中野宏一=宮城県登米市】宮城県北部の農地で、太陽光に用いるパネルの下でキクラゲを栽培する「営農型太陽光発電」の試みが今年から始まり、収穫の時を迎えている。発電も9月末から始まり、発電パネルの設置場所を探す事業者と、休耕地の活用を考える土地所有者の新しい土地活用法として注目されそうだ。


太陽光パネルの下が「日本最大規模のキクラゲ農場」に

登米市の太陽光発電所(写真提供:サステナジー社)

9月21日、太陽光発電所を運営する再生エネルギー系ベンチャーのサステナジー(東京都)が開いた見学会に同行した。東北新幹線古川駅から車で約30分、宮城県登米市にある太陽光発電所についた。サステナジー社は、宮城県北部の登米市と加美町の2ヶ所で、キクラゲを栽培する太陽光発電所を運営している。

2メートルほどの高さの設置台に付けられた太陽光パネルの下で、アラゲキクラゲが所狭しと栽培されていた。今年は一部だが、来年全面で栽培を始めれば、収穫量は年間40トンに上るという。

「最初は、薬草も考えたのですが、育つまで数年かかるので、キノコということにしたんです。日陰でもよく育つので」。現地を案内してくれたのは、サステナジー社の菊池美南さん(25)。昨年新卒入社してから、この「キノコ事業」に専従している。「エネルギー事業で働きたくて入社したら、気づいたらキノコを作っている」と笑う。

菊池さんは「キノコの中でも商品価値の高いものを探したところ、生キクラゲになった」という。農林水産省「特用林産物生産統計調査」によれば、2016年の乾キクラゲの国内生産量は約60トン。対して輸入量は2350トン。輸入の99%以上が中国からだ。一方、この「営農型太陽光発電所」で生産されている「生キクラゲ」の国内生産量は約680トン。輸入量のデータはない。来年以降登米市と加美町の2つの「営農型太陽光発電所」で年40トン生産したら、日本最大規模のキクラゲ農場と言えるだろう。

サステナジー社で「キノコ事業」に専従している菊池美南さん(中野宏一撮影)

太陽光パネルの下で作物を生産する深いワケ

ソーラーパネルの下で育成されているアラゲキクラゲ(中野宏一撮影)

2012年に成立した「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」により、太陽光発電などの再生可能エネルギーは、条件を満たせば一定期間、全ての発電量を電力会社が買い取ることとなっている。サステナジー社の運営する宮城県の2つの太陽光発電所では、年間計約4000キロワット発電し、年間1億4000万円の売電売上を見込む。

ではなぜ、サステナジー社は、太陽光パネルの下で作物を生産しているのだろうか。それは、この土地が「農地」として登録されているからだ。農地への太陽光発電設備の設置は、「優良農地の確保」という農地法の考えから、「農地転用」になるとして原則許可されてこなかった。しかし、2013年の農水省通達で、営農を継続する場合に限り、3年以内の発電設備の設置が、一時転用として認められるようになった。設置には、農業委員会の許可が必要となる。

登米市の「営農型太陽光発電所」の設置農地は、耕作放棄地として荒れ地となっていた。その土地を有効活用しようという土地所有者と、太陽光パネルの設置場所を探していたサステナジー社の利害が一致し、今回の取り組みとなった。農場管理のためとして、地元雇用も生み出している。



注目集まる「営農型」の太陽光発電、課題も

太陽光パネルの下は日本最大級のキクラゲ農場(中野宏一撮影)

可能性を感じる「営農型太陽光発電事業」だが、課題もある。それは資金調達だ。今回、2ヶ所の発電所の事業費は、合わせて約13億円かかった。少なくとも20年間事業を継続する予定だが、そこに前述の「農地法」の問題が出てくる。「農業委員会」の許可は、3年に1回更新しなくてはならない。更新される保障はない。今回、日立キャピタル(東京都)が、ファイナンスを行った。同社の海藤大地さん(38)は、「農業分野に強みを持ち、太陽光発電のリースで実績を持つ当社だから(リスクを超えて)実現できた。このケースをモデルケースとして全国に展開したい」と話した。

休耕地の活用と太陽光発電による売電収入、さらにはキクラゲの生産による作物収入。「営農型太陽光発電」の注目度は高く、見学会当日は、岡山から日帰りで視察に来た土地所有者もいた。宮城発の新たな試みがどう広がるのか、注目される。





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