【続・仙台ジャズノート#9】ありがとう「レッスン動画」

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

【佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】ネットとジャズ音楽の関係を知る手掛かりはいろいろあります。動画共有サービスの一つであるYouTube(ユーチューブ)を実際に訪ねてみることにしましょう。以下の事例は、ジャズ音楽をより楽しむために筆者が日ごろから利用しているコンテンツです。

YouTubeは音楽や映像系のコンテンツを「チャンネル」の形で蓄積し、多くの一般利用者が閲覧・利用するサービスです。2005年、米カリフォルニア州で創業。翌2006年にGoogle社が買収して子会社化しました。

YouTubeのコンテンツの中で、筆者が最も頻繁に利用しているのは、多くのジャズ演奏家が主宰・提供あるいは講師として登場する「レッスン動画」の分野です。講師はプロの音楽家で、多くの場合、音楽教室やレッスン事業を別途、有料で運営しています。通常、YouTubeの利用者が無料で利用できる「レッスン動画」はお試し版のようなもので、有料で教える内容の一部であることが多いのですが、それでもジャズの音楽理論や演奏上の実践的なポイントを惜しげもなく解説してくれます。

楽器の習得は、ほめられれば調子に乗り、たたかれればへこむ木登りのようなものです。登りの途中でずり落ちないようにしがみついている身では、誰かに伝えられる知識や経験は少ないのですが、焦らずじっくり進む以外に道はないようです。プロの演奏に接するたびに「ああ、この世には天才の何と多いことか」とため息が出るのはむしろ普通のこと。理論や技法について一度レッスンを受けただけでは何ともならないのは、単に加齢のせいだけではないはずです。時には、自分が何を知らないかさえ分からないこともあります。できないことを自分なりに何度も繰り返し練習しているうちに、自然と身に着くなんて、うれしいことも、そうは多くはありません。

YouTubeのレッスン動画。画面右列のサブ画面にもいろいろな動画が並ぶ。仕事場があっという間にレッスン場に。

「レッスン動画」の講師が得意とする楽器はそれぞれ異なるので、たとえばジャズを知るうえでの大問題である「アドリブ(即興演奏)」一つとっても、それぞれ得意とする楽器を軸に、多様な角度から学ぶことができます。一つひとつの情報は限りなくコンパクトですが、YouTube特有のリンクシステムに乗る形で自分に合う「レッスン動画」を追っているうちに、音楽理論や実践に関する解説、演奏上の実践例に多数、接する形になります。

YouTubeの「レッスン動画」は一つのことを複数の方向から学ぶきっかけを与えてくれます。YouTubeの検索機能を駆使して、自分の関心に合わせてリンクを追っているうちに、手掛かりは突然やってきます。自然にそういう運びになる点が重要です。YouTubeの「レッスン動画」の場合、コメントやメッセージ機能を使うことで感想を寄せたり質問したりすることができます。熱心な「ユーチューバー」ならその都度、反応してくれます。

筆者のささやかな経験で言えば「スイング」というジャズのリズムを自己流で覚えた楽器はドラムでした。他のドラマーやレコード、CDを参考にしただけの見よう見まねでした。実際は細かい思い込みや勘違いがあったのに、なぜそのようにシンバルをたたく必要があるかについて、本当に分かったような気がしたのは、サックスの演奏法ついてサックスの先生に説明してもらったとき、でした。「ああサックスはこう吹きたいのだから、ドラムはこう演奏するように求められるわけだ」という感じです。次々に問題や課題が飛び出す木登りの途中、突然、腑に落ちるのはなかなか気持ちのよいものです。

以上のようにYouTubeの「レッスン動画」は非常に魅力的ですが、単に断片情報を集めているだけでは、深夜の受験勉強のようで味気ないかもしれません。断片情報のリストがいくら膨らんでも、断片は断片にすぎないということもあるかもしれません。可能ならば、身近なジャズの現場で活動している演奏者にお願いして、一本、芯の通った木登りレッスンを受ける方がいいでしょう。

筆者が60過ぎてからメロディー楽器を練習することになった一部始終については「体験記」の形であらためて報告します。

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

これまでの連載はこちら

*TOHOKU360で東北のニュースをフォローしよう
X(twitter)instagramfacebook

>TOHOKU360とは?

TOHOKU360とは?

TOHOKU360は、東北のいまをみんなで伝える住民参加型ニュースサイトです。東北6県各地に住む住民たちが自分の住む地域からニュースを発掘し、全国へ、世界へと発信します。

CTR IMG