【続・仙台ジャズノート#35】コロナ禍も演奏の場つないだ「昼ジャズ倶楽部」いったん終幕

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】コロナ禍によって演奏の機会をあらかた奪われるという、ジャズ演奏家にとっては非常に厳しい環境の中、仙台市で活動を続けてきた「昼ジャズ倶楽部」(主催・サックス奏者名雪祥代さん)が2022年9月21日のライブでいったん締めくくりました。「昼ジャズ倶楽部」は、名雪さんの地元である宮城県美里町で形を変えて再スタートするほか、10月9日には仙台市青葉区新坂町にある充国寺の本堂を会場とする「ジャズとお笑いの『寺フェス』」と連携、ジャズ演奏家と地域との交流を意識した取り組みにつなげていくそうです。

『寺フェス』に関する情報は以下のリンクからどうぞ。
https://forest-bird.net/hanakotobafes/terafes-2/

「昼ジャズ倶楽部」はコロナ禍の真っただ中でも、ジャズを演奏する場を確保し、ジャズを聴いてくれる人たちとのつながりを大事にしたい、という趣旨で2021年7月7日にスタートしました。以来、35回にわたり、インスタグラムとYouTubeを活用するユニークなオンラインライブを続けてきました。ゲストとして登場したのは日ごろ、名雪さんと共演してきた地元の演奏家が中心。顔なじみの演奏家の人となりや人間味を、名雪さん得意のトークで引き出してくれました。

和やかな雰囲気に包まれた「昼ジャズ倶楽部」最終回=仙台市青葉区新坂町

「身近なジャズの現場」をテーマに取材を続けている筆者にとっては、名雪さんに代理取材してもらっているようなもの。生で聴いたことのない演奏家の演奏を聴けることも含めて、とてもぜいたくで貴重な機会でした。名雪さんがYouTubeにまとめて編集・掲載している「昼ジャズ倶楽部」のコンテンツは「身近なジャズの現場」を支える主役たちのプロフィールリストのようなもの。ジャズファンの一人としては、動画コンテンツ特有の内容の濃さと、地元ミュージシャンの一覧性を生かした「次のステップ」「次の仕掛け」を期待したくなります。

「昼ジャズ倶楽部」は、ゲストとの交渉や選曲、必要なオンライン環境の準備・撮影まで名雪さん一人で受け持ちました。一人の演奏者がどこまで守備範囲を広げられるかを試しているような感じさえしました。

いったん締めくくりのライブは名雪さんのオフィスのある「游彩工房『花言葉』」=仙台市青葉区新坂町=で行われました。インスタグラムを使ってオンライン配信したほか、実際に聴き手を前にしたライブでもありました。ゲストは仙台フィルのチェロ奏者山本純さんとピアニストでボーカリストでもある岡本優子さん。岡本さんのオリジナル「Sweet Home」、名雪さんのオリジナル「Suite(組曲)」を中心に、ゆったりとしたジャズ時間を演出していました。チェロは楽器の形も含めて人間の肉声に近いといわれ、アルトサックスも女性の音域に近い楽器です。岡本さんの優しいボーカルとの組み合わせは、まるで血のつながった従妹会のような温かいミニコンサートになりました。

名雪さんは「コロナに追い詰められ、本当に厳しい中でのスタートでした。演奏する機会がどんどん失われる中で、何とか自力で場を生み出したいと考えました」と振り返りながら「幸い、多くのミュージシャンの協力があってここまでくることができました。どんな状況にあっても、人のつながりが大事なことをあらためて教えられたので、今後の演奏活動に役立てたい」と話しています。

【ディスクメモ】THE INTERPRETAIONS OF TAL FARLOW

ギタリスト、タル・ファーロウがレッド・ミッチェル(ベース)、スタン・レヴィ(ドラム)、クロード・ウィリアムソン(ピアノ)と組んだスタンダード集。INTERPRETAIONを直訳すると「解釈」でしょうか。「タル・ファーロウの解釈」とはやや硬いタイトルですが、内容は聴きやすいスタンダードばかり。1955年の録音。レッド・ミッチェルのベースラインに乗ってファーロウのギターがドライブするのは本当に心地よい。独学だったらしい。音の粒立ちがしっかりしている。ジャズギターのお手本のようにも聞こえる端正なプレイが印象的です。

このアルバムも含めてファーロウの活動は1954年から4年ほどだったらしい。筆者の世代は、1968年のニューポートジャズフェスティバルで復帰した後の活動が身近に感じられます。収録曲は以下の通り。(レコードです)

【Side A】
These Foolish Things
I Remember You
How Deep Is The Ocean
Fascinating Rhythm
Manhattan

【Side B】                               
Autumn Leaves(Tal Farlow Solo)
It’s You Or No One
Tenderly
There Will Never Be Another You
Just One Of The Those Things

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

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