【安藤歩美】福島県いわき市出身で、仙台を拠点に活躍する小説家の根本聡一郎さんが、9月24日から放送されるKing Gnu・井口理さん主演のWEBドラマ「ゴシップボックス(GOSSIP BOX)」の脚本を担当する。プロデュースはタレントのMEGUMIさん。「社会派エンターテイメント」作品を多く手がけてきた若手小説家の根本さんに、今回のドラマの見どころを聞いた。
豪華出演陣による密室クライムコメディ
「ゴシップボックス」は、9月24日からYouTubeで配信されるWEBドラマ。初対面の4人の男女が閉じ込められた部屋で、全員の「共通項」 を探し当てなければ部屋から出ることができない。そのためお互いが徐々にプライベートな秘密を明かしていくーーという密室コメディだ。井口理さん、吉村界人さん、浅川梨奈さん、MEGUMIさんといった豪華出演陣のほか、事前には明かされない「意外な犯人役」も見どころの一つだという。
脚本を手がけた根本聡一郎さんは、広告代理店の最終選考に挑む就活生たちのゲームを描いた『プロパガンダゲーム』(双葉文庫、2017)以降、社会派エンターテイメント小説を世に出し続けている東北の若手小説家だ。今回の「ゴシップボックス」は2015年にWEB小説として発表したものが原作で、共同テレビの佐々木豪監督によって映像化が企画された。根本さんは「King Gnuのみなさんは世代も近く、アルバム『CEREMONY』を移動中によく聴いていたので、今回井口さん主演で映像化されるという話はめちゃくちゃ嬉しかった」と語る。
異様なほどの「芸能ゴシップ」を問う
根本さんが原作「ゴシップボックス」を執筆した背景には、芸能ゴシップを異様なほどに取り上げる現代社会への問題意識があったという。
「最近はワイドショーやSNSで、スキャンダルを起こした芸能人が凶悪犯罪者並みに叩かれますよね。でも世の中には他に時間を割くべき大事なことはいっぱいあるんじゃないか、と一石を投じる話があってもいいと思ったんです。『ゴシップボックス』では4人が密室で共通項を見つけるために、最初は『東京に住んでいる』とか基本的なところを話すのですが、共通点が全然ない。するとどんどん言いたくなかったことを言わざるをえなくなり、ゴシップが密室で飛び交う。一般人でも、芸能人のように知られたくないプライベートな部分を晒していく状況になるわけです。自分が芸能人と同じ目にあったとき、無事な人は一体どれだけいるのか?と問いかけたかった」
映像化にあたっては、MEGUMIさんが初めてドラマのプロデュースを担当。根本さんも撮影初日に現場を見学したが、MEGUMIさんや出演者の作品への熱量の高さに驚かされたという。
「プロデュースのMEGUMIさん、監督の佐々木さんとリモートでお打ち合わせをしながら台本を修正していって、結果的にどんどん面白くなりました。皆さんの役作りもすごくて。吉村さんはリアルに“渋谷のITベンチャー社長”ぽいし、MEGUMIさんの”南青山在住”感の出し方もすごい。キャラの豹変が激しい浅川さんの怪演ぶりも見てほしい」
「そして何と言っても井口さん!演技への取り組み方がとても真摯で、リハや撮り直しの提案も積極的にしてくれて。本当に真剣に芝居をして下さっているのがわかりました。いくつか井口さんのアドリブの台詞があるんですけど、あまりに面白かったので『タップノベル』版(同時公開されるWEB小説)の方にも採用させてもらいました。密室のロケで大変なのに、皆さん和やかでとてもいい雰囲気でしたね」
文句なしにおもしろい「社会派エンターテイメント」を
エンターテイメントとして楽しめる作品ながら、現代社会の問題についても斬り込んでいく「ゴシップボックス」。根本さんは今後も小説家として「エンターテイメントを通して社会を描く」ことを続けたいと語る。
「小説を書き始めたのは東日本大震災がきっかけですが、今後もそれを直接書くことはしないかも。震災後に沿岸部の支援活動をしていたとき、大変なことをただ大変だと伝えても伝わらない、ということを実感して。それからは『東北はこんなに素敵な場所なんだ』という魅力や楽しさを前面に出して、その先に大事なことがあるよ、という形で情報を届けることを大事にするようになりました。今回のドラマでも、最終話に一番伝えたい情報があります。『文句なしにおもしろいエンターテイメント』を作って、そこに社会的なメッセージを込める。そういうことを今後もやっていきたいですね」
「ゴシップボックス」はYouTubeオリコンチャンネルにて、9月24日から配信。10月4日からは、WEB小説サイト「タップノベル」でドラマ版とは展開の異なる小説も公開される予定だ。
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