【佐々木愛莉、桃野紗羽、森本麻里奈】将来、宮城県で看護師や保健師、作業療法士として「地域に根差した医療」に関わりたい。そんな目標を持っている私たちは、仙台市宮城野区にある「榴岡地域包括支援センター」を訪問した。今の地域の医療や福祉の問題、そして地域包括支援センターの役割を学ぶために、職員の横山さんと池内さんにお話を伺った。
介護や福祉を支援する「地域の相談窓口」
地域包括支援センターでは、主任ケアマネジャー、社会福祉士、保健師等が中心となって高齢者の支援を行っている。3つの職種はそれぞれ専門分野をもっているが、互いに連携をとりながら「チーム」として総合的に高齢者を支えている。他にも、区役所職員や町内会長、市民センター、圏域内の専門学校、お寺など、地域に関わる多くの方と連携。高齢の方々が住み慣れた地域で安心して生活を続けられるよう、介護・福祉・健康・医療など、さまざまな面から支援を行う「地域の相談窓口」といえる。
地域には、高齢者の一人暮らしや認知症、虐待などさまざまな課題がある。認知症の方の増加、介護保険の申し込み件数の増加、コロナ禍で運動不足による健康課題なども、昨今見られるそうだ。80代の高齢者が50代の子どもの面倒を見る「8050問題」も社会問題になっている。私たち若い世代にも関わるとても大切なことで、真剣に考えていく必要性を感じた。
コロナ禍の影響もあり、高齢者が家に閉じこもりがちになるため傾向があるため、自宅で介護している家族の虐待も発生しているそうだ。家庭内で起こる虐待では、ヘルパーやデイサービス職員らが介護保険サービスの最中にアザなどに気がつき、地域包括支援センターへ連絡・相談があるという。
「職種を越えた連携」で、地域の課題解決を
地域包括支援センターでは、高齢者の相談に乗ったり、高齢者の自宅訪問や地域ケア会議を行ったりしている。家族交流会や認知症カフェなど、家族が相談しやすい取り組みも各地で開いているそうだ。看護師や保健師は「介護予防教室」や「認知症カフェ」などを定期的に開き、地域の高齢者の健康を守っている。話を聞けば聞くほど、課題解決には多職種の連携が欠かせない、と強く感じた。
横山さんと池内さんは、相談を受ける際に心掛けていることがあるという。それは「話しやすい雰囲気づくり、本人の意向を尊重すること、家族の意向をしっかり聴くこと」。安心して相談できる場をつくることを意識し、面談技術のスキルの向上にも努めているそうだ。人の話を聴く力と、傾聴の姿勢は、とても大切なポイントになる。そして「地域によって福祉の課題や強み・弱み、高齢化率が違うので、まずは地域をよく知ることが非常に大切。そのためには他の職種との連携が必要で、問題解決のためには欠かせない」と教えてくれた。
【取材後記】患者に寄り添った支援ができるよう、学び続けたい
今回、お二人の話を聞くことができて、とても貴重な経験となった。取材を通して、私たちが思っている以上に、高齢化に伴ってさまざまな課題が生じていることを知った。そのため、普段からボランティアなどに積極的に参加し、高齢の方と関わる機会を増やし、どのような支援を必要としているのかを知ることが大切だと感じた。傾聴の姿勢や福祉課題などの新たな学びもあり、これからさらにコミュニケーション能力を身につけ、一人一人に寄り添った支援ができるように学び続けていきたいと思った。
そしてお二人が「患者の意見に対し、なんでもかんでもイエスマンになってはいけないよ」とおっしゃっていた言葉が印象に残っている。患者さんの要望を全て受け入れるのは、本当の優しさではないからだという。私たちには、将来、作業療法士、地域包括に携わる看護師、保健師等の職に就くというそれぞれの目標がある。今後の学生生活や、就職したときに活かしていこうと思う。
(取材・執筆 佐々木愛莉、桃野紗羽、森本麻里奈)
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