【続・仙台ジャズノート#44】ジャズの「体験談」を書くむずかしさ

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】この連載では、60代半ば近くになってドラムからメロディー楽器(アルトサックス)に切り替えた結果、何が起きたかについて報告しています。ジャズ音楽をもっと楽しむため、ジャズ最大の謎である「アドリブ(即興演奏)」に思い切ってタッチしてみた結果についても、思いつくままにあれやこれや書いています。さらにもう一点、拙著「仙台ジャズノート」(2021年3月、金風舎)で報告した地元、仙台圏のジャズの現場の動きをフォローする作業も続けています。

こういう形でものを書いていると、自分にできることと、できないことの区別がついあいまいになりがちです。特に音楽理論に関する理解と実技のレベルを正直に、なるべく実際に近い形で、ありのままに報告するスタイルは予想以上に難しいものでした。「体験談」「実践記」のような、表現上の形を借りて書いていくことは最初から決まっていましたが、実際に始めてみるといろいろな不都合が発生しました。

音楽理論に関する理解はとにかく取材しないと深まりません。ネットを含めて広範で多様な情報を利用できることもあり、取材が過度に先行すると、知識だけが増え、実技レベルとのギャップが大きくなりすぎます。「下手なくせに分かった風なことを言うんじゃないよ」と思われないか。常に気になります。

多くのミュージシャンの努力のおかげでライブイベントが少しずつ活発になってきた=2022年10月1日、宮城県美里町で開かれた「Dotabataライトマルシェ」のジャズライブ

回避する方法は幾つかありました。第1にとにかく練習して実技レベルを少しでも引き上げなければなりませんでした。第2に、取材で得た知識や情報を間接情報や伝聞として記述することを最小限にとどめることでした。これら二つの点をあいまいにすると、「何をえらそうに」とか「知った風なことを書くな」と自分でもすぐに感じるので、分かります。

その結果、取材を通じて得た新しい情報は、その情報を紹介することに意味がある場合以外は「記述不可」。完全に自分専用となります。自分の実技レベルを少しでも引き上げることだけのために限定されます。取材で得た情報は自分の実践を踏まえたうえで、実践報告として紹介する必要があれば書く。単純に専門家の誰それが「●●●」と言っている式の記述は、41回目の「どきどき『4バース』が楽しい」で紹介したビル・エバンスのインタビューのように、引用によほどの理由がある場合に限られます。

ジャズ音楽を楽しむための入り口はあまりに多様なので、この連載の趣旨を自分自身に何度も言い聞かせないと、筆者自身が放浪しそうです。「放浪コース」をたどらないための経過説明でした。

最後に、筆者は地方新聞社の記者として長い間、取材上の特権とも見える「便宜」を利用してきました。たとえば有料コンサートでも主催者の許可を得て、入場料を払うことなく取材してきました。報道の自由や表現の自由などをわざわざふりかざさなくても、「顔」や「社名」でつながる関係は生きていました。この原則は慎重に運用する必要はありましたが、取材活動に金銭を一切、絡ませるべきではないとの思いが強くありました。

定年後、フリーで取材活動を続けるうえで、さすがにそれはまずいだろう。ましてや新型コロナの感染拡大のために仕事がどんどんなくなったミュージシャンの顔を見ていれば、そんな厚かましいことはできません。というわけで「取材するなら入場料を支払う」原則を自分に課しました。筆者の「財政事情」もあって取材対象を厳選することにはなりましたが、新聞社の現役時代、多くの人々に育ててもらったことへの感謝の念もこめながら楽しんでいます。このほか幾つかの実験的な取り組みも含めて、市民メディアの端っこで試行錯誤している次第です。

THE MANHATTAN JAZZ SEPTETTE/ザ・マンハッタン・ジャズ・セプテット

【ディスクメモ】このアルバムは高名な編曲者、マニー・アルバムの提案による企画ものといっていいでしょう。1956年6月の録音です。 アルバムタイトル通り7人のミュージシャンが参加しています。

個人的には「モダン・ベースの父」と言われるベース奏者のオスカー・ペティフォード中心に聴いています。エディ・コスタ(ピアノ)、ハービー・マン(フルート)など、当時、ニューヨークで活躍していたリーダークラスのミュージシャンの演奏も注目です。「マンハッタン」の名称を冠したアルバムや曲は多いので、かえって陳腐な印象がするかもしれませんが、このアルバムをじっくり聴いていると、嫌味のない、おしゃれなアレンジが身にしみてきます。

【A面】

  • KING PORTER STOMP
  • NEVER NEVER LAND
  • LIKE LISTEN
  • SINCE WHEN
  • LOVE OF MY LIFE
  • RAPID TRANSIT

【B面】

  • FLUTE COCKTAIL
  • AT BAT FOR K.C.
  • DO YOU KNOW WHAT IT MEANS TO MISS NEW ORLEANS
  • MY SHINING HOUR
  • THOU SVELT
  • THERE WILL NEVER BE ANOTHER YOU

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

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