【続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!)
【佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】宮城県文化振興財団の文化芸術応援事業「トモシビ・プロジェクト」(2020年度、2021年度)を紹介します。オミクロン株が急拡大する中、文化芸術の分野で活動を続けているみなさんを支援する取り組みです。
2020年度69組(200人)、2021年度61組(216人)の合計130組(416人)の作品(音と映像の組み合わせ)が選ばれ、ネットで公開されています。連載の意図に合わせて、ここではジャズの分野、特にオリジナル楽曲に絞って紹介しますが、トモシビ・プロジェクトの一覧を見る限り、宮城の身近な文化芸術活動は想像以上に多彩です。トモシビ・プロジェクトの一覧からぜひご覧ください。リンク情報は最後に付記します。
仙台中心にさまざまなジャンルで活動しているベーシスト黒瀬寛幸さんのグループによる「I HAD NO DOUBTS」(2020年度)。黒瀬さんは弦を叩き、指で引っ張る「スラップベース」奏法の達人として知られています。そう言えばその昔「チョッパーベース」という呼び名があったと思うけれど、あれはどこに行ったんでしょう。
「I HAD NO DOUBTS」はスピード、切れ、ドライブ感が好物な人におススメ。リズムの面白さで語れるジャズの典型です。黒瀬さんのベースはエネルギー満帆時でも音の一つひとつに流れを感じるのは気のせいでしょうかじょう。弟のドラマー黒瀬理知さんがこれまた一家相伝(?)級の「切れ」を縦横無尽に発揮し、兄のリズムを支えます。菊本健朗さんと勝部彰太さんのサックスが提示するテーマ(主題となるメロディー)は同種2管ならではの心地よさ。アドリブはどちらも、もっと聞きたい感じです。キーボード担当の竹野靖子さんは終始、リラックスして余裕たっぷり。スピード感あふれる演奏で肩から力を抜けるまでになるにはどれほどの時間と鍛錬を要するのでしょうか。
黒瀬グループは2021年度にも「雨の美しさ」をモチーフにした「Rain Stops」で選ばれています。黒瀬さんはウクレレも担当。最近、Rain StopsとI HAD NO DOUBTSを含めたラインナップで初めてのソロCD「Djavaboo」を発表しました。
2021年度選定の「森に集う」は、宮城県川崎町青根にあるお菓子工房Studio Fahrenを舞台に、お菓子作家高木雅美さんと最近、仙台から青根に工房を移した画家古山拓さん、サックス奏者の名雪祥代さんの3人によるトークショーとジャズを組み合わせた映像作品です。
「森に集う」のために名雪さんが書き下ろしたのは「Fahren’s Song〜魔法の森へ」。大垣涼太(ギター)、廣海大地(サックス)、齋藤寛(パーカッション)さんら仙台地域で活躍するミュージシャンが共演しています。アーティストが大都市から自然豊かな環境に活動の場を移したときの経験を、言葉とジャズに翻訳し共有しているかのようです。いい空気と時間を感じることができるはずです。
地域に根を張りながら音楽活動をするミュージシャンにとって、自分が住む地域とグローバルな世界の間に自分なりに有効なステージをどれだけかまえられるかがミソです。新型コロナの感染拡大はミュージシャンらの仕事機会を奪い、創造活動の現場をひどく混乱させました。一方、YouTubeやFacebookなどを活用して共同制作したり、音楽活動からにじみ出てくる多様な動画コンテンツを武器にリスナーとの新しい関係を結ぼうとする動きが活発になっています。
デジタル技術やインターネットを活用しながら新しいステージや機会をとらえるセンスはアーティストにとって新たなテーマになりつつあります。ジャズに限らずトモシビ・プロジェクトで紹介されている事例をよく見ると、創造活動の現場で培ってきた人のネットワークが何よりも大事。コロナ禍の中で新しいプロジェクトをおこしながら、新しい技術や人のネットワークをより強靭なものにする試みを多様な形で支援する必要を感じます。
以下、トモシビ・プロジェクトで選ばれた動画作品のリストです。
▶みやぎ文化芸術応援プロジェクト「トモシビ・プロジェクト」2020年度(令和2年度)作品一覧
https://miyagi-hall.jp/foundation/archives/1986
▶みやぎ文化芸術応援プロジェクト「トモシビ・プロジェクト」2021年度(令和3年度)作品一覧
https://miyagi-hall.jp/foundation/archives/2428
【この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。
これまでの連載はこちら
*TOHOKU360で東北のニュースをフォローしよう
X(twitter)/instagram/facebook