【文・写真/安藤歩美=宮城県仙台市】東日本大震災で大きな被害を受けた仙台市若林区の荒浜地区で6月30日、震災後に元住民が組織した「荒浜再生を願う会」の解散式が開かれた。



「現地再建」から「にぎわいづくり」へ

 震災前約750世帯の人々が暮らしていたという荒浜地区は、震災の大津波で街が壊滅的な被害を受け、新たな住宅の建設を禁止する「災害危険区域」に指定された。「荒浜再生を願う会」は2011年から街の現地再建を求めて活動していたが、2014年からは活動目標を「新たな賑わいづくり」に変更。荒浜を再び人の集まる地域にしようと、毎月、海岸清掃活動や参加者への荒浜の料理のおふるまい、気軽に参加できる「お茶っこ」などを継続。その周りには地域の外の人々が多く集まるようになり、震災後の荒浜のにぎわいの中心になっていた。

黄色い花束を受け取った「荒浜再生を願う会」代表の貴田喜一さん

 30日に同会の拠点「里海荒浜ロッジ」で開かれた解散式には、元住民や仙台市民のほか、震災後に荒浜を訪れて交流するようになった全国各地の荒浜のファンが集まった。会の始まりでは代表の貴田喜一さんがあいさつ。仙台市による土地の活用事業の構想が進む中で、「震災後の(会員の)一人ひとりの体験も思いも違う。いったん今日で終わりにして、これからの復興が来年あたりから少しずつ見えてくる状態で、これに向けての始まりがあってもいいのではないか」と解散について触れ、「被災に打ちのめされたのは非常に悲しい思いがあるが、マイナスだけでなく、震災を機に大きなつながりを持った方に色々教えていただいたことを財産で持ち続けて、一生懸命がんばります」と話し、大きな拍手を浴びた。

 自宅跡にプレハブ小屋を建て、漁の作業に通う会員の佐藤優子さんは「ここが災害危険区域指定になったとき、もう帰れないんだ、と大きなショックを受けました。でも、みんなの声に励まされてここまできた。うちには黄色い大漁旗があるんですが、定例会などがあるたびに、ああ、今日も大漁だな、皆さん来てくれたな、青空に、大きい、黄色い大漁旗が風にたなびいているな…って、思っています。この気持ちはいつまでも忘れない。どうぞこれからも荒浜に遊びに来て、声をかけて下さい」と話した。

貴田喜一さんの自宅跡に建てられた「荒浜再生を願う会」の拠点、里海荒浜ロッジ

「再会」の象徴となった黄色いハンカチ

 式の後は、同会の恒例でもある、荒浜の人々のおもてなしの心を存分に感じる「おふるまい」の時間。荒浜の郷土料理や、ロッジの窯で焼いたピザ、かき氷やお菓子などが気前よく振る舞われ、参加者の笑い声が耐えなかった。参加者は、荒浜再生を願う会が現地再建を目指して活動していたころからのシンボル「黄色いハンカチ」に、同会への感謝の気持ちや荒浜への思いなどのメッセージを書き記し、里海荒浜ロッジに掲げた。当初は元住民が「ここに帰りたい」と意思表示するために自宅跡に掲げていた黄色いハンカチには、この日「荒浜大好き」「また来ます」と記され、地域の外の人々がこの場所へまた帰ってくるような「出会いと再会」の象徴となって、真新しい黄色が力強く風になびいていた。

シェフが作り窯で焼く、本格的なピザが振る舞われる
黄色いハンカチに荒浜へのメッセージを託す参加者
ロッジに掲げられた真新しい黄色いハンカチたち

「多様なものを優しく包み込んでくれる場所に」

 最高気温が30度を超える炎天下でも、荒浜に吹く風は不思議とひんやりと、優しく肌に触れる。同会は解散するが、代表の貴田さんは震災で失われた荒浜独自の自然環境を再生していく活動を、同会の庄子隆弘さんは自宅跡の空間を開放して人の交流拠点を作る「海辺の図書館」の活動を発展させていくなど、それぞれがこの場所で新たな一歩を踏み出す。庄子さんは「この場所には、包摂性がある、と思うんです。多様なものを優しく包み込んでくれるような。だからこの自然の中にいることで、例えば街中で働いている人が傷ついて、つらいとき、ふらっとやってきて時間を過ごしたり、思わぬ偶然の出会いがあるような、そんな図書館のような場所にしたいんです」と語る。

自宅跡を拠点に「海辺の図書館」の活動を展開する庄子隆弘さん

会の締めは、参加者みんなで笑い合いながらクラッカーを引くという、最後まで明るい「解散式」。貴田さんは「終わりは、始まり。また新しいことをやっていきます。将来の荒浜のために、これからも頑張ります」と、締めくくった。

参加者みんなでクラッカーを引いて終わる、最後まで明るい「解散式」だった
「終わりは始まり」

***

「荒浜再生を願う会」のみなさんがたどってきた道のりは、決して平坦ではありませんでした。ご参考までに、筆者がこれまでに執筆した荒浜に関する記事でまだリンクが生きているものを、以下にご紹介します。

【カメラが去ったあと・被災地のいま】

【震災とイエ】放火された自宅の跡地で(2015.12.31、THE PAGE)

【震災とイエ】家々の土台が剥がされていく(2016.1.4、THE PAGE)

車窓から見えたのは「震災後」に生まれた風景だった 荒浜に一日限りバス復活(2016.12.15、TOHOKU360)

安藤歩美】TOHOKU360編集長。新聞記者として、2013年から宮城県で東日本大震災の被災地の報道等を担当。独立後、ニュースサイトTHE PAGEの記者としてyahoo!ニュースに全国ニュースの解説記事や、東北各地のニュースを提供。2016年に日本初のVR動画ニュースサイトとして「TOHOKU360」を立ち上げ、編集長に。地域に住む人がニュースを作る、ニュースの新しい生産と流通のしくみを、この東北の地で日々模索しています。執筆記事一覧





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