【続・仙台ジャズノート#39】色褪せないスタンダード曲「枯葉」から学ぶ

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】ジャズ特有のアドリブ演奏を、たどたどしくても、何とかできるようになるためには覚えなければならないことが山のようにあります。そんなときに格好の教材となったのがシャンソンの名曲で、ジャズのスタンダードとしても有名な「Autumn Leaves(枯葉)」でした。

「枯葉」は1946年に公開されたフランス映画「夜の門」の挿入歌。映画を見るチャンスはいまだにないのに、イブ・モンタンが黒づくめのスタイルで歌うシーンとともに、なぜか記憶に残っています。よく考えると、あれはモノクロ映像だったはずなので、黒づくめと思ったのはちょっと怪しい。それに本当に「枯葉」を歌っていたのだろうか、とも思います。何か別のビデオ映像と混同している可能性はあります。

「枯葉」は初心者の教材としてジャズ音楽の構造を実地に説明してくれるだけでなく、新しい解釈に出合うたびに戻っては、動作確認をする気持ちになります。何しろ人気のある曲なので、演奏実例も多いです。編曲面でもさまざまな工夫が凝らされています。不思議な名曲といえるでしょう。

「枯葉」はリスナーの入門曲としても最高でした。ビル・エバンストリオの傑作「ポートレイト・イン・ジャズ」の魅力にはまったものです。

「枯葉」が初心者にとって格好の教材となる理由はさまざまありますが、ジャズ特有のシンコペーションで始まり、スイングに乗ったときのメロディが心地よい。曲の構造が比較的やさしいので、2種類のスケールを覚えれば、何とかこなせるような気がします。たぶんに誤解を含んではいますが・・。この曲で使える2種類のスケールはアルトサックスで言えばGメジャーとEマイナーです。この二つのスケールは「平行調」と呼ばれる関係にあり、順番が違うだけで押さえる音はまったく同じ。(だったらなんで名称が違うのか)。

ジャズらしいニュアンスづくりに欠かせないといわれる、やや難しい「オルタード・スケール」を試せる個所まで出てきて、「Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ(ツー・ファイブ・ワン)」と呼ばれる考え方で成り立つコード(和音)の進行について知ることだってできます。まさに初心者向けとは言えないほどの高密度な構造ですが、とにかく曲想はなじみやすいし、アドリブするための曲としても素晴らしい。

「枯葉」の演奏を2つのバージョンで楽しむことができます。

「枯葉」で学べることは幾つもあるし、初心者にとっては決して簡単ではありませんが、受け取った楽譜を見て、その曲の全体構造を把握し(「analyze(アナライズ:分析する」といいます)、どんなアドリブ方針で行くかを瞬時に決めることができる-。そんな力が身に着けば、どんなにうれしいだろうか、ということは分かります。

写真はピアニスト、ビル・エバンストリオの名盤中の名盤「ポートレイト・イン・ジャズ」。A面(レコードです)の2、3曲目に「枯葉」が収録されています。全体的なニュアンスを保ちながら演奏ごとに違う「枯葉」をじっくり聴くことができます。1959年の作品。ジャズ聴き入門のごく初期に親しんだアルバムです。スコット・ラ・ファロのベースにポール・モチアンのドラム。この3人のインタープレイを若いみなさんにもぜひ知ってほしい。特にモダンジャズのベースとしては今でも抜け出せないほどの刷り込み効果がありました。これを入門編と言ったらもちろん大間違い。

【注】ディスクメモは休みます。

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

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