【続・仙台ジャズノート#103】ジャズ音楽の「謎」

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

【佐藤和文】長い間、ジャズ音楽にリスナーとして親しんでいても、どうしても分からないのがジャズ特有の「アドリブ(即興演奏)」がどんな理論と技術的な鍛錬によって可能になるのか、でした。ジャズアドリブの『秘密』に少しでも近づきたい。60過ぎて初めて音楽教室に通い、先生と呼べる人に個人的に指導を受けるようになったのも、そのためでした。

とは言っても、アドリブについては漠然と考えていただけで、その先にどんな課題があるのか、目標に近付くためにどうすればいいのか、それは自分にとって達成可能な目標なのか-など、意識することはありませんでした。今にして思えば、アルトサックスという楽器の基本操作さえ覚束ない、ジジイがいきなり「アドリブしたい」と現れたのだから師匠も、さぞ驚いたことだろうと思います。実際、原則として月1回、1時間の個人レッスンを受けるようになると、自分がいかに高望みしていたかがすぐに分かりました。

「もっと基本レベルから取り組む方がいいのではないでしょうか」と相談したことがあります。先生の答えは「ノー」でした。「おすすめできない」とのことでした。おそらく筆者が「アドリブを」と強く願うものだから、どのように指導すればいいか先生も手探りしていたでしょう。新しいことを身に着けるのに基礎編から入るのはごく普通の手順です。あのときに楽器操作の基礎的な練習を課題の中心に据えられたら、長続きしなかったかもしれません。

時間も根気も有限なシニア世代にとって、ジャズに親しみ、楽しむ実感=ワクワク感が何よりも大事です。若いみなさんには恐らく何のことか分からないと思いますが、演奏の実技や理論のややこしいくだりに差し掛かり、少し負荷を感じるようになると、「この年になって、自分は一体何になろうとしているのか」という思いが募ります。しかも、その負荷は形を変えて繰り返しやってきます。記憶力の衰えを少しでも補うためにとりはじめたノートはどんどん増え続け、どこに何を書き付けたか、あっという間に分からなくなりました。

拙著「アドリブの『あ』 60代からのジャズ志願」の裏表紙。ジャズ音楽の「謎」はまだまだ解けない。

もちろん、ジャズを学ぶと言っても大層な目標があるわけではないわけですが、だからと言って、ジャズ音楽を習うことの、当面の目標がシンプルに「ジャズを楽しむ」ことだけだすると、案外、根性が座らないものです。そんなヤワな感じをどこかで支えてくれる要素があるとしたら、やはりジャズ音楽の『秘密』に少しでも近づきつつあるというワクワク感であり、手ごたえです。

この連載の70回目までをまとめて出版した拙著「アドリブの『あ』 60代からのジャズ志願」があります。編集・製作の最終工程で、その裏表紙に「ジャズ音楽の『謎』に挑む」とやや大げさに書いたのも、そんな思いからでした。「アドリブの『あ』」は紙の本、電子書籍ともにアマゾンから購入することができます。価格的には電子書籍がだいぶお得です。機会があったら検索してみてください。

筆者の場合、若いころからバンドを組むという動作が日常になっていたことも大きかったように思います。社会人になってからも、ドラム、アルトサックスを演奏する側として5つのアマチュアバンドに参加してきました。メーンバンドは1990年に参加し、ギターからドラム-アルトサックスへとチェンジして現在に至っているジャズコンボ(少人数の編成)です。

このほか、5年間、ドラムを担当し、仙台の定禅寺ジャズフェスティバルなどで楽しませてもらったビッグバンドが一つ。コンボ系の活動を強化したいため、昨年の定禅寺ジャズフェスティバルを区切りに現在お休みをいただいているビッグバンドが一つあります。

初心者がジャズを習う場合、何と言っても基本を軸に身に着ける音楽教室のような、芯になる機会が重要ですが、さらに教室で身に着けた物事を実際に試してみる場としてのバンド活動があるのが理想的だと思います。

*この連載が本になりました

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