家にある「乾物」が、おいしい防災食に!仙台で防災食作り講座

柴田あきね】「防災食」と聞くと、どんなものが思い浮かびますか?乾パン、レトルト食品、缶詰など、きちんと用意しておかなければと思いながら、つい後回しになってしまう方も多いかもしれません。しかし2022年12月3日(土)、仙台市宮城野区中央市民センターで開催された親子料理教室「スーパー防災食をつくろう!」では乾物防災食講師(DRY and PEACE)の田中勢子さんが、特別なものではない、いつも家にある“乾物”がりっぱな防災食になると提案。小学生とその保護者のみなさんが、楽しく防災食づくりに取り組んだ一日を取材しました。

意外と知らない、“乾物”ってなんだろう?

できてまだ10年だという、きれいで明るい調理室で始まった第1回目は「乾物の作り方を学ぼう」がテーマ(教室は全2回)。まずは田中さんが「乾物って知っていますか?」と質問しますが、手をあげる人はいません。ところが、カップラーメンのふたを開けて、「この“麺とかやく”が乾物です」と言うと、みなさん大きくうなずきました。

親子料理教室「スーパー防災食をつくろう!」で講演する乾物防災食講師(DRY and PEACE)の田中勢子さん=2022年12月3日、仙台市宮城野区中央市民センター

そのほかにも、ずらりと並んだ乾物は、身近なものからめずらしいものまで盛りだくさん。干ししいたけは加熱しないと皮膚炎になってしまうので注意が必要、世界最小のパスタ・クスクスはコーンスープにまぜるのがおすすめ、戻すときはお豆腐やジュースにまぜてもOK……といった知識もどんどん披露されます。

災害が起きたとき、“乾物”がおすすめな理由

長期保存ができるのはもちろん、重さは約10分の1になるので避難先に持っていくのも楽ですし、災害時あらかじめ切ってあるものを使えば包丁やまな板もいりません。宮城県でよく食べられている油麩は加熱されているので、災害時はそのまま食べられて便利とのこと。軽いと輸送時のCO2削減にもつながるので、SDGsの考え方にも合致します。

乾物を使ったレシピを紹介する田中勢子さん=2022年12月3日、仙台市宮城野区中央市民センター

ちなみに、DRY and PEACEが開発した乾物レシピのなかで特に人気だったのは

  1. 干し大根と無塩タイプのツナ缶、塩昆布、梅干しをビニール袋に入れてもんだもの
  2. 干しアンズと長期保存の豆腐、醤油、さとう、練りゴマをまぜた白和え

だそうです。①は大人用のおつまみにもぴったりですね。

手づくり“乾物”にチャレンジ!

今回チャレンジする手づくり乾物は、上記のレシピにも登場した“干し野菜”。まずは好みの大きさに切っていきますが、ナスやレンコンのようにアクのある野菜はもどりにくくなるので皮をむいてから酢水やみずにつけアクを抜きます。人参は皮のあいだのポリフェノールで黒くなってしまうので皮をむく、白菜など葉物野菜は熱湯にさっとくぐらせる(繊維がこわれて乾燥しやすくなるため)、といった一手間が必要なものもありました。

野菜の下ごしらえにチャレンジ

ピーラーがあまり得意でないと言っていた田中さんの横で、小学生のみなさんは、上手に皮むきができていました。保護者の方はお子さんの奮闘を見守りつつ、うまくできないところは一緒に取り組みます。

野菜のカットができたら、次は干す作業に移ります。

乾燥しやすいように干していきます

干し網がなくても、食器かご、ピンチつきミニハンガー、魚焼きグリルの網部分など、使えそうなものはどんどん使ってOKだそうです。ほぐしたエノキなど、細いものはすきまから落ちてしまうので、キッチンペーパーをしいてから並べるのがおすすめ。

みなさんとてもていねいに並べていくので、田中さんも驚いていました。

この日の作業はここまで。2週間後の12月17日(土)に開催される2回目の料理教室まで、それぞれ自宅で干して仕上げます。どんなふうに変わっていくか、経過を見るのも楽しみですね。

なお、こういった手作りの乾物は水分が残る場合もあるので、きちんと乾燥させてから1週間程度で食べきることを推奨しているそうです。保管も、密閉容器ではなく木箱や紙袋が最適とのことでした。

たくさんの野菜をおみやげに抱えたみなさんに話を聞いてみると、低学年の男の子は「別の料理教室に行ったことがあり、それがとても楽しくて、料理がしたくて参加した」、高学年の女の子は「料理が苦手なので、この機会にチャレンジしたかった」とのこと。

「防災」と聞くと、なんだか怖かったり、大変そうなイメージを持ったりしてしまうかもしれませんが、まずは料理に興味を持って楽しむうちに、いつのまにか非常時に役立つ知識が得られる、敷居の低い防災レッスンだと感じました。

“いつも”と “もしも”を区別しない、日常のなかの防災

教室終了後、コラボレーションをされている「せんだい女性防災リーダーネット宮城野」の方々と田中さんが次回のレシピを試す試作会にも参加させていただきました。

予定しているのは、アレルギーの方にも対応した「豆乳と米粉のトルティーヤ 干し野菜をそえて」、冷蔵庫なしでも固まる寒天入り「あずきのびっくりプリン」。和気あいあいとおしゃべりしながら、アイデアがどんどん飛び交います。

レシピを模索中の、田中勢子さんと「せんだい女性防災リーダーネット宮城野」のみなさん

東日本大震災の6年前に防災士の資格を取得し、2009年に一般市民活動団体「わしん倶楽部」を立ち上げた田中さんは、「いつもしも」をキーワードに、「いつも」と「もしも」の垣根をなくした「備えない防災」を長年広めつづけてきました。

「災害対策は、『ここで終わり』ができないからこそ、楽しく続けられることが大事」「いつもまわりの方々に、助けてもらい、教えてもらっている。例えば『ビンゴゲーム 非常持ちだし袋を考えよう!』では、雨具はレインコートやカッパって言わないと伝わらないこととかね」とほがらかに笑う田中さん。楽しくておいしくて、日常のなかに息づく新しい「防災」を教えてもらった一日となりました。

このほかにも、仙台市宮城野区中央市民センターでは老若男女問わずご参加頂ける、様々なジャンルの講座を開催しています。ウェブサイトのお知らせコーナーをぜひチェックしてみてください。

https://www.sendai-shimincenter.jp/miyagino/miyaginochuou/

この記事はTOHOKU360と宮城野区中央市民センターとのコラボ事業「東北ニューススクールin宮城野」の参加者が執筆した記事です。宮城野区の市民活動を取材した参加者たちが、地域の課題に取り組む人々の活動や思いに迫ります。

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