「今何とかしなければ、東北だけが出遅れる」東北の食品輸出の今

  • 2017年1月20日
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【相沢由介=仙台市・南三陸町】政府は農林水産品やその加工品など、食品の輸出拡大を成長戦略の一つに位置づけ、これを強く後押ししています。しかし、特に首都圏以外の地方においては小規模な生産者やメーカーが多く、それらが単独で輸出する、あるいは海外市場でマーケティング活動を行うのは大変難しいことで、このことが日本の食品輸出拡大における大きな課題になっています。東北の食品輸出の現状を取材しました。

宮城県南三陸町の水産加工品製造・販売会社「ヤマウチ」の工場での加工の様子(相沢由介撮影)

 輸出を含めた食品の海外展開を支援する仙台市の株式会社桜波の阿部錬平さんは、東北の食品の海外輸出、その現状についてこう話します。

 「例えばジャガイモのようにありふれた商材は、すでに大手商社が大多数の末端消費者をターゲットとするコンシューマー商品として海外市場に供給しています。地場産品の売込みには、地域の特色を付加価値としてアピールする必要がありますが、そもそも海外に出れば、東北ってどこ?というところから始まるので、中小の一社が乗り込んでアピールしたところでどうしようもないんです」

 地方の食品の海外への売込みには、点ではなく面でのアクションが必要とのこと。しかし、東北ではこれが上手くいっていないそうです。

 「企業同士が団体を組もうと思っても、お互いが競争相手でもあるのでまとまらないんです。北海道は、道が音頭をとって企業をまとめることで、海外に通用する北海道ブランドを確立できました。でも、東北はこれができていません。“商談を3つ4つやったんだけど、どこからも話が来ないからもうやめる”。このように、1年2年で失敗する企業がほとんどです」

海外展開という言葉だけが独り歩き

 結果が伴わなくても、近年、海外輸出を目指す企業の数は増え続けてきました。しかし、それらの企業になぜ海外を目指すのかという動機を聞いても、その回答のほとんどが「海外展開の流れがキテるから」という、ぼんやりしたものだと阿部さんはいいます。

 「政府が言っているから、周りが言っているから……どうして海外を目指すのか、その動機が企業の内側にないんです。だから失敗する」

 動機がないのに企業が海外を目指そうとするのは、海外展開にはたくさんの補助金が用意されているから。補助金が出ているからとりあえず飛びつく、そういう企業が多い、と阿部さん。

「例えば東南アジアに進出する企業への補助金がたくさん出ています。そうするとみんなその流れに乗ろうとする。でも、御社の商品が本当にその国で受け入れられるものなんですか?と。補助金目当てに計画を立てるのではなく、計画の中に補助金の活用があるべきです」

商流・物流の流れを図にして説明する阿部錬平さん(相沢由介撮影)

海外輸出の計画設計ができる企業は、国内の売り上げも伸びる

 株式会社桜波は現在、宮城県南三陸町で鮮魚や水産加工品の製造・販売を行う株式会社ヤマウチの海外展開を支援。焼き魚を真空パックした『しっかり朝ごはん 焼魚シリーズ』のオーストラリアへの輸出を目指しています。ヤマウチ取締役の山内淳平さんが海外輸出の担当となり、阿部さんのレクチャーを受けながら受発注、生産計画、規格管理等の社内体制を見直し、海外輸出までの全体計画の策定を行っています。実際にオーストラリアの市場を視察してきた山内さんは、「オーストラリアに商品が並んでいるメーカーは、国内の販路においても体制がしっかりしているところ」と実感したそうです。

ヤマウチで海外輸出を担当する山内淳平さん。阿部さんのレクチャーをふまえ、海外輸出の全体計画をつくっていく

 同じ食品でも、東京に売るものと関西に売るものでは、それぞれの地域によって味付けが異なり、配送ルートが異なり、売り方が異なります。海外に商品を売るのもこれと同じことだと阿部さん。

 「つまり、国内のレベルをあげないと海外対応はできない。地方では、古くからの縁故を頼りに経営をしていて、そもそも売り上げの数字目標を決めたこともないという企業が非常に多いです。そういう企業は、海外展開を目指す前に東京できちんと売っていますかと。国内市場が縮小しているから海外だとよく言われますが、その言説を商品が売れない理由にして海外を目指そうというのは間違いです」

 企業の海外輸出を支援する仕組みは沢山あります。公的機関が海外についてのリサーチデータを詳細に公開。海外輸出をセクションごとにサポートするコンサルタントも豊富です。前述のように補助金も豊富。

 しかし、「生産者から海外の消費者へ商品が届くまでの“全体”の計画がなければ、企業はデータもコンサルタントも活用できない」と阿部さん。その全体を描ける人材の不足が、東北の食品の海外輸出における課題とのこと。

地方から、自分たちの手で、世界へ届ける

食品の海外輸出に挑戦する宮城県南三陸町の「ヤマウチ」(相沢由介撮影)

 阿部さんは桜波の支援を、結果だけを与えるのではなく、企業自らが結果を掴み取れるように環境を作るインキュベーション(卵のふ化)と位置づけ、地方の食品が大都市圏からではなく、地方の人たち自身の手によって海外に届けられる、その土壌を作ろうとしています。

 「東北の企業は受注型、下請け体質なんだと思います。基本的には、東北の豊富な食材を求めて首都圏の人たちが買い付けに来てくれるんです。言われるがままに出荷しているという状態がずっと続いてきたので、自分たちがアクションを起こして攻めようというマインドが希薄なんだと思います」

 今何とかしておかないと、東北だけが他の地域に出遅れる、その危機感を阿部さんは感じているといいます。

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