【仙台ジャズノート】コロナとジャズ・コミュニティFMと連携「とっておきの音楽祭」の挑戦

佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】新型コロナウイルスの影響を受けて、多くのイベントが中止となる中で、仙台市で6月7日に開かれる予定だった「とっておきの音楽祭2020」は、仙台圏のコミュニティFM局6社と連携し、ユニークな「ラジオDEとっておきの音楽祭」を実現しました。仙台市青葉区をエリアとするラジオ3の提案をきっかけに生まれた特別番組。コロナの憂鬱を吹き飛ばすような、文字通り「ピンチをチャンスに変える」展開でした。

「とっておきの音楽祭実行委員長」の伊藤清市さん(47)は「ラジオ3さんからの提案がきっかけでした。我々も当日は少数のバンドさんの演奏をスタッフがストリーミング配信するとか、別の取り組みを考えたいとは思っていましたが、ラジオ3さんから話をいただいたので、スタッフ一同、準備作業に取り掛かりました。時間がなかったのでどうかとは思いましたが、うまくいって本当によかった」と振り返ります。

コロナ禍をコミュニティFMとの連携で乗り切った「とっておきの音楽祭」実行委員長の伊藤清市さん
コロナ禍をコミュニティFMとの連携で乗り切った「とっておきの音楽祭」実行委員長の伊藤清市さん

ラジオ3の提案は宮城県内のコミュニティFM局をつないで、ことし出演を希望していたバンドの演奏を特別に編成して楽しんでもらおうというものでした。もともとラジオ3には「とっておきの音楽祭」のサポートステージとして協力いただいた縁もありました。ラジオ3の呼び掛けに、エフエムたいはく(仙台市太白区)、fmいずみ(仙台市泉区)、なとらじ801(名取市)、エフエムいわぬま(岩沼市)、エフエムあおぞら(宮城県亘理町)の5社が応じました。

コミュニティFM局は大きな放送局に比べて視聴範囲が狭く、番組編成のうえでも地域密着がより求められています。同時に「とっておきの音楽祭」のような高い専門性とグローバルな視界を持つNPOとの連携は地域メディアとしての新たな可能性をもたらすはずです。「とっておきの音楽祭」とコミュニティFM局との連携は、そうしたNPOとメディアの可能性を具体的に感じさせる事例となりました。

「とっておきの音楽祭実行委員会」のスタッフたちは、コミュニティFM局で流す2時間分の放送用パッケージの作成に追われました。今年の音楽祭に参加を希望したグループは420団体。それぞれ提出してもらっていた音源や映像を担当のスタッフが確認し、200弱の団体に使用の可否を問い合わせたそうです。ラジオ3から提案を受けたのが4月の中旬で、放送用のパッケージを放送日(6月7日)の3日前に提出するという、日程的にもかなり厳しい段取りでした。提出された音源の確認やYouTubeからデータを抽出する作業など、実行委員が手分けして取り組んだそうです。

障害のある人もない人も一緒に音楽を楽しみ、音楽のチカラで「心のバリアフリー」を目指す「とっておきの音楽祭2020」は、仮に新型コロナウイルスの問題がなければ6月7日に20回目の節目を迎えるはずでした。趣旨に賛同する市民がボランティアとしてかかわる機会にもなるはずでした。特に演奏の場を求めているアマチュアグループにとっては事実上、その年の音楽祭のスタートを切るイベントでもあります。

「何とか実施したいと思ってぎりぎりまで検討しましたが、何と言ってもさまざまな形で参加してくれるみなさまの安全を優先しなければなりませんでした」

手拍子や歓声とともに楽しく盛り上がった「とっておきの音楽祭」(2018年6月3日)
手拍子や歓声とともに楽しく盛り上がった「とっておきの音楽祭」(2018年6月3日)

音楽祭実行委員長の伊藤さんは「コミュニティFMと組んだ音楽祭は他に例がありません。コミュニティFMさんを一つのステージにたとえて一斉に演奏を流す、いわゆるバーチャル音楽祭ですね。各地域のFM局でバーチャル音楽祭が出来れば、それをきっかけに、ライブでも音楽祭をやりたいという方が出てくればうれしい」と話しています。

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

【連載】仙台ジャズノート
1.プロローグ
(1)身近なところで
(2)「なぜジャズ?」「なぜ今?」「なぜ仙台?」
(3)ジャズは難しい?

2.「現場を見る」
(1) 子どもたちがスイングする ブライト・キッズ
(2) 超難曲「SPAIN」に挑戦!仙台市立八木山小学校バンドサークル “夢色音楽隊”
(3)リジェンドフレーズに迫る 公開練習会から
(4)若い衆とビバップ 公開練習会より
(5)「古き良き時代」を追うビバップス
(6)「ジャズを身近に」
(7)小さなまちでベイシースタイル ニューポップス
(8)持続する志 あるドラマーの場合
(9)世界を旅するジャズ サックス奏者林宏樹さん
(10)クラシックからの転身 サックス奏者名雪祥代さんの場合
(11)「911」を経て仙台へ トランペット奏者沢野源裕さんに聞く①
(12)英語のリズムで トランペット奏者沢野源裕さんに聞く②
(13)コピーが大事。書き留めるな/トランペット奏者沢野源裕さんに聞く③

3.回想の中の「キャバレー」
(1)仕事場であり、修業の場でもあった
(2)南国ムードの「クラウン」小野寺純一さんの世界
(3)非礼を詫びるつもりが・・ なんちゃってバンドマン①
(4)プロはすごかった なんちゃってバンドマン②
(5)ギャラは月額4万円 なんちゃってバンドマン③
(6)しごかれたかな?なんちゃってバンドマン④

4.コロナとジャズ
(1)仙台ジャズギルドの夢・仙台出身の作編曲家秩父英里さんとコラボ
(2)ロックダウン乗り越え「未来のオト」へ/作編曲家でピアニスト秩父英里さんに聞く
(3)動画配信で活路を開く/ベース奏者三ケ田伸也さんの場合
(4)「WITH コロナ時代」のプラットフォーム
(5)一歩でも前へ/サックス奏者安田智彦さんの場合
(6)コミュティFMと連携 とっておきの音楽祭の挑戦

5.次世代への視点
(1)地域発のジャズを楽しむ

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