【続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!)
【佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】ジャズ音楽、とりわけメロディ楽器によるアドリブ(即興演奏)はどうやれば可能なのかを中心に考えてきました。音楽理論と演奏技術の双方で、多様な知識と経験が必要なのは初めから分かっていました。この連載を思いついた当初、理論、技術ともに蓄積がゼロに近い状態でスタートし、多くの人々の協力をいただきながら蓄積を少しずつ増やしてきました。
新型コロナウイルスの問題が表面化する3カ月ぐらい前に企画、取材に入って現在まで、時間もかかっています。身近な演奏家らの動きを取材するのと同時並行で、筆者自身がジャズ演奏の初歩を学び始めました。この種の連載として多少ユニークなのは、コロナ禍における演奏家らの動きを適宜、報告するとともに、筆者のジャズ体験記を並走させた点にあります。ジャズ音楽、特にアドリブ演奏について、あるタイミングで、その都度、報告できる範囲で書くので、3年前に書いた「アドリブ」と現時点で書ける「アドリブ」の意味合いが異なります。時間をかけて自分自身をフォローしながらその都度、体験記としてまとめる感じです。体験記のスタイル自体は珍しいわけではありませんが、フォローすべき自分自身が変化する点で、ほとんど初めてといっていい感覚でした。
ジャズ音楽の専門家やプロの演奏家の書くジャズ本なら、一定の見識や見解を基に、きっちり分類・整理したうえで一巻の読み物として提供されるはずです。「仙台ジャズノート」の場合、常に変化する自分を、時間をかけてフォローする意味合いが強いので、一定の時間が経過した段階で、見えている範囲の「ジャズ」と自分の距離を測定する必要を感じます。測定する方法には定まったものがないので、分かりにくいかと思いますが、現時点(2023年11月初め)での測定の結果を踏まえて「現在地における課題」を2つに絞って紹介します。
はじめにジャズ音楽を習い始めた当初からの課題である「アーティキレーション(音のつなぎや切り方に関する技法)」の再確認が依然として必要。少し油断すると、甘くなってしまう癖が自分でも分かるのでそれを修正する必要があります。アーティキュレーションにとって、技術的な理解やトレーニングも大切ですが、演奏し続けるための基本的な体力というか、最近はやりの「体幹」を強くすることが必要な感じです。音楽をやるうえで「体幹」を強くするとはどういうことか?まだつかみかねています。
加えて、コード(和音)中心にアドリブを組み立てる力を身に着ける必要があります。これまでも、意識してきたつもりなのに、なぜそれが不十分だったのかと言えば、コードの種類があまりにも多く、初心者にとっては「できるなら迂回したい課題」のひとつになってしまったからです。コードの進行を追うこと自体、簡単なことではありません。そのため、より親しみやすいスケール中心に考える傾向が生まれ、コードトーン(コードを構成する音)を追うことから遠ざかってしまったような気がしています。
もともと、アドリブに関心を持ってメロディ楽器を始めたわけですが、アドリブらしきものを自己流で積み重ねても、実際の演奏は成り行きまかせになりがちです。初めのうちは、風まかせ、成り行きまかせで音をつなげることを面白く感じたものですが、最近では一体、自分はどこに向かおうとしているのか不安になります。
以上、2点に絞り、あらためて組み立て直すにはやはり時間と体力が必要です。定年後の自分に許される時間の使い方を再調整します。時間配分や練習の方法・内容を大きく見直し、手抜きしてきた部分に補修材を投入しましょう。コード中心のアドリブ中心に「体幹」を少しでも強化することが当面の目標になるでしょうか。
【この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。
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