【平塚千絵】「新鮮な野菜や果物を食べられること」―長年東北に住んでいて良かったと思えることのひとつだ。それが叶うのは、「つくり手」と「食べる人」をつなぐ人のおかげでもある。山形を拠点に、地域の野菜や加工品を移動販売する「ノウマド」店主・魚路真希(うおじ・まさき)さんもその一人だ。
仙台市内中心部での出店に密着。山形の珍しい野菜との出会いも
毎週木曜日の12時ごろから、仙台市内中心部の「Kaffe tomte(カフェ・トムテ)」店頭で、「ノウマド」の移動店舗が開かれる。主に山形県内で作られた野菜をはじめとする食品が並ぶ。11月上旬の取材日には、色とりどりの大根や青菜など旬の野菜が多く見られた。中には一般のスーパーではあまり目にしないような、「かつお菜」、「黒大根」といった野菜もあった。
開店と同時に、買い物客がひっきりなしに訪れる。カフェの客はもちろんのこと、近隣の高齢者夫婦や、勤め人のグループ、近所の幼稚園のお迎えの帰りという親子連れも見られた。
魚路さんは会計や品出しに追われながらも、お客さんの声に耳を傾ける。その日も、色とりどりの大根が入った籠を手にしたお客さんから、それぞれの大根の美味しい調理の仕方を尋ねられると、「この黒い大根は、蒸して食べると美味しいです。ピンクの大根はサラダに入れるのがおすすめです」と、作業の手を止め丁寧に答えていた。お客さんの中には「ここで買った野菜を、県外に住む子どもに送ると喜ばれるのよ。また送ってあげようと思って今日来てみたの」と話す主婦、「前に買ったジャムが美味しくてまた食べたくなって買いにきたんだ」という常連客も。店はすっかり街に溶け込んでいる様子だ。
店名「ノウマド」にこめられた思い
「ノウマド」は固定の店舗を持たず、山形県大江町を拠点に「軒先販売」「イベント出店」「配達」を組み合わせた移動販売を行う。メインの「軒先販売」は週5回ほど、山形・宮城県内のカフェやベーグル店の店頭など、数カ所の決まった場所でお店を開く。扱う商品は主に山形県内で作られたものだ。魚路さんは「地元や身近な場所で作られるものを売ることで、お客さんに新鮮なものを提供したい、地域の生産者の活性化に貢献したい」と話す。
千葉県出身の魚路さん。0歳のころからアトピー性皮膚炎やアレルギー体質に悩まされ、人一倍食べるものに気を遣ってきた経験から、食に興味を持つようになった。やがて「多くの人に、安心して口にできるものを提供したい」と、生協の配達ドライバーや、有機農家での販売・調製といった経歴を重ねてきた。2016年結婚を機に山形に移住。「広大な山形県では、こちらから商品を積んで出向いていった方が、お客さんに出会える」と思い、現在のスタイルで営業を始めた。
軸となるのは、「つくり手」と「食べる人」をつなぎたい、という強い想い。それは「“のうか(生産者)”の“まどぐち”」を意味する「ノウマド」という店名にも表れている。自らの経験から、農薬不使用の野菜や、化学合成添加物無添加の食品などを販売するようにしている。
「これからの季節の野菜は、寒さで旨味がのってますます美味しくなります。多くの人に旬の野菜を食べていただきたいので、ぜひ一度見に来てください」と魚路さんは話す。店では野菜の他にも、河北町の「矢ノ目糀屋」の味噌、東根市の「山ベーグル」のベーグルなど多くの山形ならではのものに出会うことができる。そして、お客さんと、つくり手をつないでくれる店主がいる。「のうかのまどぐち」がここにある。
ノウマド
メール:noumado2015@gmail.com
facebook:https://www.facebook.com/noumado.market/
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