【続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!)
【佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】ジャズ音楽を演奏する立場で楽しんでいる人たちに人前で演奏する機会を持ってもらおうという「超低敷居セッション」にアルトサックスで参加しました。「いよいよ春ですね」「もう雪は降らないよね」。仙台市内でもそんなあいさつが交わされた2023年3月5日、めっきり春めいた気候が心地よいジャムセッションとなりました。
会場となった仙台市青葉区のジャズバー「モンドボンゴ」にはそれぞれの楽器を手に演奏者が集まり、全部で19曲が演奏されました。ピアニストの白戸エミさんをリーダーとする「SOUND JAM」というグループがホスト役(伴奏やソロ演奏を通じて参加者をサポートする役割)を務めてくれました。昨年7月に続き今回が2回目です。
この連載は主観的な体験記の形をとっているので、自分自身が演奏する機会があると「ホイホイ」と出ていき、がっかりしたり、自己嫌悪に陥ったりしています。60代半ばで始めたアルトサックスなので、とにかく演奏する機会を増やさないことには話になりません。さすがにプロやプロ志向の強いみなさんが参加するジャムセッションはハードルが高いので、参加するにはかなりの勇気を要しますが、初心者にも参加しやすいジャムセッションがあれば、音楽教室でレッスンを受けたり、独学で勉強している人にとって非常に有意義な機会になると思われます。
「超低敷居セッション」の様子は「飛び入り自由のジャムセッションに挑戦」の見出しで紹介しています。
今回はジャムセッションに参加した結果、筆者に何が起きたかについてなるべく詳しく報告します。「超低敷居セッション」では、あらかじめ自分が演奏したい曲を決めて主催者に連絡します。曲や楽器編成を考慮して演奏する順番が決まります。まったく知らないミュージシャン同士が火花を散らすこともある本格的なジャムセッションとは少し違います。セッションの段取りについても優しく説明があるので、なるほど垣根は限りなく低いのが特徴です。
初心者(あるいは中級者も?)は自分の出番が近づいてくるだけでドキドキするもの。演奏したい曲を選ぶことができ、演奏順が分かるだけでも、参加する側のハードルは低いはずです。
今回、筆者が提出した曲はジャズのスタンダード「IN A MELLOW TONE」(作曲デューク・エリントン)でした。月1回の個人レッスンの課題となっている曲です。やっと曲全体の構造や即興演奏(アドリブ)する際の考え方などが頭に入ったので、人前でどのくらい演奏できるかを試す意味がありました。ビッグバンドで演奏されることの多い曲なので、小人数のコンボ編成で演奏するイメージがわかないのが悩みです。
セッションを通じていろいろな点がはっきりしました。練習でうまくこなせない個所がある場合、本番でもミスにつながる可能性が高いようです。今回、人前で吹くのは初めての楽器を使ったので、キーの操作とアンブシュア(口の形)に神経を使わなければいけない個所がありました。左の親指と人差し指の動きに気を付けないと、うまく音が出ない場合があると事前に分かっていたのに、セッションでは克服できませんでした。
それに音色。本来はもっと太い音も出るのに高域に偏った音づかいになっていました。おそらく間違わないようにと考えるあまり、呼吸も筋肉も縮こまってしまったのだと思います。胸やのどを開いて大きく腹式呼吸する必要があるなあ。途中で気づいて中音域をあえて選んだら今度は音程が離れすぎて、聴く人には異様な感じがしたかもしれません。音の選び方は音色のバランス(?)と関係があることも見えてきました。次回はもっと意識しよう。
アドリブではコード進行に沿った音づかいが必要とされています。最近の個人レッスンで強く指導されている問題です。セッションでは、コードの動きを最後まで注意しながらアドリブできたように思います。だから悪い癖のフォークソングのようなフレーズにはなりませんでした。(まだ安心はできない)
今回は会場からトランペットの人が飛び入りで参加してくれました。その結果、テーマの演奏方法で迷いが生じました。一人でテーマを吹く場合、自分なりに崩して吹くことがありますが、トランペットの人と2管でテーマを吹くときに、サックスだけ独自に崩すと、明らかに調子外れに聴こえることがあるようです。複数の楽器でテーマを吹く場合は、楽譜通りにしっかり吹く必要があるのでしょうか。崩し方にもセンスが求められるのかもしれませんね。
最後にこの日のセッションのために主催者が準備してくれた「セットリスト(曲順表)」には参加者が希望した20曲ほどが並びました。通称「黒本」と言われるジャズスタンダード集から選ぶことになっているので、実際の演奏を聴いて気に入った曲を後から確認するなどのおまけの楽しみもできます。
という具合で、ジャムセッションは本当にためになるのです。それにしても「超低敷居セッション」の準備にかかわる人の負担はさぞ大きいだろうと思います。セッションを進行してくれたトランペットのNさん、ありがとう。
HANDCRAFTED/KENNY BARRELL ハンドクラフテッド/ケニー・バレル
【ディスクメモ】ギターのケニー・バレルのトリオが1978年2月に吹き込んだアルバム。ベースがレジ―・ジョンソン、ドラムはシャーマン・ファーガソン。ギターの魅力を知るための名盤は数あるけれど、このアルバムほど肩から力を抜いて楽しめる作品はありません。ギターの録音はこうあってほしい。個人的には思い切り好みです。ジャズギターをライブで聴くと、他の楽器の音量との兼ね合いでしょうか、細かい表情をとらえきれないことが多いのですが、この名盤はギターの弦がこすれる音や、ケニー・バレルのため息のようなものまで聞こえてきます。
ビル・エバンストリオの名演で好きになった「YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC/あなたと夜と音楽と」「ALL BLUES/オールブルース」などの選曲が素晴らしい。A面2曲目の「SO LITTLE TIME」はケニー・バレルのオリジナル。アコースティックギターの演奏。美しいバラードからラテン調が少し入る展開には感心させられます。普通はこの曲から聴くことが多いです。
▶Side A
- YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC
- SO LITTLE TIMES
- I’M GLAD THERE IS YOU
▶Side B
- ALL BLUES
- IT COULD HAPPEN TO YOU
【この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。
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