仙台・高砂の魅力を再発見。街角のお寺と親しむ、癒しの写経体験

吉田由香】街角でいつも横を通るお寺とかありますよね。けれどもそのお寺の中に入ったことがある人ってなかなかいませんよね。高砂に佇む歴史ある寺院・雲洞院。仙台市宮城野区の高砂地区の魅力を発信する「高砂の魅力再発見プロジェクト」の企画として、同地区のお寺・雲洞院で「癒しの写経体験」が開かれました。歴史を紐解くひとときと癒しの写経体験が地域のお寺との距離をぐっと縮めました。

高砂の魅力再発見プロジェクトとは?

高砂の魅力再発見プロジェクトとは、地域にお住いの方が企画員となり、高砂地域の魅力を再発見しようというプロジェクト。高砂市民センターの協力のもと、5年計画の事業で、最終的には「高砂地域を再発見するマップ」つくりを目標に、高砂地域の歴史や土地や街そのものについての企画立案、運営を行っています。

昨年12月には高砂地域の9つの神社を管理されている禰宜さんから、それぞれの神社の由来や成り立ち、ご祭神などのお話を聞く会を開催。今年の1月には実際中野地区にある神社を参拝しながらまち歩きをして、普段は気付かない板碑や史跡などを見学しました。4月は地域に詳しい方の案内のもと、昔の写真と今の町の様子を見比べながら歩く「これってどこ?どこ?クイズラリー&お花見」を開催しました。

高砂の歴史を、ご住職のお話で垣間見る

令和6年度2回目のイベントは、明治12年に現在の福田町に移転した曹洞宗の寺院・見龍山雲洞院でご住職にお寺の歴史を聞き、その後癒しの写経体験を行うというもの。チラシや市民センターだよりを見て応募された参加者と企画員が、地域の歴史と写経に臨みました。

まず、32代目ご住職が、雲洞院の歴史を説明します。そもそも雲洞院の本寺である昌傳庵は伊達家ゆかりの米沢の寺院でした。伊達家が岩出山に移った時に米沢の人々も共に移住し、その流れで昌傳庵も岩出山に、そして仙台へと移ったとのことでした。そして1554年に昌傳庵の末寺として建てられたのが雲洞院です。

福田町はもともと足軽の町で、そういった一般の人の信仰を集めた寺院だったようです。ようです、というのは嘉永年間に元々の雲洞院が火災で焼失、詳しい歴史がわからなくなっているからだそう。かつて寄合と言えばお寺で行われたことも少なくなく、火災で焼失してしまった寺院は珍しくないとのことでした。とはいえ、福田町には鎌倉時代の板碑も残っており、この地域の人たちの信仰の歴史は間違いなくあったのではないかとご住職。明治になり、寺を守るお殿様がいなくなったあともこのお寺が残ったのは、江戸時代から連綿と住民の信仰と共にあったからではないかと話してくれました。

ご住職は生まれも育ちもこの福田町。近隣の市民センターのイベントでもこの地区の歴史を語ってくださっています。「この高砂地区は、昔から住んでいる人も新しく入ってくる人もいる地域です。そんな人たちに、かつてこの土地で暮らしていた人たちの祈りの歴史の積み重ねを知っていただくことが、この土地で暮らす人たちの心の豊かさに寄与するのではないかと思うんですね」。聞いてくださる方がいることは、ご住職にとっても寺院の歴史を明らかにするやりがいになっているとのことでした。

写経の時間に流れる静謐な空気

さて、続いて写経体験です。薄い半紙の下にお手本の般若心経を置きクリップで止め、心を静めて筆ペンで写経をしていきます。小学生の参加者も本当に静かに丁寧に写経を行っていらして、会場は水を打ったような静けさ。お手本通りに書かなければいけないわけではなく、字の場所の目安にするくらいのつもりで書いてください、と副住職さん。写経にあてられた時間は30分でしたが、時間内に書き終わる方、一文字一文字を大事になさってご自宅に持ち帰って続きを書かれる方と、いろいろでした。

書き終わった写経はお持ち帰りもできますし、そのままお寺に納めることもできます。最近は寺院でもお詣りの際に御朱印をいただく方も増えていますが、本来の仏教ではこのように写経をしてお寺に納めたときに、そのしるしとして御朱印をいただくものなのだそうです。副住職さんから、お手本とした般若心経についての簡単な説明を受けて、写経体験は終了しました。

福室からいらしたY.Bさんは、NHKのテレビ番組「ドキュメント72時間」を見て写経に興味を持たれていたそう。いつか体験してみたいと思っていたところ、市民センターのチラシでこのイベントを知り参加されたとのことでした。「本当に心が静かになりました」とのこと。そのお隣にいらしたK.Sさんは白鳥からご参加。同じように写経に興味があったとのことで、「せっかくだから、お経の説明の時に実際にお経を読んでもらえたらよかった」とのこと。確かにそれもいい体験になったのではないかと感じました。

そしてご本堂のバックヤードツアー?!

そのあとは、本堂の見学などさせていただき、流れ解散となりましたが、普段は入る機会のないご本尊のいらっしゃる後ろの小部屋なども見せていただき、あたかもバックヤードツアー。

大きな木魚や大きな鐘を叩かせていただいたり、位牌堂の見学もさせていただいたり、本堂の仏さまのエリア、お勤めのエリアなど、普段ぼんやりとしか意識していなかった場所の説明を受けて、普段、同じ地域に暮らしていてもゆかりがなければ足を踏み入れないお寺という場所が急に親しみ深い場所になったように思えました。実際に、お墓がそのお寺にない方でも、一声かけていただければご本堂にお参りされてもかまわないとのことでした。

Googleに載っていない「素敵」がこの企画のゴールです

高砂小学校と鶴巻小学校の社会学級に参加されている方の中から、このプロジェクトの市民企画員に5名が参加しています。地域へのふとした疑問や興味が講座となって、地域への親しみが増していきます。T.Nさんは、鶴巻小学校の社会学級からこの市民企画員に参画。高砂地区が初めての人でも、「ここってこういう町なんだ」とわかる、Googleに載っていないあれこれを発見できるプロジェクトにしたいとのことでした。

高砂市民センターの担当者は「このプロジェクトは皆さんが高砂地域のことを知るためにやってみたいと思うことが実現できるかもしれない企画会です。ぜひ一緒に高砂地域の魅力を発掘していきましょう」とお話されていました。

普段住んでいる場所、何度も通っている場所であっても、なかなかそこがどういう場所なのか知らないことも多いものです。ことにお寺などは、そこにお墓などあるわけでもなければ入ることも、そしてそのお寺について知るチャンスもなかなかないものです。「そういえばここってどんな場所だろう」「この町を一歩踏み込んで知りたい」……そんな気持ちを満足させてくれ、自分の町をもっと愛せるようになるプロジェクトは、マップづくりというゴールに向けて着々と進んでいます。

この記事は、仙台市の宮城野区中央市民センターとコラボした市民記者養成講座「東北ニューススクールin宮城野」の受講生の制作した記事です。宮城野区を舞台に活動するさまざまな地域密着の市民活動を取材し、発信していきます。他の記事は下記の画像バナーからご覧ください。

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