【仙台ジャズノート】プロとして60年 ビッグバンドリーダー白石暎樹さん

【佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】白石さんはトロンボーン奏者で、音楽的なキャリアは60年。東北では唯一のプロのビッグバンドリーダーとして知られています。長い間暮らした仙台市から昨年、隣町の宮城県利府町に転居しました。昭和40年代の「キャバレーの時代」にビッグバンドを立ち上げ、プロの音楽家としてテレビ番組などの仕事に携わってきました。白石さんとの縁で腕を磨いた演奏家は数知れません。昭和42年(1977年)に白石さんが自己名義で結成したビッグバンド「サウンドスペース(SOUND SPACE)」は現在もなお不定期の活動を続けています。「サウンドスペース」には東北各地の演奏家が白石さんの声掛けに応じて参加します。

白石さんは長いキャリアを生かしてアマチュアの指導も続けており、地域の音楽イベントの立ち上げに主導的な役割を果たしてきました。白石さんの提案をきっかけに生まれたのが仙台市太白区長町のJR長町駅前で毎年秋に開かれてきた「ビッグバンド・フェスタ」です。

今年9月27日に予定されていたビッグバンドフェスタは新型コロナウイルスの影響を受けて中止が決まっていますが、プロのビッグバンド「サウンドスペース」とアマチュアビッグバンドが参加するユニークな音楽イベントとして育ってきました。長町地区は仙台の副都心として急成長していることもあり、「ビッグバンドジャズを聴ける街」として、都市づくりと音楽の観点からも注目されています。

以下、白石さんの長いキャリアを振り返りながらプロの演奏家たちが置かれている状況やアマチュアの音楽活動について話を聞きました。

「プロとして進む道は厳しい」と語る白石暎樹さん

-白石さんご自身の活動について教えてください。

白石:放送局の仕事で演奏したり、歌手からの依頼を受けてバックを務めるケースがほとんどです。NHKののど自慢は半世紀近く担当してきました。自分は舞台の陰でコーディネートするだけですが、プロのミュージシャンが演奏できるような企画を考え、仕事を作りだす役割も大事だと考えています。

-白石さんはもともとジャズの人?

白石:今、なぜビッグバンドをやっているかといえば、昔「グレン・ミラー物語」のような映画があったからです。映画を見て「ああ、いいなあ」と憧れた。高校に入ってブラスバンドで楽器を演奏するようになってから「グレン・ミラー物語」のような音楽をやってみたい」と思いました。

-プロとして最初に仕事をしたのはどんな場でしたか?

白石:仙台のキャバレーでした。二日町にあったソシュウが最初。錦町のクラウンでは2年か3年続きました。クラウンからソシュウに戻ってやっているうちにニュージャパンというキャバレーがオープンするというので、そちらに移った。そのころが大変な時期で、メンバーたちもキャバレーの給料ではやっていけないぐらい安かった。何と言ってもアルバイトのボーイさんよりも安いんだから。

それで東京から来る歌手の伴奏などをアルバイトとして引き受けるようになった。われわれを雇う店側は「アルバイト」をやられるとあまり気持ちいいものではなかった。そんなわけで次第に居づらくなり、ニュージャパンを最後に独立しました。そのときにグルーヴィン・ハード(Buddy Rich / Groovin Hardからとった)から「サウンドスペース」というバンド名に変えたんです。

-プロのビッグバンドとしては東北では唯一?

白石:レギュラーメンバーでビッグバンドを続けている例は東北にはもうないかもしれません。とにかくプロとしていい仕事をしたいと考え、プロの立場にこだわってやってきました。こういう時代にプロとして頑張っている仲間がいることが貴重です。彼らがプロとして演奏する機会をなるべく多く作りたい。

-プロのための環境を作るにはどうすれば?

白石:プロとして音楽、ジャズを演奏する機会が大なり小なり増えないとどうしようもない。ミュージシャンだけが頑張ってもなかなかうまくいかない。市やまちなど、公的な組織が考えて動いてくれればと思います。

-昭和40年代以降の「キャバレーの時代」と比較してどうでしょうか。

 白石:厳しいですね。今はとにかく大変な時代です。キャバレーやナイトクラブの仕事があった時代に比べると、まず演奏する場所自体が少ない。アマチュアの人たちは、自分で参加費を出してでも出演したいということがありますが、プロはそういうことはしません。あくまでも、仕事として演奏するので、何らかの報酬をいただいて演奏する。お金を自分で出してまで演奏させてくださいということにはならない。

-機会を増やすにはどうします?

白石:私自身はビッグバンド専門なので、他のことにはあまり詳しくないが、多くの協力者と一緒に企画を作って実践する以外にありません。一人のミュージシャンとして、もっと演奏機会が多ければいいなと思います。音楽だけで生活できる時代を何とかして作らなければ。なかなか大変ですけど。(笑)

【連載】仙台ジャズノート
1.プロローグ
(1)身近なところで
(2)「なぜジャズ?」「なぜ今?」「なぜ仙台?」
(3)ジャズは難しい?

2.「現場を見る」
(1) 子どもたちがスイングする ブライト・キッズ
(2) 超難曲「SPAIN」に挑戦!仙台市立八木山小学校バンドサークル “夢色音楽隊”
(3)リジェンドフレーズに迫る 公開練習会から
(4)若い衆とビバップ 公開練習会より
(5)「古き良き時代」を追うビバップス
(6)「ジャズを身近に」
(7)小さなまちでベイシースタイル ニューポップス
(8)持続する志 あるドラマーの場合
(9)世界を旅するジャズ サックス奏者林宏樹さん
(10)クラシックからの転身 サックス奏者名雪祥代さんの場合
(11)「911」を経て仙台へ トランペット奏者沢野源裕さんに聞く①
(12)英語のリズムで トランペット奏者沢野源裕さんに聞く②
(13)コピーが大事。書き留めるな/トランペット奏者沢野源裕さんに聞く③

3.回想の中の「キャバレー」
(1)仕事場であり、修業の場でもあった
(2)南国ムードの「クラウン」小野寺純一さんの世界
(3)非礼を詫びるつもりが・・ なんちゃってバンドマン①
(4)プロはすごかった なんちゃってバンドマン②
(5)ギャラは月額4万円 なんちゃってバンドマン③
(6)しごかれたかな?なんちゃってバンドマン④

4.コロナとジャズ
(1)仙台ジャズギルドの夢・仙台出身の作編曲家秩父英里さんとコラボ
(2)ロックダウン乗り越え「未来のオト」へ/作編曲家でピアニスト秩父英里さんに聞く
(3)動画配信で活路を開く/ベース奏者三ケ田伸也さんの場合
(4)「WITH コロナ時代」のプラットフォーム
(5)一歩でも前へ/サックス奏者安田智彦さんの場合
(6)コミュティFMと連携 とっておきの音楽祭の挑戦

5.次世代への視点
(1)地域発のジャズを楽しむ
(2)プロとして60年:ビッグバンドリーダー白石暎樹さん(77)

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TOHOKU360は、東北のいまを東北に住むみんなの手で伝える、参加型の"ニュースプロジェクト"です。経験豊富なメディア出身者で構成される「編集者」と、東北6県の各地に住む住民の「通信員」とが力を合わせ、まだ知られていない価値あるニュースを一人一人が自分の足元から発掘し、全国へ、世界へと発信します。

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