【続・仙台ジャズノート#13】尺八とジャズピアノ②モード奏法と民謡

 

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】尺八演奏者、平澤真悟さんは今後の目標の一つとして「民謡とジャズの融合」を考えています。「民謡をもっと多くの人に楽しんでもらおうという動きが和楽器奏者の間に生まれています。わたしたちはむしろ民謡とジャズを融合させてしまう方が面白いことになるのではないかと考えています。楽器間の垣根を越えやすくなるし、音楽としての自由度がもっと高まるはずです」

既に二度のライブで斎太郎節と花笠音頭を取り上げています。「お囃子も楽しいかもしれない。民謡、お囃子にはループがあります。ここでこうやって、次はこうなるという。その中でいろんな音の遊びをまじえる。そうなると、やはりアドリブが必要になります」

ジャズピアニストの立場で平澤さんとのコラボを目指す田辺正樹さんは「ジャズの歴史を振り返ると、もともと映画やミュージカルだった曲をジャズの演奏家が『この曲いい』と取り入れるようになった。それが今のスタンダードになっていたりする。私たちが今やろうとしているのは、それに近くて、民謡という、別ジャンルの曲をこちらに持ってきて、工夫を加えてさらに普及させていく。そんなイメージで新しい音楽づくりに取り組みたい」と話しています。

尺八とジャズピアノの融合を目指す平澤真悟さん(右)と田辺正樹さん。写真は平澤さんの提供です。

田辺さんによると、民謡は形式の面でジャズとの相性がとてもよさそうだという。「民謡はある程度、長い小節にわたってフレーズが続いていきます。目まぐるしい音楽ではない点が特徴的です。自由に考えられるし、アレンジしがいもあります。原曲をリスペクトし、形を残しながらいい音楽をつくり上げたい」

田辺さんが最後に事例として上げたのは、いわゆるジャズの「モード奏法」と民謡の融合です。曲には音の流れの全体構造を決める「調」や和音の進行があり、即興演奏は多くの場合、その約束事に縛られます。田辺さんが言う「モード奏法」は「調」の決め事から解放され、自由にメロディをつくる考え方であり、演奏手法です。「モードの曲として知られる『So What』(マイルス・デイビス)の進行が『花笠音頭』に当てはまるんじゃないか。そう考えて試してみるのはかなり面白い」

 尺八の楽譜は独特の記譜方法を採用していて縦書きです。西洋音楽のスタイルとはかなり異なります。平澤さんは「先人たちの音楽が楽譜になって残してある場合でも、実際はすごくあやふやです。楽譜として残っている音楽を楽譜で勉強するというのは、むしろやってはならないことなのではないか」と楽譜だけに頼ることの危険性を指摘しています。

「音源が残っていれば、できるだけ自分の耳で聴いて全身・全力で身に着けていく必要がある。楽譜は単に雰囲気、道順を示してあると思った方がいいです。その道をたどるうちにどんな景色が見えてくるかは、実際に吹いてみないと分かりません」

先人の音楽を研究する際に平澤さんが特に意識しているのは「息遣い」や「なまり」です。「和楽器の世界は理論も含めて成熟してきたために、尺八でも偉人の息遣いやなまり、癖がない演奏が増えているようです。自分としては偉人、名人の息遣いやなまりのようなニュアンスをしっかり音楽に取り入れていきたい。ジャズの世界でも同じような手法をとり、ジャズとの融合が果たせれば初めて自分なりの演奏を後世に残していけるのではないか。これから先、何十年とやっていきたいこと、です」

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

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