【続・仙台ジャズノート#27】還暦過ぎて師につく。「高齢社会」とジャズあれこれ

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】 というわけで、60の大台を越えて、少し気恥ずかしいことではあるけれど、ジャズを教えてくれる先生がどこかにいないだろうか、と考えていました。「先生」と呼ぶべき存在を意識したのは大学のゼミが最後でしたが、当時の大学を取り巻く種々の事情で、キャンパスとの付き合いは必要最低限になり、「先生」との関係も深まることはありませんでした。

だから、「先生」と呼べる人の指導を受けたのは高校が最後。還暦過ぎて、しかも趣味の分野で誰かの指導を受けるといった贅沢が果たして許されるものかどうか。そんな場を想像することさえ難しいものがありました。

いろいろな音楽教室について調べてはみました。「60歳からの音楽教室」「シニア世代 楽器をやろう」-といった、まるで自分のためかと思われるような宣伝チラシも目につきました。どれでもいいからさっさと手を挙げればいいようなものですが、料金はともかく、レッスン日が月に複数回に設定されているものが多く、定年後、ささやかながらフリーの取材・編集者として仕事を継続している身には、明らかに負担が大きすぎるように見えました。複数の生徒が同時に指導を受けるグループレッスンも自分の希望とは開きがあるように思いました。

何しろ、超初心者のくせに、「ジャズをやりたい」「スイングとはどういうものか」「アドリブ(即興演奏)をやれるようになりたい」「ことし62歳になります」「クラリネットは挫折しました」-などと言う生徒です。自分でも面倒くさい生徒だと思うのでした。希望に見合いそうなケースはなかなか見つからず、そう、こうしているうちに2013年10月、クラリネットから切り替えのアルトサックス超初心者のまま在籍していた社会人のビッグバンドで宮城県北地方の音楽祭に出演しました。

わたしのアルトサックス=手前=とクラリネット。同時に並ぶことはなくなった。サックスで手いっぱいで=2013年7月ごろの練習場で

とっても寒い日でした。自分が果たすべき役割をこなせませんでした。案の定というか、練習でできないことが本番でできるはずはないのです。そもそも考えが甘かった。このままでは周りに迷惑をかけるだけだと思い、即退団を決めました。その後、いろいろな縁でこのビッグバンドに出戻ったのが6年後の2019年。現在(2022年)に至ります。

加齢との折り合いをつけるため、自己流を避け、サックスの先生に就いてやり直すことに決めたものの、この時点で既に63歳。還暦を過ぎてからの時間は急に速く過ぎるようで、焦りもありました。

実はこのときプロのサックス奏者、名雪祥代さんに教えを乞うことができないかと考えていました。名雪さんには社会人ビッグバンドの有志で個別にレッスンしてもらったことがあります。それだけの縁を頼りに志願し、通常は1カ月に複数回のレッスンのところを、月1度のスポットレッスンを認めてもらいました。

名雪さんという演奏家がどのような背景を持つ方なのか、ジャズ音楽についてどんなアプローチを考えているか-などの詳しいことはほとんど知りませんでした。何度かライブを聴いて感じたのは、とにかく音程が明瞭で、ジャズ音楽の特徴を分かりやすい形で表現できる演奏家だという点でした。名雪さんがクラシックからジャズに移った演奏家だということを知ったのはずっと後のことです。

【ディスクメモ】WHIMS OF CHAMBERS/PAUL CHAMBERS SEXTET

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: PAULCHAMBERS-rotated.jpg

ジャズベースには何人もの巨人がいますが、PAUL CHAMBERS(ポール・チェインバース)もその一人です。この作品はベース音が低いこともあり、ベースに集中して聴くにはふさわしくないかもしれませんが、ジッと耳を傾けているうちに感じる心地よいスイング感(「グルーブ」といったりします)はさすがです。2曲目のタイトルナンバーWHIMS OF CHAMBERSはとてもよいブルース。WHIMSは「気まぐれ」「思いつき」の意味?ロナルド・バード(トランペット)、ジョン・コルトレーン(テナーサックス)、ケニー・バレル(ギター)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラム)の布陣です。いずれもやがてその道の巨人になる才能ばかり。筆者自身も、この1枚を入り口にジャズ音楽の世界をたどっていったのでした。1957年に発表されました。

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

これまでの連載はこちら

*TOHOKU360で東北のニュースをフォローしよう
X(twitter)instagramfacebook

>TOHOKU360とは?

TOHOKU360とは?

TOHOKU360は、東北のいまをみんなで伝える住民参加型ニュースサイトです。東北6県各地に住む住民たちが自分の住む地域からニュースを発掘し、全国へ、世界へと発信します。

CTR IMG