【写真企画・東北異景⑦】光に満ち溢れる夜の仙台
【写真連載企画:東北異景】自然の摂理は時として思いもよらない景観を生み出す。一方で、人間という社会的動物は欲望のままに巨大な建築物や異様な光景を作り出してきた。あらためて注意深く見回すと、我々の周囲には奇妙で不可思議な風景、違和感を覚える「異景」が数多く潜んでいる。東北の写真家・佐瀬雅行さんが、東北各地に存在する「異景」を探す旅に出かける。
【写真・文/佐瀬雅行(写真家)=仙台】2011年3月11日、巨大地震と大津波に恐れおののき、絶望の中で迎えた夜。暗闇に覆われた仙台の市街地で、ふと見上げた星空は異様なまでに美しかった。東日本大震災では、発電所などの電力施設が大きな被害を受け、東北と関東の広範囲で停電が発生。さらに東京電力福島第1原発事故も追い打ちをかけ、東京電力管内で計画停電も実施された。
あれから6年余りが経過した現在、仙台の夜は光に満ち溢れている。東京や大阪などの大都市とは比較にならないが、展望台から眺める仙台の夜景は魅力的で、震災の傷跡は全く感じられない。少子高齢化が深刻な東北地方の中で仙台への一極集中が加速し、新たに建てられたビルが光の帯を広げていく。震災時に拡大した節電や省エネの動きが嘘のようだ。思い返せば、1970年代のオイルショックも同じ状況だった。
きらめく高層ビルの灯り、ヘッドライトとテールランプが織りなす光跡、都市景観を演出するライトアップ。様々な光が仙台の街を彩る一方で、闇は失われた。確かに再生可能エネルギーやLEDの利用は進んでいるが、化石燃料の大量消費や原発の再稼動が続いている現実を忘れることはできない。
複雑な思いを胸に夜の仙台を歩き回って、人々を魅了する光の景観を集めてみた。
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