【仙台ジャズノート】アマチュアのみなさんへ ビッグバンドリーダー白石暎樹さん

【佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】東北では唯一のプロのビッグバンドリーダーとして知られる白石暎樹さん(77)のインタビュー後編です。

<前編はこちら>

-アマチュアについてどう受け止めていますか?

白石:アマチュアでも、長い間好きなことを続けて勉強しているうちに腕が上がってきます。プロと競えるような人も実際にいる。でも、プロとしての水準を保つのは並大抵のことではありません。プロとして仕事の依頼を受ける場合、たとえば歌手の伴奏を頼まれるようなときに、少しでも間違えば次から仕事はこなくなる。例えば演歌を演奏する場合、(ジャズを好む人ほど)ちょっと軽く見がちかもしれないが、(日本人には親しみやすいと思われている)演歌ほど難しいものはない。誰もが知っているメロディだからこそ一つのミスも犯せない。プロならその怖さは誰もが知っている。

時には人の紹介もあってアマチュアの人に頼みたいと思うこともありますが、水準の点でこわいものがあります。上手だといわれるアマチュアの人でも、とにかく心配です。どこで何があるか分からない。仕事1本、1本に命がかかっている。それはやはり厳しいものがある。信頼できる紹介があるか、仲間内でも「あの人は大丈夫だ」という確証がない限り、使えません。メンバーが足りない場合はどうしても東京から呼ぶことになります。

「サウンドスペース」とラテンバンドの共演。(1970年代、仙台市内のキャバレー「ソシュウ」で)=白石暎樹さん提供=

-アマチュアを指導するうえで心掛けている点は?

白石:サラリーマンしながら、趣味でアマチュアバンドを組んでいる人たちが大勢います。そのような人たちに頼まれて指導に行くことがあります。音楽を演奏すうえで重要なのは、自分たちの力に合わせて曲を選び、丁寧に演奏することです。

アマチュアの皆さんの中には難しい曲、かっこいい曲に飛びつくケースがあります。熱心に楽器に取り組んでいる人からすれば、自分が挑戦している曲がきつければきついほどやりがいがあるし、楽しいということもあるのは分かります。でも、彼らの演奏を聴く側からすると、とても苦しそうに聴こえ、音楽になっていないことが珍しくない。

選曲段階で、この曲は無理だと思うことが多い。そのバンドの状態からして、今やる時期ではないのになあと思う。そうした無理が許されるのも、アマチュアならではなのかもしれない。だから難しい曲に挑戦することすべてがダメだということではないが、自分たちの力量や練習の質と量をちゃんと分かって演奏しているグループほど心地よいサウンドになっています。

きつい曲、かっこいい曲がいい演奏だと思うかもしれないが、自分の実力が伴ってないのに、そういう曲は選ばない方がいい。正直なところ聴かされる方がたまったものじゃない。とにかく、自分たちにできる曲を選ぶようにした方がいいですね。

―実際にはその判断を自分たち行うのはなかなか難しい。

白石:簡単に思える曲でも、魅力的な曲ならきちんと丁寧に演奏すれば、いい音楽になります。自分たちの力量にあった曲を自信をもって演奏できることが重要です。

-自分たちにできるかできないかではなく、どう聞こえるかをもっと考えた方がいいということですか?

白石:青筋立てて演奏しないとできないような曲はやめた方がいいということです。聴く方も一緒になって青筋立てないと聴けないようではだめですね。

-ジャズ音楽にとってはアドリブ(即興演奏)が重要です。最大の魅力であり、謎と言ってもいい原則についてお聞きします。あらかじめ自分でアドリブを書いておく「書き譜」についてはどう考えますか?

白石:どっちが正しい、どっちが悪いということはありません。どちらでもいいんじゃないですかね。自分で書きとめたアドリブを一生懸命に練習しながら、自分のものをだんだんつかんでいけばいい。いろんな考え方やスタイルがありますが、いいアドリブ、楽しいアドリブを心掛けるようにすれば、いい音楽になるはずです。

仙台市市民活動サポートセンターで開かれた「サウンドスペース」のコンサート(2019年5月25日)=白石暎樹さん提供=

-白石さんが地域の音楽イベントにかかわってきたことに以前から注目しています。

白石:仙台の長町のビッグバンドフェスタでは、山崎邦雄君の顔が広いので、彼を実行委員長としてわれわれプロがサポートする形で始めた。地元の商工会と協力しながら5年ぐらいやった。手作りだし、大変な仕事だった。5年もやったので、そろそろ終わりにしようと決めたところで、地元の経営者のみなさんから逆に継続してほしいという要望が出された。何事も時間がかかります。山崎君に後を引き継いでもらい、われわれは3年に1回ぐらいのペースで出演しようということになっている。2020年がちょうどその年に当たっているので「サウンドスペース」のレギュラーメンバーに集まってもらって演奏するようにしたい。

【編集部注】9月27日に予定していたビッグバンドフェスタは長町駅前商店街振興組合の理事会で中止が決まった。新型コロナウイルスに対応するため。

仙台市市民活動サポートセンターで2019年に開かれた「サウンドスペース」のコンサートのポスター

-地域の人的なネットワークや歴史資源、文化資源を組み合わせ、音楽にかかわることの価値を高める発想が必要です。その意味で地域の歴史にちなんだ曲に関心があります。「サウンドスペース」の演奏では、支倉常長の慶長遣欧使節船サンファン・バウティスタをテーマにした組曲が印象的です。

白石:トランペット奏者の沢野源裕君に頼んで作ってもらいました。サウンドスペースのレギュラーメンバーではサックスのヒロ菊池君の「ひとめぼれサンバ」などもあります。自分が暮らした仙台や宮城という地域に関係のある曲でCDなりレコーディングなりしたいという気持ちは昔からあった。機会があるたびに演奏するようにしてはいるが、何しろ、そういう機会が少ないのが残念。聴いてくれた人は、みんないいねといってくれます。うれしいことです。

【連載】仙台ジャズノート
1.プロローグ
(1)身近なところで
(2)「なぜジャズ?」「なぜ今?」「なぜ仙台?」
(3)ジャズは難しい?

2.「現場を見る」
(1) 子どもたちがスイングする ブライト・キッズ
(2) 超難曲「SPAIN」に挑戦!仙台市立八木山小学校バンドサークル “夢色音楽隊”
(3)リジェンドフレーズに迫る 公開練習会から
(4)若い衆とビバップ 公開練習会より
(5)「古き良き時代」を追うビバップス
(6)「ジャズを身近に」
(7)小さなまちでベイシースタイル ニューポップス
(8)持続する志 あるドラマーの場合
(9)世界を旅するジャズ サックス奏者林宏樹さん
(10)クラシックからの転身 サックス奏者名雪祥代さんの場合
(11)「911」を経て仙台へ トランペット奏者沢野源裕さんに聞く①
(12)英語のリズムで トランペット奏者沢野源裕さんに聞く②
(13)コピーが大事。書き留めるな/トランペット奏者沢野源裕さんに聞く③

3.回想の中の「キャバレー」
(1)仕事場であり、修業の場でもあった
(2)南国ムードの「クラウン」小野寺純一さんの世界
(3)非礼を詫びるつもりが・・ なんちゃってバンドマン①
(4)プロはすごかった なんちゃってバンドマン②
(5)ギャラは月額4万円 なんちゃってバンドマン③
(6)しごかれたかな?なんちゃってバンドマン④

4.コロナとジャズ
(1)仙台ジャズギルドの夢・仙台出身の作編曲家秩父英里さんとコラボ
(2)ロックダウン乗り越え「未来のオト」へ/作編曲家でピアニスト秩父英里さんに聞く
(3)動画配信で活路を開く/ベース奏者三ケ田伸也さんの場合
(4)「WITH コロナ時代」のプラットフォーム
(5)一歩でも前へ/サックス奏者安田智彦さんの場合
(6)コミュティFMと連携 とっておきの音楽祭の挑戦

5.次世代への視点
(1)地域発のジャズを楽しむ
(2)プロとして60年:ビッグバンドリーダー白石暎樹さん(77)
(3)アマチュアのみなさんへ:ビッグバンドリーダー白石暎樹さん(77)
(4)合奏に魅せられほぼ半世紀:佐藤博泰さん(71)①

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TOHOKU360は、東北のいまを東北に住むみんなの手で伝える、参加型の"ニュースプロジェクト"です。経験豊富なメディア出身者で構成される「編集者」と、東北6県の各地に住む住民の「通信員」とが力を合わせ、まだ知られていない価値あるニュースを一人一人が自分の足元から発掘し、全国へ、世界へと発信します。

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