【仙台ジャズノート】再考「キャバレーの時代」 佐藤博泰さん

佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】「スウィンギング・ハード・オーケストラ」で47年にわたりバンドマスターを務める佐藤博泰さん(71)のロングインタビュー、後半です。

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-キャバレーでの仕事を始めたきっかけは?

佐藤:スウィンギング・ハード・オーケストラに入って3年目ぐらいに仙台のキャバレー「ソシュウ」で3番アルトが空いているとのことでした。行ってみたらその場で元「高橋達也&東京ユニオンオーケストラ」の後藤美久夫(ごとう・みきお)さんのオーディションを受けることになりました。その日のショーで使う譜面を出されて「タラララー タリララー 」と夢中で吹いた。幸い、「まあ、何とかなるだろう」と採用になり、そこから2年もの間、ソシュウで演奏するようになりました。

バンマスが氏家さんというトロンボーンの人。その人からワカタさんというラッパの人にバンマスが変わって、解散するときのバンマスがシャープス&フラッツにいた佐藤俊次さんでした。ソシュウのバンドが解散することになり、仕事はそこで終わりのはずでした。でも、クラウンの「グルーヴィン・ハード」のバンマス、白石暎樹さんから電話がきて「今日から来てくれないか」と言われ、すぐクラウンに行きました。

-キャバレーでの演奏はどんな感じでしたか?曲目は?

佐藤:映画音楽やダンス音楽中心に歌謡曲もやりました。8時と10時にショータイムがあって、演歌のショーが多かった。クラウンでは梅宮辰夫のショーがあったのを覚えています。ヨーロッパから来たグループのダンスショーなどもあって大体、40分は吹きっぱなし。サックスは4本、前の方で吹く白石さん含めトロンボーンが2本、ラッパ(トランペット)が2本にリズム隊という編成でした。


仙台市内のキャバレー「ナイター」を借り切って開かれた25周年記念コンサート=佐藤博泰さん提供=

-ヤマハで習ってソシュウに飛び込み、クラウンでも鍛えられた。そういう環境が昔はあった?

佐藤:ああ、鍛えられたね。とにかくリードアルトが音色の素晴らしいことで知られる後藤さんだから、半音違っただけでもう大変。どうしても演奏についていけないときは吹くのをやめて(あまり目立たないように)そっと休んだ。すると休憩中、後藤さんにボイラー室の前に集められて特訓させられました。有名な歌手の場合、3時か4時ぐらいから必ずリハーサルをやったものですが、なかにはリハーサルなし、あいさつもなしというケースもあり、いきなり譜面を渡されて、半音ずつ上げて吹けと言われたりしました。当時はそういうことを軽々とこなせる人がそろっていました。

バンドの人数に対して給料が支払われる契約なのでメンバーが足りないからといって空席にしておくわけにはいかない。数をそろえるため雇った人があまり吹けなくともその席に置いておく。すると3カ月で何とか吹けるようになった。一つのステージを30分として4ステージ。第2と第4がショータイム。150曲を1週間に分けて吹くような感じで毎晩演奏するわけです。(キャバレーのない)今は3年たっても、ああは吹けるようにはならないだろうね。

-キャバレーの時代と現在を比較すると、仕事の場がなくなった、暮らしを支える収入の道が少なくなったとばかり考えていましたが、若いミュージシャンが客の前で演奏しながら腕を上げる場そのものが少なくなった?

佐藤:結局、ジャズをやる環境がどうだったのかということで、今の人たちはそういう環境に恵まれていない。自分たちのころも、そんなに整っていたわけではないけれども、とにかく飛び込んで見様見真似も含めて、その気になれば鍛える環境はありました。

第1回定禅寺ストリートジャズフェスティバルに出演したスウィンギング・ハード・オーケストラ=佐藤博泰さん提供=

-今でも練習するスタジオは比較的安価に借りられるし、音楽教室も企業、個人それぞれにいろいろありますが・・

佐藤:いや、自分から飛び込んで本番で腕を上げる場はやはり少ないでしょう。

-このまえのライブでは佐藤さんのアドリブは完全に即興でしたね。

佐藤:いやいや、とにかくアドリブは不得意なんです。コードを分解してアドリブしようと思うと指が動かない。もっとうまくなりたいけれど、駄目なんだ(笑い)。ジャズを習おうとする人たちは、テヌートとスタッカートの具合がなかなか分からないようです。口で説明しても伝わりません。最後はレコードをよく聞いて、と言うしかないが、どうしても吹けないといってやめていく人もいる。

-若い人がチャンスをつかむために何が足りないですか?プロとマチュアをつなぐ仕掛けが必要では?

佐藤:仙台の場合、演奏する場所も機会もまだまだ足りません。市民センターに演奏できるスペースをもっと確保してほしい。俺たちがやっていたころにはクラウン、ソシュウ、タイガー、ナイターなど、プロが演奏する場所が幾つもあって、プロの現場で人が足りなくなると、アマチュアがどんどん入ってくる環境が自然に出来上がっていました。

【連載】仙台ジャズノート
1.プロローグ
(1)身近なところで
(2)「なぜジャズ?」「なぜ今?」「なぜ仙台?」
(3)ジャズは難しい?

2.「現場を見る」
(1) 子どもたちがスイングする ブライト・キッズ
(2) 超難曲「SPAIN」に挑戦!仙台市立八木山小学校バンドサークル “夢色音楽隊”
(3)リジェンドフレーズに迫る 公開練習会から
(4)若い衆とビバップ 公開練習会より
(5)「古き良き時代」を追うビバップス
(6)「ジャズを身近に」
(7)小さなまちでベイシースタイル ニューポップス
(8)持続する志 あるドラマーの場合
(9)世界を旅するジャズ サックス奏者林宏樹さん
(10)クラシックからの転身 サックス奏者名雪祥代さんの場合
(11)「911」を経て仙台へ トランペット奏者沢野源裕さんに聞く①
(12)英語のリズムで トランペット奏者沢野源裕さんに聞く②
(13)コピーが大事。書き留めるな/トランペット奏者沢野源裕さんに聞く③

3.回想の中の「キャバレー」
(1)仕事場であり、修業の場でもあった
(2)南国ムードの「クラウン」小野寺純一さんの世界
(3)非礼を詫びるつもりが・・ なんちゃってバンドマン①
(4)プロはすごかった なんちゃってバンドマン②
(5)ギャラは月額4万円 なんちゃってバンドマン③
(6)しごかれたかな?なんちゃってバンドマン④

4.コロナとジャズ
(1)仙台ジャズギルドの夢・仙台出身の作編曲家秩父英里さんとコラボ
(2)ロックダウン乗り越え「未来のオト」へ/作編曲家でピアニスト秩父英里さんに聞く
(3)動画配信で活路を開く/ベース奏者三ケ田伸也さんの場合
(4)「WITH コロナ時代」のプラットフォーム
(5)一歩でも前へ/サックス奏者安田智彦さんの場合
(6)コミュティFMと連携 とっておきの音楽祭の挑戦

5.次世代への視点
(1)地域発のジャズを楽しむ
(2)プロとして60年:ビッグバンドリーダー白石暎樹さん(77)
(3)アマチュアのみなさんへ:ビッグバンドリーダー白石暎樹さん(77)
(4)合奏に魅せられほぼ半世紀:佐藤博泰さん(71)①
(5)再考「キャバレーの時代」:佐藤博泰さん(71)
(6)まとめに代えて

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TOHOKU360は、東北のいまを東北に住むみんなの手で伝える、参加型の"ニュースプロジェクト"です。経験豊富なメディア出身者で構成される「編集者」と、東北6県の各地に住む住民の「通信員」とが力を合わせ、まだ知られていない価値あるニュースを一人一人が自分の足元から発掘し、全国へ、世界へと発信します。

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