【東北大発】新型コロナをはじめ感染症を「誰でも簡単に」検査できる検査紙を開発 TBA

新型コロナウイルスをはじめ、あらゆる感染症を「どこでも誰でも簡単に」検査できる独自の検査紙を製造・販売するTBA。デング熱やマラリアなど世界のあらゆる感染症の検査を安価で手軽に実現できるこの技術はいま、医療現場の検査体制が不十分な国を中心に導入が進み始めている。同社代表で東北大学医工学研究科の川瀬三雄教授は「世界の感染症対策に、少しでも貢献できたら」と、期待を込める。

検査紙のどこに色が着くかで、感染症の種類がわかる

TBAが開発したのは、「DNAを印刷した検査紙」を使うことで、高額な装置や専門知識がなくても簡単に感染症検査ができる独自のPCR検査方法だ。

検査紙には複数のラインが引かれ、それぞれに異なる感染症を検出できるDNAが印刷されている。調べたい検体と試薬を混ぜてPCR装置に入れた後、検査紙を展開液の中に入れてどのラインに着色するかを見ることで、何の感染症にかかっているのかを短時間で判別できるというものだ。

(検査紙のどのラインに着色したかで、感染症の種類が簡単にわかる。同社YouTube動画より)

一般的なPCR検査では高額な撮影機器を使わなければ検査結果がわからないが、STH法では「目視」で簡単に結果がわかるのも大きな特徴だ。

日本など医療体制が整った国では、検査センターに検体を集め、数千万円する高額な機械で一斉に全自動で検査する効率的な検査方法が確立している。一方で途上国では高額な機械を導入する余裕がなく、交通機関や輸送手段も不十分なため、検体をどこかに集めて一斉に検査する大規模な検査方法は困難だ。STH法で用いるPCR装置は20〜30万円と安価で、1回の検査も5〜10ドルほど。これを導入する病院が増えれば、多くの人が身近な医師のもとで検査を受けることが可能になる。この技術で、感染症検査を「どこでも誰でも簡単に」受けられるようにすることが、同社の理念だ。

海外向けの新型コロナ簡易検査キットも開発

川瀬代表は大手セラミック会社の日本ガイシ出身で、在籍時にDNAを印刷する技術を新規事業として事業化。その技術からDNAを印刷した検査紙を用いた感染症検査の方法を確立し、基本特許として取得している。2012年から研究者として東北大学に移り、2013年、東北大発ベンチャーとして株式会社TBAを立ち上げた。

STH法の遺伝子検査ではウイルスや菌をはじめ、あらゆる生物の種類を特定することができるため、食肉の偽造防止や食品のハラル対応など、幅広い検査への応用が期待されている。さまざまな用途が考えられるが、やはり事業の柱は、検査体制が不十分な国での感染症検査への導入だ。

「マラリアやデング熱など、さまざまな感染症を含めると世界には10億人以上、新たな患者がいると言われています。検査のニーズはその10倍くらい、つまり100億件分くらいある見込みなのです」

現在TBAは中国・広州とベトナムに向けて新型コロナウイルスの簡易検査キットとしての検査紙の販売を進めており、両国に販売許可を申請中だ。検査紙とPCR器を一度導入すれば、今後は試薬を変えることでさまざまな感染症の検査が可能となるため、新型コロナの検査を緒に現地の医療機関での導入を進めたい考えだ。

同社はインドやアフリカ・ケニアでも現地医療機関の感染症検査のための導入に向け話を進めている。国ごとに異なる薬事法への対応などの課題から「現地でサービスを展開する有力なビジネスパートナーを見つけられるかが海外での普及の鍵となっている」と、川瀬代表は語る。

感染症で亡くなる人を、少しでも助けられるように

医療体制が不十分な国で、誰もが安価に検査できることを目指すTBA。そのため価格を極力安く抑えて販売しているものの、そのニーズは世界中に広がっている。この技術が開く可能性は「とても大きい」と、川瀬代表は力を込める。

同社が掲げるのは「世界の子供たちに健やかな未来を」という壮大な目標だ。「途上国で5歳になるまでに3分の1が感染症で亡くなっていると言われています。感染症の撲滅は検査ではできませんが、簡単に検査して、早く感染症が判明することで、適切な医療措置を受けることができるようになる。少しでも助けられるように、貢献していきたいですね」

東北大学スタートアップガレージコラボ企画:東北大発!イノベーション】2020年、世界大学ランキング日本版の一位になった東北大学。世界最先端の研究が進む東北大では今、その技術力を生かして学生や教職員が起業し、研究とビジネスの両輪で世界の課題解決に挑む動きが盛んになっています。地球温暖化、エネルギー問題、災害、紛争、少子高齢化社会…そんな地球規模の問題を解決すべく生まれた「東北大学発のイノベーション」と、大学に芽生えつつある起業文化を取材します。

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