【続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!)
【佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】初歩的な知識や技術の習得から始まる初心者にとって、熟練のミュージシャンが繰り広げる演奏を聴いても何が行われているか分からないはずです。たとえ分からなくても、いい音楽から伝わってくる波動を感じ、心身をゆだねることはできますが、演奏する側、とりわけアドリブ演奏する側に立つことを志す以上、次々と現れる壁の前で、あ然とすることしばしばです。
筆者の場合、85歳でコンサート活動の停止を宣言した加山雄三さんや多くのグループサウンズ、ビートルズなどの影響を受け、20代初めでロックやブルースのバンドに参加しました。Deep Purple、Grand Funk Railroad、Creedence Clearwater Revival、Led Zeppelin、Uriah Heepなどの音楽を楽しんでいました。以来、アマチュアの音楽活動が続いているのだから我ながらあきれるばかりです。
ドラム担当だったのでメロディやハーモニーにはほとんど関知しませんでした。リズム以外で、どうしても必要な分は、もっぱら耳コピーでしのいできたので、60代半ばでアルトサックスを手にしたときには、押さえるキーの多さと複雑さに驚いたものです。
楽器によって調が異なり、たとえばアルトサックスではピアノの楽譜をそのままでは使えません。コード(和音)や音程も、必要に応じて読み替える作業が伴います。以前、一緒のビッグバンドでアルトサックスを吹いていた人が言うには逆に「ピアノの譜面でないとサックスを吹けない」とのことでした。学生時代に訓練された結果、読み替えができるようになったというのだから、感心する以外にありません。
ジャズ音楽をもっぱら聴く側の立場で接していれば、ひたすら楽しいのに、演奏しようと思うとどうしてこんなに厄介なのか。しかも、厄介な事柄は次から次と出現します。勘のいい人ならこうした厄介な問題を直感でもこなしてしまうようですが、筆者の場合、理屈を理解しないと前に進めない傾向があるようです。理屈っぽい性格が災いしたのでしょうか、「考えるよりもまず突っ込め」「慣れるんだ」と心の声が聞こえることは滅多にありません。そのときどきで「なぜそうなのか」と理屈が気になります。
理屈は確かに大事だけれど、仮に教えられてもすべてを理解できるわけではないし、理屈が過ぎると、どうしても頭でっかちのジャズ志願者ができてしまいます。楽器の操作も怪しいのに知識だけがどんどん膨らんでいく悪循環。これを回避するには、関連する演奏技術をその都度、繰り返し練習する必要があります。いいジャズをメロディ楽器担当者の耳で数多く聴く時間も必要です。
そのためにライブの場に可能な限り出かけ、若いころから集めてきたアナログレコードを少しずつ聴き直すことから始めました。ジャズの達人たちにインタビューすると、「ビバップの基礎をしっかり身に着け、その上に、新しいことを積み上げていく」という考え方が強いのをあらためて感じます。「ビバップ」は「スイング」の後を受けて1940年代に米国で成立したジャズの形式。「モダンジャズ」の始まりとされます。古いレコードを片っ端から聴き直すことにも意味がないわけではないでしょう。
月1回程度、個人レッスンを受けながら演奏上の課題やポイントについて予習復習できたのは大きかった。特に、理屈先行の頭でっかちを、ジャズ・アーティキュレーション(音の長短や強弱、アクセントなどをジャズ表現の形に作り上げること)の観点で何度も何度も修正してもらえました。道、未だ遠し、だけれど、貴重な経験でした。
【ディスクメモ】BEST COAST JAZZ WITH ALL STARS
1954年8月、ロサンゼルスでの録音。いわゆるウェスト・コーストジャズの雰囲気を味わうことができます。ウェスト・コーストジャズ1950年代、米国カリフォルニア州ロサンゼルス中心とする西海岸地域一帯で演奏されたジャズの総称です。収録されているのはA面が「CORONADO」、B面が「YOU GO TO MY HEAD」。トランペット奏者クリフォード・ブラウンのリーダーアルバムと受け止めていいと思いますが、実際に イッタイ聴いた感じでは、まさにオールスターによるジャムセッション的なアルバムです。演奏者名を一覧することで全体の雰囲気をつかめるでしょう。
クリフォード・ブラウン(トランペット)
ハーブ・ゲラー(アルトアックス)
ジョー・メイニ(アルトサックス)
ウォルター・ベントン(テナー・サックス)
ケニー・ドリュー(ピアノ)
カーティス・カウンス(ベース)
マックス・ローチ(ドラムス)
マックス・ローチのドラミングが何と言っても魅力的。ウェスト特有のリズムをたっぷり体に入れることのなんと心地よいことか。
【この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。
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