「これだけの被害は1400年で初めて」関東最古の寺院・鹿野山神野寺の重文が台風で全壊 千葉県君津市

関東地方で猛威をふるった台風15号の上陸から10日が経過した19日も、千葉県ではいまだ3万300軒で停電し、2818戸で断水が続いている(19日16時千葉県発表)。いまだ停電と断水の続く君津市鹿野山は、聖徳太子が1420年前に開いたとされる関東最古の寺院「鹿野山神野寺」が建つ。この日この地域を訪れた千葉県出身の記者が目にしたのは、国の重要文化財が全壊する想像以上の被害だった。

最大あと1週間はかかる停電の復旧、続く断水

鹿野山神野寺は昔から山岳信仰の霊場として賑わった場所で、今でも多くの参拝客が訪れる。鹿野山はなだらかな丘陵が続く房総半島ならではの地形が見渡せる観光地でもあり、記者も千葉に住んでいたときには何度も訪れていた。

そんな鹿野山地区ではいまだ電気と水道が復旧していない。東京電力によると鹿野山の停電は「9月27日までに復旧見込み」とされており、復旧には最大でまだあと一週間ほどかかることになる。

鹿野山から見渡せる風景
観光地である鹿野山のトイレも断水で使用禁止になっていた(9月19日)

全壊した室町時代の国重要文化財

鹿野山神野寺を訪れるとそこには、目を疑う風景があった。敷地内で最も古い建物である室町時代に建てられた国の重要文化財「神野寺表門」が倒壊していたのだ。この日君津市教育委員会が調査に訪れ、この建物は「全壊」判定を受けたという。

室町時代に建築されたとされる国の重要文化財「神野寺表門」が全壊(9月19日)

「1400年続いた神野寺も、これだけの被害は初めてです」。「表門」の他にも多くの建物が損傷したといい、副住職の岩間照種さん(47)が、寺の被害状況を案内してくれた。

(鹿野山神野寺の被害状況。動画の最後に副住職のメッセージあり)

「旧護摩堂」には建物の上に杉の木が何本も倒れ込んでいる。「奥の院」は台風の強風により建物が歪み、吹き上げた風の強さからか、建物が基礎部分からずれて1cmほど浮き上がり、内部は雨漏りしていた。宿坊「三密寮」は床板や天井が剥がれて雨漏りがしていて、重要な文化財が痛むことが心配される。本堂も装飾物の落下や一部の屋根の剥離が見られる。(被害状況の詳しいようすは動画をご覧下さい)

倒木が覆いかぶさる「旧護摩堂」(9月19日)
「三密寮」天井からは雨漏りが続き、文化財の痛みが懸念される(9月19日)

岩間さんは「なんとか重要文化財の表門をはじめとした古建築を、後世に伝えるのが大事なことだと思っている。一生懸命、早く修復していきたい。近辺でも被災した人々がたくさんいるので、多くの人が千葉県に温かいご支援をいただけたら」と話した。

「歴史ある建築を後世に残したい」と話す副住職の岩間照種さん(9月19日)

鹿野山神野寺には倒木や枝などを片付けるボランティアが集まり連日作業に当たっているが、まだ人手が足りない状況だという。ボランティアや寄付は鹿野山神野寺の公式サイト(https://jinyaji.web.fc2.com//)から受け付けている。

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