【続・仙台ジャズノート#46】ブルース好きの密かな楽しみ

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】 ブルースを自在に吹けるようになったら気持ちがいいだろうなあ。長いことそう思っていました。今を去ることン十年前の学生時代からブルースというジャンルの音楽がなぜか好きでした。時代や地域によって呼称や音楽スタイルに違いはありますが、ブルースはもともと米国南部の黒人霊歌や労働歌から始まったと言われています。大まかに言えば白人に収奪される黒人の喜怒哀楽を歌ったのがブルースですが、言葉がよく分からないこともあり、個人的には歌(詩)よりもブルースの旋律やファッション、歴史・文化にひかれたように思います。

ブルース独特の雰囲気を日本人である自分が理解できると思ったことは一度もありません。むしろ、アフリカから米国に連れてこられた黒人奴隷の魂のありようを想像するなんて無理と、ずっと思っていました。言葉の意味や詩の解釈には少し距離を置きながらブルースを楽しんできました。何と言っても気に入ったのは、1コーラスがたった12小節という、手軽なサイズ感だったような気がします。トランプよりも花札のサイズ-といっても分からない人が多いかと思いますが、トランプよりもひと回り小さな花札の方が日本人の手のひらにしっくりおさまる感じがします。花札にごく近い暮らしを旨としていたわけではありません。12小節で1単位のブルースのサイズ感が花札に似ているように思うのです。

そう言えば、大学でバンド活動を始めたころ、合奏の基礎を身に着けるための課題としてブルースが設定されていました。単純なブルース進行のデモ曲を2つのリズムで延々と繰り返し、間にアドリブを入れる練習でした。ドラムとサックスの違いはあれど、あの頃も今も、やっていることはそんなに変わらないのかも。何となく複雑ではあります。

ドラムからアルトサックスに移ったばかりのころは、その意味を理解していたわけではありませんが、、入門編として「枯葉」の次にブルースをすすめられることが多かったように思います。最もシンプルなブルースの場合、3つのコード(和音)だけで構成されます。分かりやすいといえば、分かりやすいのですが、実際にやってみると、単純な分だけ余計に難しいのですが、そんなことが気になるのはずっと後の話です。

同じブルースでも、ロック系とジャズ系があり、ジャズ系のブルースは、ジャズらしくおしゃれな(高度な?)響きにするために、より複雑なコードを使うという、正直、よく分からない違いもありますが、何より重要なのは、ブルース特有の音楽的な言い回しを、しっかり身に着けないと、いくら頑張ってもブルースには聴こえない点です。このあたりが個人的な現在地。ああ、どうすればいいのか(笑)

もともとジャズ音楽自体、ジャズ特有の言い回し(方言のようなもの)を覚えないと、話にならないのですが、ブルースはさらに方言としての深みが必要なようです。奴隷時代の黒人の苦しみや喜びを音楽で表現できないと駄目なのである、と理屈っぽいことを並べてもブルースにはなりません。一方でどんなに真似しても黒人にはなれないという、ジャズ音楽にも共通する最大のジレンマがむくりと頭をもたげます。

Blues by Basie/COUNT BASIE 1942

ント・ベイシーの「Blues by Basie」。じっくり聴けば時間を忘れるがブルースを演奏できるようになるわけではない。

【ディスクメモ】カウント・ベイシー御大が残した膨大な作品を何らかの傾向別に聴く楽しみは格別です。「Blues by Basie」(1942年7月、ハリウッドでの録音)は文字通りブルース一色のアルバムです。フィリップス社が「ジャズ・ジャイアンツ1500コレクション」として出した作品。油井正一さんが詳しい解説を書いています。レコードの場合、国内でリリースされたアルバムには、詳しいライナーノーツが掲載されているので助かります。

 このアルバムがとても気に入っている理由は、ブルースがジャズに融合したころの形をあますことなく見せてくれるからです。A面がベイシーのピアノトリオを軸にした小さな編成のブルース。A面の出来が特に素晴らしく、1曲目のHOW LONG BLUESから2曲目のST.LOUIS BLUESまでタイトルに「BLUES」の入ったブルースだけを並べています。「オールアメリカンリズム」といわれたリズム隊(フレディ・グリーンのギター、ジョー・ジョーンズのドラムス、ウォルター・ペイジのベース)がベイシーのピアノを絡む演奏を聴けるのも魅力の一つ。

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

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