八幡町出身の音楽家が作る伝統の味 仙台・八幡町甘酒の歩みとこれから 

岩崎尚美=仙台市】伊達政宗公が建てた国宝・大崎八幡宮の門前町である八幡町。この町には、今も歴史の名残を感じさせてくれるさまざまなヒト・モノ・コトが溢れています。そんな八幡町で、伝統的な製法を守りつつ昔ながらの甘酒を作っている八幡町甘酒製造(仙台市青葉区)の榊原光裕さんにお話を伺いました。

仙台を代表する音楽家が生み出した八幡町甘酒

八幡町甘酒のルーツは、榊原さんの祖母・竹代さんの代にまで遡ります。当時、仙台市内にはたくさんのこうじ屋があり、多くの家でオリジナルの甘酒を作っていたのだそう。竹代さんも同様で、「大崎八幡宮で毎年1月に行われる『どんと祭』では、参拝客の皆さんに甘酒を振舞っていました。私も子どもながらに甘酒作りを手伝わされたものです」と榊原さん。

「定禅寺ストリートジャズ・フェスティバル」や「すずめ踊り」の企画を担当、JR仙台駅の列車発車メロディ作曲を手掛けるなど、仙台を代表する音楽家としても知られる榊原さんが、甘酒作りを始めたのは2010年頃のこと。生まれ育った愛着のある八幡町に、祖母や両親から受け継いだものを何か残せないだろうか、と考えたのがきっかけだったそうです。

初めは自分と親しい友人知人だけで味わっていたそうですが、次第に音楽イベントでも振る舞うようになると、「おいしい!」と好評を得るように。「もっとたくさん作ってみようか」と手応えを感じた榊原さんは、それから本格的に甘酒作りを研究し始め、2014年には「八幡町甘酒製造」を立ち上げ事業を開始しました。

伝統的な製法で作られる甘酒『竹園』

八幡町甘酒製造で取り扱うのは、昔ながらの無添加甘酒『竹園(ちくおん)』と、2018年に新開発された『Ferment Sweet(ファーメントスイート)』の2種類。『竹園』の商品名は、祖母・竹代さんの名前が由来となったそうです。

左2本が『竹園』、右が『Ferment Sweet』
左2本が『竹園』、右が『Ferment Sweet』

『竹園』の特徴は、炊いたもち米を加えたことで生まれるコクと甘み。原料となる米こうじともち米は、宮城県産のものを使用するのもこだわりです。現代ではほとんどが工場生産となってしまったこうじですが、『竹園』に使われるこうじは、伊達政宗公の時代から400年の伝統を持つ岩出山のこうじ屋が手作りしているもの。榊原さんが一軒一軒こうじ屋を巡り、「これだ!」と感じて契約を決めたそうです。

『Ferment Sweet』は、『竹園』のもち米の粒を濾過してより飲みやすく仕上げた甘酒で、お客様の希望をもとに開発されました。もち米がたっぷり入った『竹園』は年配の方から、さらっと飲める『Ferment Sweet』は若い世代から人気があり、八幡町甘酒は幅広い世代に親しまれています。

たっぷりもち米が入った『竹園』

おいしさの秘密は、発酵後の冷蔵保存。榊原さんによると、この工程により甘みやコク、旨味が増し、栄養価もアップするのだとか。そのまま飲むのはもちろん、砂糖やみりんの代わりなど料理に使うのもおすすめです。

『竹園』は720ml瓶と360ml瓶、『Ferment Sweet』は360ml瓶のみの提供で、市内4店舗で購入可能。価格は、720ml瓶が1,300円、360ml瓶が680円。カフェnicomo(八幡町1丁目)のみ税込み、他3店舗では税別価格で販売されています。

日本の食文化を支える「こうじ」伝えていきたい

音楽と甘酒作りの共通点は? と伺うと、「もともと工業大学出身なので、いわゆる左脳派なんです。それが音楽にも、甘酒作りにも生きていますね」と榊原さん。感覚が重視されると思われがちな音楽ですが、編曲やセッションなどでは数学的な考え方を要する場面が意外と多いのだそうですよ。

2006年、こうじ菌が「国菌」として認定されました。味噌や醤油など、昔からこうじを使った発酵食品は食べられてきたにもかかわらず、こうじのことをよく知らない人が多い、と榊原さんは言います。「古来から日本の食文化を支えてきたこうじについて、子ども達にちゃんと伝えていきたい。ゆくゆくはこうじ作りにもチャレンジしたい」と意気込みを語ってくれました。八幡町から甘酒の魅力、こうじの魅力を伝えるムーブメントが起こりつつあるようです。

この記事はTOHOKU360とYotsuya Canalが今年2月に開いた「東北ニューススクール in 八幡町」の受講生の記事です。受講生たちが独自の視点から、歴史と伝統が根付く「八幡町」の魅力やユニークな人、活動を掘り下げて取材・執筆していきます。ご期待下さい!

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