【続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!)
【佐藤和文】相変わらずの猛暑の中、所用のため仙台市青葉区の中心部を歩いていると、前方からジャズサックスの生音が聴こえてきました。暑さのためにげんなりしがちだった気持ちが引き締まりました。音が聴こえてくる方向に向かって思わず足早になるのが分かります。明らかに専門の音響装置を高度に調整しているサウンドでした。屋外、大音量で聴くプロのサウンドは、頭の中のもやもやを、瞬時に入れ替えてくるようで気持ちがいいものです。
サックスという、初めての楽器を手にして間もなく10年。いまだに自分の楽器の音について、言葉で説明するのは難しいです。リガチャーやマウスピースによって音が変わる、と詳しく語る人にときどき出会いますが、筆者の場合、リガチャーはずっと同じ、使ったことのあるマウスピースは2つだけ。ときどき冒険してみようかと思わないこともないのですが、試奏しても音の違いを聴き分ける力があるのかどうか自信がありません。
それでも下手なりに吹き続けているためでしょうか、ライブ会場などでアルトサックスの生音を聴くと、自分のサックスの音が重なって聞こえ、ニュアンスの違いを聴き分けられるような気がするから不思議です。たいていの場合、自分の音は質が悪く、要改良点だらけに聴こえるのはもともとの腕の関係です。仕方がありません。
先日聴いたサックスは、仙台中心に幅広く活動している熊谷駿さんでした。ベースの三ケ田伸也さんには拙著「仙台ジャズノート」(金風堂 2021年)でインタビューさせていただきました。タイミングの関係で熊谷さんにはまだインタビューできていないのですが、この日の熊谷さんの音色は直感的にいい音だなあ、と思いました。「自分もあのような音を出したい」とまでは恥ずかしくて言えないのですが、直感的にいい音だと思う感覚が余韻となって頭に残るのは心地よいものです。
この猛暑をしのげばジャズ音楽が似合う季節がやってきます。9月7日と8日は、ジャズファンの秋のお楽しみ「定禅寺ストリートジャズフェスティバル2024」。筆者も、この10年以上、毎年、ジャズフェスに出演する機会をいただいてきましたが、事情あって、今年は知人、友人らの演奏を応援することにしています。何と言っても生音をたっぷり浴びるにはまたとないチャンスです。
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