【続・仙台ジャズノート#109】あらためてビバップを聴く。パーカーのラテン集をきっかけに

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

【佐藤和文】先日、なじみのカフェに顔を出したらラテン特集のようなジャズレコードがかかっていました。アルトサックスがメーンであることはすぐに分かったのですが、あまり聴いたことのない音色のように思えました。店主にたずねると「(チャーリー・)パーカーです」との返事。聴き手としての筆者の耳は、現代につながるスーパーレジェンド、チャーリー・パーカー(サックス)を聴き分けることもできないのか。ジャズ音楽を長い間聴いてきたつもりでいるだけにさすがにちょっとがっかりしました。

パーカーと言えばモダンジャズの始まりである「ビバップ」の創始者のひとりです。「ビバップ」は1940年代に隆盛を極め、現代ジャズの水脈となっているスタイルと言われています。ビバップと言えば、神業としか思えない高速スイングをまずイメージします。一筋縄ではいかない感じ。正直なところ聴き手としては苦手意識が先に立ちます。

「ビバップ」の特徴を探り、自分なりの練習の端緒とするため、サックス教室のレッスンを整理したメモや手近にある資料を読み返しました。その結果、「ジャズ言語である『ビバップ』のニュアンスをつくるには、『コードトーン』(コード=和音を構成する音)の半音下か半音上の音を『経過音(アプローチノート)』として修飾的に使う」という趣旨の説明を見つけました。いわゆる半音つながりのスケール(音階)をどの音からでも吹けるようにする「半音階(クロマティックスケール)」のところで、同じような解説を聞いた覚えがあります。残念ながらとても難しく感じて最近まで迂回してきた課題の一つでした。

レジェンドのひとりチャーリー・パーカーの作品の数々。ビバップそのものといっていい歴史スタイルは現代のジャズ奏者にとっても今なお重要だ。

とりあえず手に入る資料の力を借りて、自分なりに整理すると、ビバップ独特のニュアンスを生むためのこつはほぼ以下の通りです。ややこしくて敬遠したくなりますが、基本のキを覚えるための第一歩と受け止めましょう。

  • アドリブの対象になる小節では1、3拍目にコードトーンを置く。和音がCメジャーなら「ド」「ミ」「ソ」のいずれか。
  • 経過音はアドリブしたい小節の直前(前の小節の最後)に置く。
  • 経過音をうまく使うことでビバップの形になるはず。

難しいことはともかく、まずここだけ理解できればいいことにします。たとえば、アドリブ対象となる小節のコード(和音)が「Cメジャー」(構成音は「ド」「ミ」「ソ」)で1拍目に「ド」の音が来ている場合、アドリブするには「ド」の半音下の「シ」か、「ド」の半音上の「ド#」を経過音としてフレーズを始めるというものです。経過音を複数にし、ターゲットとするコードトーンを変えるなど、実際の演奏は驚くほど複雑になるようですが、経過音が一つの組み合わせでも、何度も繰り返すうちにビバップのニュアンスが身体にしみこむ感じです。何とかここだけマスターして後は当面、指まかせでいいことにしよう、と思うことにします。

コードトーンの直前に置く経過音でさまざまに修飾する奏法は、サックス教室入門直後に教えてもらった「アーティキュレーション(音の切り方や次の音との続け方など、ジャズならではの演奏上の技法)」につながります。今回、「食う」ための経過音を半音スケールの考え方に沿って決める点だけが新しい。それにしても、「半音スケール(クロマティックスケール)」という基礎を迂回してしまったことで、基礎的なポイントがないがしろになっているのを感じます。

そのようなわけで最近、パーカーの演奏を聴く際は、コードトーンの直前に半音つながりで置かれる「経過音」を追いかけるようにしています。パーカーの演奏は高速テンポのものが多いので、ほとんど追いかけられるものではありませんが、レジェンドにしつこくつきまとっている自分を意識するとなにやら楽しい。実際の練習でも経過音の「シ」とコードトーンの「ド」の関係を「(ンタ)ダバウダ」とひたすら繰り返します。慣れるにつれてビバップニュアンスのひとつが最も素朴な形で身体の中に入ってくるような気がするから不思議です。

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