【続・仙台ジャズノート45】「仙台ジャズ」への思いを共有。歴史をたどるジャズコンサート

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

若手が編成した「仙台シティジャズクインテット」。今、最も演奏機会の多いミュージシャンたち。

佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】20年かけて取材・資料収集した著作「かしむのなしは 仙台ジャズの歴史」の出版をきっかけに企画された「第1回仙台ジャズヒストリーコンサート」(主催・東北シティジャズヒストリー)が2022年12月3日、仙台市青葉区の戦災復興記念館で開かれました。著者である白津守康さん自身が企画、ナビゲーターも努め、仙台のジャズの歴史や演奏者たちの面影を知るベテランの演奏者や未来を見詰めながらジャズを探求する学生たちが参加。ジャズ音楽を身近なところで楽しむ魅力をあらためて共有していました。(写真は主催者提供)

コンサートは「ジャズの黄金期・モダンジャズコンボ」「トークショー・仙台ジャズの歴史を語る」「現代ジャズのビッグバンドスタイル」「戦後の進駐軍キャンプ・キャバレーの再現」の4部構成でした。仙台の若手5人で編成したグループがルイ・アームストロングやアート・ブレイキーらジャズの巨人の曲を披露。東北大の3、4年生中心に編成されているビッグバンド「NEW FOREST JAZZ ORCHESTRA」と、結成以来54年になる、仙台では最も古いアマチュアビッグバンド「SWINGING HERD ORCHESTRA」がそれぞれの時代の空気をまとったビッグバンドジャズを演奏しました。

戦後の記憶やジャズへの情熱を共有したトークショー「仙台ジャズの歴史を語る」。左から二人目がナビゲーターの白津守康さん。

「NEW FOREST JAZZ ORCHESTRA」が取り上げた「THE SEA-SEVEN YEARS VOYAGE」は、同大卒のピアニスト兼作編曲家で、国内外で活躍している秩父英里さんの曲。演奏直前に秩父さん本人が応援に駆け付ける一幕もあり、世界を視野に入れている才能と、若いミュージシャンたちの仙台つながりを確認する場にもなっていました。「SWINGING HERD ORCHESTRA」にはジャズボーカリストNAOさんがゲストとして出演、ビッグバンドとボーカルが華やかな組み合わせとなっていたキャバレーの時代を再現していました。

 「トークショー・仙台ジャズの歴史を語る」には白津さんも参加し、東北では唯一のプロのビッグバンドを今なお率いる白石暎樹さん、キャバレー「タイガー」の「ブルーノートオーケストラ」でアレンジャー兼ピアニストとして活躍した中野正敏さん、19歳のときから「SWINGING HERD ORCHESTRA」

東北大の「NEW  FOREST JAZZ ORCHESTRA」。2022年8月に開かれた第53回ヤマノ・ビッグバンド・ジャズ・コンテストで5位に入賞したばかり。

一筋で代表を務める佐藤博泰さん、観光事業の分野から仙台・東北のジャズの可能性を見据える紺野純一さんが出演。進駐軍のキャンプで演奏した経験者はさすがにいませんでしたが、昭和のキャバレー時代にさまざまな現場で演奏した経験談は興味深いもので、NAOさんが「わたしはキャバレーがデビュー」と打ち明けると、共演したシンガーが思わず「あこがれます」と声を上げ、和やかな雰囲気を醸し出す場面もありました。

 今回のコンサートでは、さまざまな世代の演奏家やリスナーが一つの会場に集まり「仙台のジャズ」の歴史と魅力を共有しました。新型コロナの感染拡大に伴い、仙台のジャズ界隈も厳しい状況を強いられましたが、「せんだいミュージックゴーラウンド」など、地元ミュージシャンや音楽関係の施設の関係者らがネットワークを組み、音響や映像、ネット技術を自ら取得したり、多様なオンラインライブを成功させたりするなどの事例を数多く生み出しました。ベテラン、中堅・若手の演奏家たちがそれぞれの立場で逆境を乗り越える工夫を凝らす一方、「演奏家同士が音楽について深く話す機会はあまりない」「ベテランのみなさんの体験を知りたいけれども、日常の活動に追われてなかなか機会がない」などの声が上がっていました。「第1回仙台ジャズヒストリーコンサート」は、こうした状況に風穴を開け、仙台のジャズが向かう方向を、演奏者やリスナーがともに考え、試行錯誤する第一歩として重要な意味があるように見えます。

54周年を迎えた「SWINGING HERD ORCHESTRA」。昭和のキャバレー時代に各地でプロとして活躍したミュージシャンが今なお活動している。前列右端がピンクのドレスもあでやかなゲストボーカルのNAOさん。

白津さんの著書のタイトル「かしむのなしは」は言葉をさかさまにひねるミュージシャン俗語をつかったもので、「昔の話」の意味です。 白津さんは20年の歳月をかけて取材し、資料収集しました。その結果、仙台のバンドマン392人の名前が登場する力作となっています。ジャーナリスト、椎浪 真平さんが共同執筆者となって完成させました。価格は3000円。

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

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