【続・仙台ジャズノート#53】49年前の「マーク7」。このサックス、まるで自分を見るようだ

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】音楽を聴く側から演奏する側に回ろうとする場合、どんな楽器に巡り合えるかが重要です。腕を棚に上げて楽器のせいにするわけにはいかないのはもちろんですが、しょっちゅう持ち歩くものなので、自分の楽器が気に入っているかどうかは基本の「キ」のような気がします。

縁あって最近、S社製のアルトサックスを使うようになりました。知っている人は知っている「MarkⅦ(マークセブン)」と名付けられたシリーズです。楽器ごとに識別できるようにつけられるシリアルナンバーを確認すると24万番台でした。1974年から1975年にかけて生産された楽器です。1974年と言えば筆者が社会人になった年です。ということはこの楽器は、自分と同じ時間だけ社会の荒波(?)を受けてきたのだね。塗装が剥がれたり、キーの調子が一部おかしくったって、それはそうだよ、と好感度は初めから高いのでした。

新しい相棒です。心機一転なるか?

S社のサックス、特にMarkⅦに先立つ「MarkⅥ」シリーズはジャズサックスとして高い人気を誇っていることは知っていました。S社というだけで何となく憧れもあったようで、ケースを開けるたびにワクワクします。「今日はどんな音が出るのだろうか」。

結論を先に書いておきます。音が出るかどうか、という点では、これまで使っていたY社製の楽器の方がスムースです。今、手元にあるS社製のアルトサックスは、木管楽器の音程を維持するための部品(タンポ)を交換したばかり。指で押さえることで音程をコントロールするキーもしっかり調整済みです。何しろ古い楽器だし、演奏者としての筆者の力量にも難があるためでしょう。ときどき思いがけない音が出ます。キー操作と楽器保守の両面から研究中です。

いいんです。古色蒼然でも・・。

何度も書いてきましたが、筆者の楽器経験は学生時代のドラムに始まりました。60代半ばでクラリネットに挑戦してみたけれど、あまりの手ごわさにギブアップしてアルトサックスに移りました。もともとアルトサックスに切り替えられたのは、友人夫妻が「試してみる?」とY社の製品を譲ってくれたのがきっかけでした。今回、S社のサックスを使う機会が出来たのも、別のバンド仲間のおかげです。お互い、実際使ってみて気に入るかどうか分からないので、いつでも返却可能な物々交換-という緩い決め事になりました。Y社のサックスは、まだ、アルトを始めたばかりのころ、個人レッスンを受けている師匠から「それ以上の楽器を望むならもっと頑張る必要がある」と言われていました。つまりは、安易に楽器のせいにせず頑張れという意味だったのでしょう。あれからほぼ10年。年が改まるのに合わせて少し気分を変えたいと思った次第です。

The Mitchell- Ruff Duo JAZZ MISSION TO MOSCOW

【ディスクメモ】Dwike Mitchell(piano)とWillie Ruff(bass &French horn)のデュオアルバム。1959年9月、ニューヨークのタウンホールでのコンサートの様子が記録されています。

前回、アル・コーン指揮の「JAZZ MISSION TO MOSCOW(1962年)を紹介しましたが、このレコードも旧ソ連(1959年)ツアーの帰国後に成果披露のために開かれたコンサートの記録です。当時の米国のジャズミュージシャンの間に、旧ソ連や東欧、中国などにジャズ音楽を広げる使命感のようなものがあったことをうかがわせます。旧ソ連ではアメリカの音楽は禁止されていましたが、地元の合唱団との共演などの名目をうまくつくりながらコンサートを実現させたそうです。

Dwike MitchellとWillie Ruffはライオネル・ハンプトン・オーケストラの出身者。1955年、ミッチェル・ラフ・ジャズ・デュオを結成したようです。

B面(レコードです)3曲目のMOSCOW NIGHTSは、アル・コーン指揮の「JAZZ MISSION TO MOSCOW」でも「MIDNIGHT I N MOSCOW」というタイトルで取り入れられた「ご当地ソング」。ロシア語のタイトルは「ロシア郊外の夕べ」だそうです。美しい曲です。日本では「モスクワの夜はふけて」という邦題で知られているでしょうか。筆者はザ・ピーナツの邦題「モスコ―の夜は更けて」で覚えたようです。(こんな話題をゆったり語れる日が1日も早く来ればいいのですが・・。ウクライナに平和が訪れますように)

▶Side A

  1. WALKING
  2. LOVE LOOK AWAY
  3. GYPSY IN MY SOUL
  4. WHEN LIGHTS ARE LAW

▶Side B

  1. SQUEEZE ME
  2. DAAHAUD
  3. MOSCOW NIGHTS
  4. MY RIVERIE

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

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