【東北の起業家】高校の新科目「探究」で、多様な生き方伝える教材を開発

PR企画記事:東北の起業家に会いにゆく】東日本大震災後、東北では地域の社会課題をビジネスで解決しようとする人々の機運が高まり「起業」が活発化してきました。そんな東北の起業家たちが集まる年に一度の祭典「TGA Festival」が今年も2月12日に仙台で開催され、3月3日には東京で「TOHOKU STARTUP NIGHT」が開かれます。
東北の起業家たちが取り組むユニークなビジネスやその背景にある熱い思いを知るために、イベントに登壇する起業家たちに会いに行きました。

来年度から高校で「総合的な探究の時間」という新科目ができることをご存知でしょうか?高校生が自分で調べたいテーマを探究することができる科目ですが、その自由度の高さから現場では何を教えていいのか戸惑う声も。仙台市で昨年創業したばかりの株式会社オーナー代表・佐々木敦斗さんは、この時間を「高校生に多様なライフスタイルやキャリアのあり方を伝える」機会として捉え、地域で活躍する大人たちのさまざまな生き方・働き方を紹介する教材づくりに取り組んでいます。

地域で活躍する大人たちの事例集をつくる

ーー今取り組んでいる事業について教えて下さい。

今取り組んでいるのは教育事業になるんですけれども、来年度から高校で新しく始まる「総合的な探究の時間」の教材を作っています。

ーー具体的にはどんな教材なんですか?

「総合的な探究の時間」は、簡単に言うと「高校生版の自由研究」です。高校生が自らテーマを設定して学んでいく。起業について知りたかったら起業について学ぶし、メディアについて知りたかったらメディアについて学ぶ。本当に自由度が高い科目なんです。

ただ、そのテーマを設定するときに、高校は勉強と部活が主で、社会との接点が少ないため、あまりいいテーマ設定ができていない。だからテーマ設定ができるように、社会でさまざまな課題解決や探究活動を行っている大学生や社会人の事例をワンパッケージにして「Edtech*」で届ける、ということをしています。実は「総合的な探究の時間」には教科書が存在しないので、その教科書を作っています。

*Edtech(エドテック)=IT技術(Technology)を活用した教育(Education)サービスのこと。

ーー「地域で活躍している大人たちの事例集」を作っているということですか?

そうです。自由研究を進めていくときのネタ帳みたいなものです。教材ではあらゆる分野を取り上げようとしていて、起業であったり、東北なので復興や防災も外せないですし、工学、医療、健康、看護、介護とかあらゆる分野を入れていこうと思っています。

ーー高校生のときってなかなか身近な大人に話を聞く機会がなかったと思うので、貴重ですよね。その教材を「Edtech」で届けるとのことですが、とのことですが、具体的にどんな形で届けるんですか?

webのプラットフォームを作成して、それを高校のEdtechの教材として年単位の契約で学校に導入してもらう形を考えています。学生さんは、そのwebのプラットフォームを学校のパソコンやタブレット、自分のスマホで見る形になります。

【右】株式会社オーナー代表取締役社長・佐々木敦斗さん(聞き手・安藤歩美)

「探究」の時間で、キャリアを切り開く力を

ーーそもそもなぜ教育事業に取り組もうと思われたのでしょうか?

高校のころから教育に興味がありまして、元々はリクルートの「スタディサプリ」で勉強の支援、テストでいかにいい点数をとるかというところを支援してきました。

でもこれからの時代って多分そうじゃなくて、もっと社会に求められる力、例えば思考力とか表現力とか課題解決能力とかが求められる。そういう支援をやろうと思ったときに探究学習というものと出会って、これなら可能性があるな、と。

自分たちでテーマを見つけて、調べてまとめて発表するということを、もしすべての高校生がうまくできたら、就活や転職などのときにもそのやり方やスキルで乗り越えられると思う。あらゆる自分の人生、キャリアを切り開いていく上で可能性が大きいと思ったので、その領域にチャレンジしようと思いました。

ーー単に受験勉強をサポートするというより、生きていくために必要な学び、そのための教材に特化されるということですね。今まさに教材を作っているとのことですが、提携先などはあるんですか?

教材について、宮城大学地域資源マネジメント研究室とも共同研究を進めています。医師・研究者の方が立ち上げた医療系の一般社団法人ともパートナーシップを結んでいて、専門家集団との繋がりを作っています。 宮城大学の先生方からは、学術的な知見からアドバイスをいただくのもそうですし、学生の視点で我々の教材に意見をいただくことで高校生のユーザーの目線に近いものができるのではないかということで、いま一緒に教材を作っているところです。

ーー実は私も高校生の時に「総合」の時間というものができて、興味のあることを研究しようという時間だったのですが、教える側も大変そうだなと。ある程度指針があると教える側も助かりますよね。

みんなそう思っていると思います。当時はまだ社会の話題になる課題が少なかったと思うんですよ。例えば、イラク戦争とか、教育格差とか、いじめ問題とか。ある程度自分の中でイメージのわくような形だったんですけど、今はスマホがあって、情報が溢れてしまっていて、課題が多すぎて手に負えない。教えられないものが多すぎる。学校が社会に追いついていない。社会の変化のスピードの方が今早いので。特に「探究」という教科書がなくて先生が教えなきゃいけないものに対して、先生も教えられないし、先生もよくわからないという課題が非常に多い。ちゃんとやればいい科目だと思うんですけど、ちゃんとやれないというところに課題があるんです。

ーー学校によってもばらつきが出ちゃいますよね。

うまくいってるところはうまくいってるんですよ。活躍している子供たちもいるし。高校時代から何か自分でプロジェクトを作って地域に飛び出して行ったりとか、幼稚園とか小学校で何かしらイベントをやってみるとか、非常に主体的にやっている子供たちもたくさんいるので。それを大学の学びに活かしているとか。そういう子をみると可能性はすごく高いと思うのですが、全員がそうなってはいない。

逆に言うと総合的な探究の時間っていうのは、学校によってとても自由度が高い学習なんですね。なので学校の魅力にもつながる可能性があります。教材も使うところもあれば、自前で作って、お金を全くかけないところもある。でもこれからは探究にお金をかけていく流れになるんじゃないかなと思っています。

ーー地域の情報格差をなくすという意味でも役に立ちそうです。

今は転職が当たり前の世の中だったり、大企業以外にもベンチャー企業があったり、起業とか移住とか……。いろんなライフスタイルの選択肢があるんですけれども、意外とそういうところを教えられる教材ってなくて。ライフステージの変化とかも教えられて行った方がいいと思うんですよ、これからのキャリアのために。高校生が自分の将来のキャリアを考える中で、「こういう人もいるんだ」って思えるようなことを教えたいですね。

子供たちが自走する力、駆動させるエンジンに

ーー「いい大学に入って、会社員になって」みたいなことが当たり前とされている中で教育されているから、それ以外にも起業ができるとかフリーランスになれるとか多様な生き方って高校生の時点では全く考えられなかったです。でも早い段階でそういうことを知れたら違いますよね。

この前も面白かったのは、「畑の保健室」という、畑にビニールハウスを建ててその中で健康相談をやっている看護師の方がいるんですよ。地域の現場で保健室をやっている。我々もそうですが、看護師さんは病院で働く方々、というイメージがありますよね。その方は「地域の人との繋がりを作りながら健康を高めていくというやり方もある」とおっしゃっていて、そういう多様性のある生き方を生徒さんや先生方に伝えられると面白いのかなと思います。そういうものを見た上で、子供たちが何かテーマを見つけて発表するのが「探究」なので、その入り口だけを作ってあげている。要は、新聞みたいなものを作っているんですよ。

ーー佐々木さんは元々新聞記者をされていたんですよね。新聞記者からリクルート、それから起業されるという特殊なキャリアですよね。ご自身の経験からも、早い段階から多様なキャリアを知りたかったというのはあるんですか?

大学も東大だったので、普通に東大だったら東京の企業に勤めてそこから出世していくという世界じゃないですか。でもやっぱり震災があって、地元に帰って東北のために何かをしたいという思いが強かった。

それで東大卒の人たちは海外に行ったり東京で働きますけど、僕は地方だって言って、新聞記者時代も広島、姫路で仙台なので東京で一度も働かないまま一生を終えそうですけれども、そういうキャリアの転換は大きかったかもしれないです。画一的なキャリアだけじゃないよ、と。新聞記者をしてからビジネスをしている人ってほぼいないから、そこも珍しいかもしれないですね。

ーー今後の展望を教えてください。

教材を作って売るだけではなく、これにもう一個ひねりを加えたビジネスモデルを考えていて、それは「企業を絡める」ということです。例えば高校で講演会をすると200人、300人が一気に揃っているわけです。そこに企業が自社の社会課題に対する取り組みを「探究」の事例としてPRできたら企業にとってもいいはずで、その世代にアンケートを取ったり、アプリに誘導したりもできる。そういう場をリアルないし、オンラインでどんどん作っていく。そこのマッチングが上手くいくと、「探究の教材」と「Z世代のマーケティング」という2つのビジネスモデルを作ることができるのではないかと思っています。

ーー高校生が社会との接点を持つ、ということがいま求められていると感じますか。

めちゃめちゃ求められていると思います。未来を作る方々なので。でもそこがうまくいっていないと感じています。若者がなかなか社会を前向きに捉えられていなくて、ある調査では、日本では自分が国や社会を変えられると思っている若者は2割しかいないとのことでした。他の8割は閉塞感を感じている。他の国に比べるとずっと低いんです。

そこをなんとかしないと、日本という国が相当遅れをとってしまっている。こういう状況で「探究学習」をきっかけに、遅れを取り戻せたらいいと思っています。自分のテーマが見つかれば勉強もするし、「こうなりたい、こうありたい」と思うようになって、子供たちも自走するはずなんです。そこを駆動させるエンジン、入り口として、会社を作ったんです。

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