【続・仙台ジャズノート#66】コロナ禍が生み出した、演奏家たちの新たなネット空間

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】コロナ禍と向き合う中から新しいネット空間が生まれつつあります。ジャズ音楽家だけでなく、聴き手にとっても、大きなチャンスになるはずです。何よりも重要なのは、演奏者の事情に合わせる形で、演奏者自身のオンラインコミュニティを比較的容易に作り出せることでしょう。

4年前、身近なジャズ音楽をテーマに取材しようと、動き出したものの、取材活動を始めた途端にコロナ禍に巻き込まれました。インタビューを依頼した演奏家の多くが音楽活動の中止や延期に追い込まれ、先行き不安にさいなまれているようでした。他の文芸同様、人前で演じる機会を奪われることは、演奏家にとって死活問題でした。一方で、対面の演奏活動を封じられた演奏家たちがオンラインの活用に向かって動く姿が印象的でした。

たとえばYouTubeはコロナ禍に悩まされたほぼ4年の間に大きく様変わりしました。身近な仙台・宮城地域でも、個人、グループを問わず、音楽活動に取り組んでいる人たちの多くがYouTubeにチャンネルを持ち、情報を発信するようになりました。演奏する機会が失われたのを補うためにネット上で作品を発表する動きが目立ちました。プロの演奏家やプロ志向の強いアマチュアにとっては、人前で演奏出来ることが何よりも大事です。オンラインによる配信技術や映像技術をマスターして有料配信ライブに乗り出す動きが盛んになりました。配信の取り組みを一歩進めてジャズプロジェクトを共同で立ち上げ、コロナ以前にもまして強力な音楽環境を自ら作り出す動きも続いています。

また、筆者の連載「仙台ジャズノート」はあくまで身近なジャズ現象に取材対象を絞っていますが、世界的なジャズの趨勢や東京中心に起きている事柄、多くのレジェンドたちがおこした過去のムーブメント、膨大な量の作品群と評価を無視しているわけではありません。

そのために必要な知識や情報、実践的なアイデアの多くをネット経由で入手しているのも事実です。特に動画やデジタル処理された音楽コンテンツを検索することによって、世界中のジャズ演奏家の肉声に接することができるのは貴重です。実際、演奏家への取材や記事作成の必要上、筆者が参考にしているネット上のコンテンツはコロナ禍にあって増え続け、YouTubeだけでも30チャンネルを上回ります。

コロナ以前にも、ジャズ音楽を楽しむための基礎的な情報はネット環境の発達によって百科事典的に入手できるようになっていました。一般的な検索エンジンをうまく使うことで、自分の関心事に合わせて多くの情報を引き寄せることができます。コロナ禍以前のネット環境で、やや物足りないものがあったとすれば、演奏家自身の肉声や彼らの活動に関する具体的なライブ情報やコンサート情報などでしょうか。

コロナ禍によって人前での演奏活動を制約された演奏家たちが、ネットによる発信に力を入れるようになったため、演奏家の肉声に接する機会は飛躍的に増えました。生の演奏を聴き、演奏者たちの息遣いを肌で感じる機会がネットによって大幅に増えたと言ってもよさそうです。

いわゆる「団塊の世代」を含む筆者の世代は音楽の楽しみを享受するために、多様な技術やサービスの恩恵を受けてきました。レコードやカセットテープ、CD、DVDなど、さまざまなメディアを通じて音楽を楽しんできました。オーディオの世界も、安価な製品からハイエンドな高級品まで、幅広く多様な世界が広がりました。わが身を振り返ってみればいつの間にかメディアやオーディオ中心の楽しみ方で満足するようになりました。集合住宅での暮らしが長くなると、近隣騒音への警戒心は強まる一方で、ヘッドフォンなしでジャズ音楽を楽しむことは考えられなくなっています。

 コロナ禍をきっかけとしたさまざまな動きを振り返ってみると、いろいろなメディアやオーディオ技術の恩恵に加えて、インターネットによるオンラインサービスを選べる時代が訪れたのを実感します。一時的とはいえコロナ禍が落ち着いてきたように見える現在、コロナ以前とは全く異なる音楽空間が見えています。演奏家一人ひとりの事情は異なるので、予断は許されませんが、オンラインの活用が今後、どのような可能性を切り開くことになるのか非常に楽しみです。

HOGE PODGE/JONNY HODGES AND HIS ORCHESTRA ホッジポッジ/ジョニー・ホッジス楽団

【ディスクメモ】久しぶりにのぞいた中古レコードショップで手に入れた“最新のアルバム”です。1938年、1939年の録音。デューク・エリントン楽団の重鎮、ジョニー・ホッジス(サックス)のリーダー作です。DUKE ELLINGTON(ピアノ)、 LAWRENCE BROWN(トロンボーン)、COOTIE WILLIAMS(トランペット)らピックアップメンバーの音色がくっきり。ホッジスのソプラノが聴けるし、何と言ってもエリントのピアノプレイが素晴らしい。B面6曲目のホッジスのオリジナル「HOMETOWN BLUES」をおすすめします。

「HOGE PODGE」は「ごた混ぜ」の意味だそうです。

▶side A

  1. JEEP’S BLUES
  2. RENDEZVOUS WITH RHTHM
  3. EMPTY BALLROOM
  4. KRUM ELBOW BLUES
  5. I’M IN ANOTHER WORLD
  6. HODGE PODGE
  7. DANCING ON THE STARS
  8. WANDERLUST

▶side B

  1. DOOJI WOOJI
  2. SAVOY STRUT
  3. RENT PARTY BLUES
  4. GOOD GAL BLUES
  5. FINESSE
  6. HOMETOWN BLUES
  7. DREAM BLUES
  8. SKUNK HOLLOW BLUES

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

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