【続・仙台ジャズノート#42】ああ、大リーグボール養成ギプス

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】ごく身近な出来事の備忘メモ代わりに使っているFacebookは、古い書き込みを突然思い出させてくれます。最近も、3年前(2019年10月)に書いた文章がいきなり出てきました。ジャズの基礎の、またその端っこで楽しくやるには、あえて自分に制約を課す必要があるという、とってもストイックなお話。やはりそうなのか、と思いながらあらためて読み返しました。以下、若干の編集を加えて引用します。

忘れたころに変化球を投げてくるFacebookさま。「イッタイ、ワタシハ、ドコニイクノデショウ」

「ピアノでもキーボードでもいいからコード(和音)の響きを一つひとつ確認する練習を始めた方がいいよ」。宮城県大崎市でもう25年も一緒に活動しているグループのリーダーでサックス奏者のAさんがアドバイスしてくれました。この問題はアルトサックスの個人レッスンを受けているサックス奏者、名雪祥代さんからもほとんど初対面に近いタイミングで言われていました。

大学でドラムを始め、以来、ロックやブルースを自己流で演奏してきました。このバンドでも20年近く、ドラムを担当していました。無理言って、アルトサックスに移ってから丸4年。本来、リズム楽器にも、理論や実践に関する分析や解析がつきものなのですが、メロディ楽器を実際に触ってみて、足りないことがあまりにも多いのに戸惑う以外にありませんでした。

要するに基本的なセンスというか、才能の有無を日々、試されているようです。かなりの重圧です。嘆いても始まらないのでどこかでキーボードを調達することにします。イッタイ、ワタシハ、ドコニイクノデショウ。汗。

我ながら厳しい話。自分の悩みをぶちまけています。特に音を聴き分ける力の乏しさには自分でもあきれています。いろんなタイプのスケール(音階)やフレーズを覚えようとしても、練習の並びでしか頭に入りません。音の並びを変えると、元の音の並びとの関係が分からなくなります。コードを構成する音がド・ミ・ソ・シだとして、それぞれの音の性質・関係がなかなか頭に入りません。自分が歌ったり、楽器で演奏したりした音が頭の中の五線譜に書かれない。またはその逆に五線譜に書いてある音を自分で歌うことが難しい。そもそも頭の中に五線譜が存在しない状態-と言えば分かってもらえるでしょうか。

小学校で「九九」を覚えるときに各段の×1,×2,×3・・と順番に暗記できたとして、掛ける数字を入れ替えたり、逆順で答えを述べたりするのはまた別のエネルギーが必要だったような・・。そんな感じです。スケールを順番に覚え、アドリブに使おうとしても、たいていの場合、曲にはならない、と言われるのが通り相場です。

もちろん、安価なキーボードを買ってあります。必要に応じて時々音を確認しています。あれから3年、振り返ってみると、結局のところ、安易な道はないという点に尽きるようです。苦しくても、負担でもとにかくやってみる以外にない。実際にやらないでいて理屈をこねているよりも、稚拙でも、ゆっくりでもいいから実際に踏み出してみて、何かが見えてくるのを待つ以外にない。何が見えてくるかがあらかじめ分かればまだいいのですが、実はそれも、よく分かりません。仮に何かが見えても、覚えきれない、すぐに忘れるということも、よくあります。

ほとんど一人合点で納得しているのは、この回のタイトルに使った「大リーグボール養成ギプス」的な環境に自分を追い込むしかないかもしれないという点です。「大リーグボール養成ギプス」を知っていますか?その昔、「巨人の星」という熱血少年野球漫画(原作;梶原一騎、作画;川崎のぼる)の主人公「飛雄馬」を鍛える頑固おやじ「星一徹」が息子の身体に強力なばね式のギプスを着けさせて鍛え、大リーグへの夢を託す物語です。サックスの基礎的なレッスンに「身体拘束」とは物騒なことですが、開き直りならだれにも負けない「シニア真っ最中」の身にはむしろ楽。いろいろな制約を自ら課してひたすら繰り返し練習するうちに見えてくる「何か」を楽しみにしています。

Swingin’ Standards with Buddy Bregman and his dance band!

【ディスクメモ】Swingin’ Standardsは、1950年代半ば以降、ビッグバンドリーダー、編曲者として活躍したバディ・ブレグマンのビッグバンドによる作品。1959年の収録です。聴いて楽しいスタンダードが並んでいます。収録曲は

My Buddy, All Of You, In A Mellow Tone, I Love Paris, It’s All Right With Me, Too Close For Comfort,など10曲。In A Mellow Toneは今、バンドで練習している曲。自分の譜面を見ながらあらためて楽しみました。

メンバー構成はトランペット5、トロンボーン4、バストロンボーン1、テナーサックス3、バリトンサックス1にリズム隊がピアノ、ギター、ベース、ドラムです。

テナーサックスを担当しているボブ・クーパー、ビル・ホルマン、リッチー・カミューカはいずれもスタン・ケントン楽団の出身です。ホルマンとカミューカは同時期に在籍。クーパーはちょっと先輩にあたります。このバンドにアルトサックスが入っていない理由をご存じの方は教えてください。ギターのジム・ホールはまだ29歳。ドラムのメル・ルイスも30歳です。スピード感あふれるドラミングからウェストコーストジャズの空気が伝わってくるようです。

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

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