード 静
(略)
Part2 流
(略)
Part3 iadnes
タイトル「iadnes」は「sendai(仙台)」を後ろから並べています。歩行者が後ろ向きに歩いていく「逆回し映像」を導入部に使っています。時間やものの見え方を逆転させるという、冒険的で抽象度の高い狙いに合わせるかのようなフリージャズ的な演奏になっていたのが印象的でした。山本さんのチェロは管楽器奏者のソロや各パートの動きを終始リードし、フリーが苦手な耳にも、聴きやすい効果をもたらしていました。
Part4 跳
フリーで緊張感に富む「iadnes」から一転、仙台のまつりを象徴する「すずめ踊り」のリズムを生かしているのがPart4の「跳」。ラテン系のリズムにも重なる親しみやすいパートです。組曲から独立した音曲としても十分通用するように思います。百万都市仙台を代表する清流「広瀬川」の流れや、特別仕立ての市内観光バス「るーぷる仙台」の乗降口付近の映像とサウンド。異業種バトルだったはずの山本さんが時折、他のメンバーを楽しそうに見やる様子が映像ではしっかりとらえられていました。管楽器チームが交代でソロを重ねるに伴い、サウンドの厚みが徐々に増していきます。秩父さんのピアノも「Take The A Train」のイントロの音列をチラ見せしながら余裕たっぷりに進むのでした。ジャズ音楽を楽しむのに果たして映像は必須か?という、長年の個人的な問題は残っていますが、目をつぶって聴き直すだけでまた楽しい世界が広がるのでした。
「Sound Map ←2020→ Sendai 」は、身近なミュージシャンや映像作家、音響作家らとの接点を一つひとつ育むように生み出されました。コロナ禍を克服する地域由来のモデルといってもいいような気がします。
▶「Sound Map ←2020→ Sendai」のリンク情報は以下の通りです。
【この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。
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