【続・仙台ジャズノート#47】「アメリカ」を感じたいならジャズ。そしてカントリー

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】身近な地域のジャズに絞ってこの連載の取材を始めたのは新型コロナウイルスによる感染拡大が始まる前の2019年7月のことでした。以来、何となく落ち着かない気分が続いています。というのも、単に音楽について語るなら問題はないのですが、自分が暮らしている地域で音楽に取り組んでいるのはジャズ演奏家だけではないからです。身近な地域の音楽活動や音楽文化について今、語るなら、コロナ禍に直面しながらさまざまな形で続けられているジャズ以外の分野の、特にアマチュアの活動についても、取材したいところです。

そんなモヤモヤを持て余し気味でいたところ、仙台中心に専門に取り組んでいる「四丁目バンド」のライブを聴く機会がありました。「カントリー」は1920年代後期以降、ジャズ音楽とともにアメリカに根差し、後世に大きな影響をもたらしたルーツミュージックです。日本でも愛好者が増えましたが、近年、グループ数が激減。バンド形式のカントリーを聴く機会はほとんどなくなりました。「四丁目バンド」のようなケース自体、貴重です。

熟練の腕を披露するカントリー専門の「四丁目バンド」=仙台市青葉区一番町4丁目の「Want You」で。

「四丁目バンド」は50代から70代の、ギター、バンジョー、ボーカル&ギターにベースとドラムの5人編成。リーダーでボーカルとギターを担当している「トッシー鈴木」さんとギターの「ビリー鈴木さん」が「4丁目」のつく住所に住んでおり、主たるライブ会場となっている「Want You」の所在地も「4丁目」。そんなトリプルぶりをもじってバンド名にしたそうです。大らかで明るい遊び心は「四丁目バンド」の音楽性ともどこかでつながっているのかもしれません。

2022年12月15日夜、仙台市青葉区一番町4丁目にある音楽酒場「Want You(ウォンチュー)」。「四丁目バンド」は、ジョン・トラボルタ主演の映画「Urban Cowboy」の主題歌Lookin’For Loveを皮切りにWild Side Of Life、Back In The Saddle Again、カントリーロード(Take Me Home, Country Roads)などを2ステージに渡って披露しました。なかでも中高年世代には懐かしい「鉄腕アトム」の主題歌をカントリー風にアレンジした演奏は大いに盛り上がっていました。サウンド的にはスピーディー小室さんのバンジョーの響きがカントリーならではの雰囲気を醸し出していました。グループによってスタイルに違いはありますが、カントリーの場合、ジャズのアドリブ(即興演奏)重視のスタイルとは違い、ボーカル中心に歌が強調されます。トッシー鈴木さんのユーモアをまじえた曲紹介もあって、アットホームな雰囲気のうちに、歌詞の内容が演奏者やリスナーの人生にオーバーラップするようなステージでした。

カントリーも、その歴史をたどれば、米国発祥の音楽として、ジャズに劣らない深さと広がりを有します。トッシー鈴木さんは「アメリカにおけるカントリー音楽は、日本で演歌・歌謡曲が広く親しまれているのと似ています。若いころ、わたしはアメリカという国や文化が大好きで、カントリーにはまりました。一時、ジャズを好んだ時期もありましたが、結局はカントリーに戻ってしまいました」と笑いながら話しています。

ラグタイムピアノの魔法使い The Wizard Of The Ragtime Piano

【ディスクメモ】「ラグタイム」はピアノ奏法の一種で、シンコペーションたっぷりにリズムをきかせるのが特徴です。この分野で「ラグタイムの王様」といわれたのがスコット・ジョプリン。ユービー・ブレイクEubie Blakeはジョプリンよりも20歳ほど若く、ラグタイム、ジャズ、ポップスと幅広く活躍しました。「ラグタイムピアノの魔法使い」は1958年1月の吹き込み。長年の相棒ノーブル・シッシーNoble Sissleと運営したオーケストラの作品です。収録曲はJubilee Tonight、Eubie’s Boogie Rag、Mississippi Rag、Maple Leaf Ragなど12曲。ラグタイムという奏法がどんな雰囲気なのかよく分かります。全体としてテンポよく明るい曲が多いけれども、昼真っ盛りを過ぎて夕暮れ迫る直前ぐらいの、ちょっと陰影あるニュアンスも魅力的です。

ロバート・レッドフォードとポール・ニューマンが共演した米国映画「スティング」(1973年、ジョージ・ロイ・ヒル監督)で取り上げられたのがラグタイムです。スコット・ジョプリンの「エンタテイナー」が全編を明るく爽やかに盛り上げています。ラグタイムの奏法だけでなく、あんな時代でしたという感じで、時間と雰囲気が分かる。おすすめ。

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

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