【続・仙台ジャズノート#34】シニアでも早道や近道はない 「高齢社会」とジャズあれこれ

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】多くの場合、シニア世代になると、心身ともに何らかの変調を伴うものです。それに耐えながら質量ともに気が遠くなるほどの課題にまともに向き合うにはどうしても過大な負担を伴います。長い時間をかけた社会人としての役割をいったん卒業した後、「第二の人生」とか「余生」とか言われる時間の過ごし方にアマチュアの音楽活動を絡める作業は、楽しいけれど、予想以上に難しいものでした。

音楽は若い人なら大学に行っても勉強したいと考えるテーマですから、自由になる時間があるからといって、生半可なことで何かが身につくはずはありません。漠然とジャズ音楽を身に着けたいといっても、年齢や動機からしてプロを目指すわけでも、プロになれるわけでもありません。何事も自由な分だけ、目標があいまいになる点に注意が必要です。

幸い、筆者の場合、ジャズ音楽最大の「謎」であり、魅力である「アドリブ」がどのような過程を経ることで可能になるのかを知りたい、できることならその真似事でもできるようになりたいという、目標が最初からありました。これはこれで実は大変大規模で本質的な「謎」であり、我慢がきかず、折に触れて手抜き願望が顔を出すのはしょっちゅうでした。それでも、理論や実技をきっちりこなす以外に近道がないことは、社会人としての仕事経験に照らしてみればよく分かります。

重要なのは、その道を誰かに整然と教えてもらうよりも、理解不十分なままでも試行錯誤を自分なりに繰り返しているうちに、ジャズ音楽を理解し、演奏技術的にも少しずつ前に進めるような気がする点です。音感や記憶力、感性によほど自信がある場合は別にして、繰り返し練習する以外に道はないようです。ある課題を繰り返し練習しているうちに、その課題に関連する理屈や実践のこつをつかめたような気になれば、もう忘れません。その日は1日ハッピーです。

きょうの課題曲は?ジャズ音楽の楽譜を普通に演奏するだけではジャズ特有のノリを伝えることはできない。

ジャズ音楽を身に着けようとする場合、習熟度や演奏者としての経験に応じてさまざまな課題に向き合います。他の分野と少し異なり、アドリブもテーマ(メロディ)の演奏も、比較的早い段階から「自分なり」であることを意識させられます。ジャズ音楽が個性を何よりも重視し「自由」な表現や技法を推奨しているように見える点を初心者が単純に受け止めるのはやや危険ですが、例えばテーマの演奏では、楽譜に書いてあるメロディを大事にすることを求められる一方、メロディを独自に崩して吹く「フェイク」が、いかにもジャズらしい課題として浮き彫りになります。

楽譜に書いてある通りにメロディをしっかり吹くのか、演奏者が「自分なり」に崩して演奏するのかは、一見、矛盾するようですが、ジャズ音楽の場合、矛盾する指示がほぼ同時に表れる例は珍しいことではありません。どちらを選択するかはケース・バイ・ケースで、演奏者自身にまかされます。

楽譜の表記自体、小学校で習ったように演奏するとは限りません。特に重要なのはジャズ特有のノリを加味して演奏する技法です。楽譜上の表記の通りではなく、ジャズ特有の長短やリズムを先生からの口伝えで覚え、体にしみこませることになります。しかも、ジャズ特有の「口伝の技法」は、些末な部分ではなく、ジャズ音楽のスタイルを決定づけるような重要な場面で出てきます。初心者のレベルから始まって、やがて口伝のノリがいかにもジャズらしいと感じられるようになればさぞ気持ちがよいことでしょう。

楽譜によっては細かい臨時記号を頻繁に駆使して、楽譜に沿って演奏すればジャズのノリに聴こえるように詳細に書いてある楽譜も使ったことがありますが、60代半ばでメロディ楽器に移ったため楽譜を読む練習の蓄積がもともと乏しい身では、随所に臨時記号のある楽譜は苦手です。負け惜しみついでに言ってしまえば、口伝のノリとは微妙に異なるものも多いようなので要注意です。ジャズ特有の口伝のこともあり、60代半ばで個人レッスンを受け始めたのは我ながらいい判断でした。

【ディスクメモ】Mercy, Mercy, Mercy! Live at “The Club”/The Cannonball Adderley Quintet

 サックス奏者キャノンボール・アダレイのリーダーアルバム。1966年の録音。”The Club”でのライブとなっていますが、スタジオに聴衆を招待してライブ演奏したとの説もあります。とにかく熱気がすごい。ライブ好きの人にはたまらないでしょう。ジョー・ザヴィヌルの名曲「Mercy, Mercy, Mercy!」が発表されたアルバムとして有名です。ゆったりとした演奏が徐々に盛り上がります。そういえば、最近はアップテンプが多く、こんなゆったりめの演奏を聴くことが少なくなりました。

メンバーは以下の通り。

  • キャノンボール・アダレイ:アルト・サックス
  • ナット・アダレイ : コルネット
  • ジョー・ザヴィヌル:ピアノ
  • ビクター・ガスキン:ベース
  • ロイ・マッカーディ:ドラム

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

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