【若栁誉美】子どもたちが麻雀を楽しむ場を作りたいという思いから集まったメンバーによる小中高生向けの麻雀教室「ふれあいまーじゃんすぺーす じゃんすぺ」が、2024年9月16日に仙台市市民活動サポートセンターで開催されました。
このイベントは、仙台市を中心に「小・中・高生にも麻雀ができる場所づくり」を目標に、一般社団法人アーツグラウンド東北が主催しています。部活動のようなイメージで気軽に麻雀に触れる場を作りたいと考え、2024年8月に1回目を開催し、9名が参加しました。2度目となる今回は、23名の小中高生が参加しました。筆者は、この2度目の会にボランティアスタッフとして参加。この会が開催されるに至った経緯と、後半に当日のレポートを交えてお伝えします。
未成年者の体験の場が少ない、麻雀の世界
現状、街中で営業する「雀荘」と呼ばれる場所は、風俗営業法の許可が必要であり、18歳未満の立ち入りが禁止されています。そのため、高校生を含む学生が麻雀を打つ場合、公共の施設や貸しスペースで開催される麻雀教室に参加するか、家族で楽しむことになり、体験できる機会が非常に少ないのです。
本会を主催する一般社団法人アーツグラウンド東北の代表・千田優太さんは、「すべての人に文化芸術に触れる機会を」という信念を持っています。「文化芸術」と一口に言っても、演劇や音楽、絵画など多岐にわたります。文化芸術基本法第12条には、次のような記載があります。
「国は,生活文化(茶道,華道,書道,食文化その他の生活に係る文化をいう。)の振興を図るとともに,国民娯楽(囲碁,将棋その他の国民的娯楽をいう。)並びに出版物及びレコード等の普及を図るため,これらに関する活動への支援その他の必要な施策を講ずるものとする。」
麻雀は、文化芸術基本法の中で明確に種目として言及されていません。ただし、文化庁主催の「国民文化祭」の中には「麻雀」という種目が毎年入っており、麻雀の歴史を見ても、囲碁や将棋と同様に中国から入ってきたものの日本独自の発展を遂げているという共通点があります。全国の文化芸術関係者にヒアリングした結果も踏まえ、麻雀は文化芸術であるという結論に達した、と千田さんは語ります。
そして千田さん自身も学生時代から親しんできた「麻雀」という分野には、文化芸術基本法第12条に定められているような「活動への支援、その他の必要な施策」が十分に講じられていないのではないかと感じていました。数ある芸術分野の中でも、風営法で規制がかかっているのは麻雀くらいではないかと考えています。
「麻雀をやってみたい子どもたちに機会を」
「子どもたちの選択肢は多いほうがいい。あっちはよくてこっちはダメ、ではなく、自分の興味のあるものを見つける機会を提供したい。麻雀を普及したいというよりは、麻雀をやってみたいという子どもたちに適切な機会を提供したいという思いが強いですね」(千田さん)
千田さんはダンスや身体表現の元パフォーマーで、麻雀プロではありません。震災復興支援活動で、幼稚園の先生と対話する中で生まれた「未就学児やその保護者が安心してダンスに触れる場を作りたい」という思いから、全国のダンサーが集まり、休日の幼稚園のあらゆる場所でダンスを始める「ダンス幼稚園」という活動を続けてきました。そしてダンスと同様に、「家以外の社会の中で、18歳未満が麻雀を学び、経験する場がほとんどない」ということに気づきました。
このイベントを思いついたとき、千田さんの頭に浮かんだのは、学生時代の先輩であり、日本プロ麻雀協会所属の豊原有太プロでした。後輩である千田さんの相談を受け、豊原プロも周りに声をかけ、1回目の開催を迎えました。第1回目には9人が参加しました。
自分のペースで楽しむ子どもたちを、筆者もサポート
今回は参加者が多いため、経験者と初心者の2つのグループに分け、それぞれにプロ雀士の講師がついて指導します。筆者は初心者グループの1つの卓につきました。
楽しんで少しずつ慣れてほしいというコンセプトのもと、「どんな種類の牌があるか」「どんな組み合わせを作るとよいか」を牌に触れながら学んでいきます。
実際の麻雀では、各人が手元に13枚の牌を持ち、1枚を入れ替えながら形を作ります。その「組み合わせを作る」ことに慣れるため、4枚の牌で行う「4枚麻雀」を実施し、徐々に慣れていきます。慣れてきたところで、枚数を増やし、7枚麻雀を何度かやってみます。
経験者のグループは、実践形式で進んでいきます。迷った時は、サポートに入っている麻雀プロ達に質問をしながら、自分の手を進めていく子どもたち。
うまくできないことが悔しくて、泣いてしまう子や、「楽しい!もっとやりたい!」と自ら次のゲームをはじめる子。それぞれが自分のペースで、麻雀を楽しんでいて、一緒にやっている私も、とても楽しい時間を過ごしました。最後は麻雀牌を使ったビンゴ大会で、プロ雀士のサイン入り色紙や麻雀グッズを競い合いました。
麻雀は、人生のよう。体験から学べること
「囲碁や将棋などのテーブルゲームはたくさんあります。麻雀に特化してお話しすると、囲碁や将棋は2人で行いますが、麻雀は4人で行います。1局でアガることができるのは一人だけで、誰もアガれないこともあります。経験や実力だけでなく、運の要素も大きいです。麻雀の対局の中で、うまくいかないことを繰り返し、たくさん失敗していく中で、そうしたトライアンドエラーが社会を生きる上での出来事に似ているなと思います。そういった擬似体験の中で、普段出会えない自分の一面と出会うことができたら素敵ですよね」(千田さん)
来月以降も、月に1回〜定期開催する予定とのこと。詳細は、じゃんすぺのSNSアカウント(Xアカウント)から発信していくそうです。
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