【続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!)
【佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】前回、少年野球漫画「巨人の星」の星一徹が息子の飛雄馬を「大リーグボール養成ギプス」で追い込んだことを紹介しながらジャズ音楽の基本をマスターするには「身体拘束」が必要-と、かなり乱暴なことを書きました。幸いなことに現代はあり余るほどの情報に囲まれた暮らしが広がっています。ジャズレッスンをサポートしてくれるツールの類もいろいろあります。興味関心を意識して高めながら取り組むことで、ときには、理論書にも載っていない自分だけのこつを身に着けることができるかもしれません。退屈で敬遠したくなる「繰り返し練習」を少しでも楽しめるようなツールに巡り合えれば言うことありません。
筆者自身も、いろんな人にツールを勧められました。そのなかで特に便利に使っているツールの一つが「iReal Pro」です。「iReal Pro」はジャズ1300曲、ポップス400曲などを搭載してあります。曲ごとにコード進行があらかじめ記録されています。ピアノ、ベース、ドラムによる伴奏を自動的に演奏してくれます。価格は2400円。キー(調)やリズム、テンポなどを自在に変えることができるほか、自分で新しい曲を入力したり、既存の曲を一部変更したりすることも可能です。
筆者の場合、iPhoneとiPadで使っています。「コードが一部、違っている」とか「ピタリ合うリズムがない」などの声もありますが、曲の一部を範囲指定して繰り返し演奏できるので、アドリブ(即興演奏)超初心者には非常に便利です。いつも利用しているジャズ曲集(通称「黒本」)と異なるコード進行になっている曲もあるので、初心者としては悩みどころですが、理論的な知識がもっと増えれば、コードの違い自体から、学ぶことが多いのは間違いありません。
この種のツールを活用して繰り返し練習できる環境がどれだけ重要かは実際に試してみれば分かります。たとえば「ハーモニックマイナー」と呼ばれる音階の件。「Aのハーモニックマイナースケールは『ソ』に#記号が一つだけの世界」と個人レッスンを受けている名雪祥代さんからだいぶ早いころに口頭で教えてもらいましたが、それが演奏途中で頭に浮かぶようになったのは、iReal Proを活用しながら、同じ曲の中で使われている他のスケールを幾つも繰り返し練習している最中でした。いかにも難しそうに思える「C#」や「G#」のメジャースケールが案外簡単な並びなのに気付いたのも繰り返し練習の最中でした。ジャズの即興演奏に欠かせない「ミクソリディアン」という音の並びを何とか意識できるようになったのは、ブルースという形式をあれこれ試している最中でした。ジャズ的なニュアンスを出すには最適と言われる「オルタード」という音の並びを、簡単な曲なら何とか意識できるようになりつつあるのも、繰り返し練習の最中でした。
最も最近のケースでは、あまりにおっくうで中途半端になっていた「コードノート」を一つひとつ身に着けるのに「iReal Pro」による繰り返し練習が役立っているような気がします。というか、そこまでやらずに覚えようとしても、それは絶対に無理ということが分かってきました。無理に無理を重ねても、どうにもならないので、むしろつまらなくても、何となく音のニュアンスが見えてくるまで繰り返してみようというのが、今現在の心境です。繰り返し練習の環境があって初めて、理屈や順序に沿わない形でやってくる突然の気づきもあります。それはもう「かみさま」とは言わないまでも、自分にはどうしようもない何かに背中を押されているようなものです。
【ディスクメモ】 HAL GALPER/Now Hear This
1977年に吹き込まれたピアニスト、ハル・ギャルパーのリーダーアルバムですが、疾走感いっぱいの日野皓正(トランペット、フリューゲルホルン)が聴きもの。トニー・ウイリアムスのドラム、セシル・マクビーのベースも新鮮味あふれる演奏になっています。
B面2曲目(レコードです)のBEMSHA SWINGがセロニアス・モンクの作品。それ以外の5曲はすべてギャルパーのオリジナル。
そう言えば日野皓正をしばらく聴いていないなあと思ったときに引っ張り出すアルバムです。日野作品はこのアルバム以外にないわけじゃないけれど、共演者との組み合わせがいいのかもしれません。トニー・ウイリアムスの熱はすさまじい。ただ、録音にやや難あり。もったいない。ギャルパーさんって、マッコイ・タイナーと同じ年齢なのに、どうしてこんなにタイナー調なんだろう。マッコイ・タイナーのエネルギーが充満した当時のジャズ界を思い出させます。
【A面】
Now Hear This
Shadow Waltz
Mr.Fixit
【B面】
First Song In The Day
Beshama Swing
Red Eye Special
【この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。
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