【文・写真/若栁誉美=宮城県仙台市】食卓に並ぶご飯、飲食店で提供されるご飯、コンビニで買うおにぎりやお弁当。1日1食は口にする白米。白米=お米は、種から育ち田に植えられ、刈り取られて精米され、さらに炊くという行為を経て、やっと私たちの口に入る。
食べ物が食卓に並ぶまでのストーリーを実際に体験することで、「あたりまえ」があたりまえではないことを体験してほしい・・・そんな想いから始まった、荒浜のめぐみキッチンによる米作り体験プロジェクト。田おこし・種まき・代掻きを経て、6月上旬に田植え体験の会が催され、年齢も国籍も多彩な30名以上が参加した。
田んぼの場所は、仙台市若林区荒浜地区。荒浜のめぐみキッチンでは「荒浜ベース」と呼ぶ場所が、田んぼや畑を媒体としたコミュニティ作りの基盤となっている。
仙台駅から海沿いへ向けて車を走らせること、約30分。収穫前の麦畑の中に、田んぼが現れた。その田んぼが丸いのだ。大きなお皿の中に作られたようにも見えるし、水に浮かぶ舞台と花道のようでもある。稲刈り後には、ここを舞台にして野外ライブができるかもしれない、と妄想が捗る。
田んぼの中心から、3本のロープが伸びる。ロープには等間隔で赤い印がついていて、その印の位置に苗を植える。「Everybody finished?」「まだです!」「ちょっと待って!」と、筆者の加わったチームで飛び交う英語と日本語。植え終わると、そのロープをもって、みんな1歩ずつ後ろへ下がる。そうやって、少しずつ、まるい田んぼに苗が植わっていく。場所によって急に深みにはまることもある。浅いところでも、泥はなかなか重たい。筆者は履いていた長靴を早々に諦めた。しかし、裸足で入っても、なかなか足が抜けない。「できるだけつま先から足を入れるといいよ。」とアドバイスをもらいつつも、中腰で苗を植えているとそんなことも忘れてしまう。幸い、田んぼへの全身ダイブは避けられた。
30人が3チームに分かれ、約1時間ほどで田植えは終了。
風にそよぐ苗を眺めつつ、作業後はみんなで作った大鍋カレーを土鍋ごはんといただいた。参加者の中から「ここにピザ窯作りたいな」という声があがれば「お!やってみる?」とトントン拍子に話が進んでいく。稲刈りの時には、焼きたてピザが食べられるかも?!「美味しくご飯を食べたいよね!」そんな思いが、めぐみキッチンのスタートにはあったと聞く。食を介して人がつながっていく、そんな場になる予感がした。今回は、もち米(ミヤコガネ)を植えた。10月に収穫し、12月には餅つきを行う予定。