【女川ぐらし】地元の人も知らない景色を探し集めて、女川で開いた写真展

【写真連載:女川ぐらし】アマチュア写真家の福地裕明通信員が、単身赴任先の宮城県女川町での暮らしを写真で綴る連載「女川ぐらし」。女川町のいまの日常風景を、生活者目線でお届けします。

【福地 裕明】2021年4月23日から25日の三日間、女川町内で写真展「女川ぐらし」を開催した。

女川町まちなか交流館にて開催した個展「女川ぐらし」では300点近くの写真を展示(2021.4.24撮影)

短い会期にもかかわらず、仙台の知人や職場の同僚、はたまた、女川町内で知り合い、日々お世話になっている方々などに足を運んでもらい、なんとかやり遂げることができた。まずは、この場を借りて御礼申し上げたい。

ここでは、どのような経緯で写真展を開催することになったのか紹介したい。

何気ない日常を撮るという趣味の延長線として、単身寮の近くにあった仮設住宅で子猫に出会ったことをきっかけに、「女川ぐらし」の撮影をはじめたのは、前回紹介したとおりだ。

野良猫撮影はあくまで、出勤前の暇つぶしだった。でも、浜辺(漁港)の近くに暮らしていること、なぜか朝早く目が覚めてしまうこともあり、次第に夜明けから日の出までの瞬間を撮るようになった。

ホームグラウンドとなった小屋取浜の朝焼け(2018.9.29撮影)
ホームグラウンドとなった小屋取浜の朝焼け(2018.9.29撮影)

そうやって撮影した写真をSNSに載せていたら、女川で知り合った方から、「女川にも、こんな素敵な場所あるんだね」「いつも見てるのに、気づかなかった」などと声をかけてもらえるようになった。

私が見る「日常」と、女川の人たちが見ているそれとでは、違いがあるんだなと感じ、もっともっと彼らが知らない景色を探しては撮ることにした。それが、女川の新たな魅力発見にもなるのではないか、とも思った。

いつもの漁港で日の出を撮っていると、漁師さんから声をかけられるようになった。他愛のない世間話などをしていたら、ある日、

「撮って、どうすんのや?どっかに飾ったりすんのか?」

と言われた。正直、ハッとした。大きく引き伸ばして飾ったり、展示することなど考えもしなかった。

日記のように撮りながらも、ブログやSNSに載せるだけで満足してた。だからこそ、その一言は、私にとっては重く、心の底で燻り続けた。

コバルトライン「大六天山展望台」もお気に入り撮影地点(2020.2.14撮影)
コバルトライン「大六天山展望台」もお気に入り撮影地点(2020.2.14撮影)

同じ場所で夜明けを撮り続けていると、時期によって、日の出の位置、時間が変わっていくという当たり前のことに気づかされる。秋から冬へと季節が移れば、日の出の時間は遅く、太陽が上がる位置も南側へと移る。いつしか、水平線からではなく半島から日が上がるようになってしまった。「水平線から昇るのを撮りたいんだ」と、水平線から日が昇る場所を調べては、あちらこちらの浜を転々と移動するようになった。

このように牡鹿半島の浜を転々と移動しては撮影(2020.6.18女川町横浦にて)

ちょうど元日の朝にシーパルピア女川のプロムナードに、初日の出が女川駅に向かって一直線に差し込む設計になっていたことから、年末年始の時期は女川駅周辺で撮影スポットを探しては撮り続けている。

年末年始はほとんどシーパルピア女川周辺に入り浸り(2020.1.16撮影)

このように女川の風景を撮り続ける一方で、元々のライフワークとして、モノクロで日常の何気ない風景を撮り続けていた。四半世紀ほど続けてきた節目にと、2020年8月に仙台市内でモノクロの写真展を開催した。

2020年8月開催の個展では、女川での日常も紹介(2020.6.2石巻市鮎川にて)

すると、女川の知人から思わぬ反応が返ってきた。

「女川では(写真展)やらないのか?」「女川でもやって欲しい」

予想外だったけど、嬉しかった。漁師さんのあの一言が脳裏に蘇ってきた。

「やるしかない」と思い立ち、決意を揺るぎないものにするため、シーパルピア女川にある「夢を語るとラーメン一杯が無料となる店」で「来年3月末までに女川で写真展やります!」と宣言。

「Yume Wo Katare Onagawa」にて写真展開催の夢をカミングアウト(2020.8.20撮影)

結局、一カ月遅れることになったけど、なんとか開催することができた。(つづく)

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