【続・仙台ジャズノート#87】難しいジャズのアドリブ。記憶力補強に「マイメモ」が思わぬ効果

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

【佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】何事も加齢のせいにされるのは抵抗があるものですが、何かを覚える一方で何かを忘れるのは致し方ないところです。ジャズ音楽に関する理屈や実践について身に着けようとする場合も同様です。今回の報告は「覚える」「忘れる」と併せて、「思い出す」過程を意識的に取り入れるようにすると、記憶として定着する効果が見込めるのかもしれないという、本当かどうかあまり自信のないお話です。

ジャズに関して書き残している手書きのノートがあります。パラパラとめくっていたら「F#ハーモニックマイナー」の記述のそばに「F・F#連打」と書いてあるのを見つけました。どうやらビリー・リード作曲の「I’LL CLOSE MY EYES」の構造をあれこれ確認した際のメモのようです。それまですっかり忘れていたのに、「F・F#連打」の記述をきっかけに記憶に残るようになりました。以来、「思い出し効果」「再発見効果」と勝手に名付けています。

「F#」から始まるハーモニックマイナースケール(3つあるマイナースケールの一つ)音列を一度では覚えきれないと感じたらしく、これが出てきたら、アドリブではルート(根音)の「F#」と7th(セブンス)の「F」をまず使おうと決めたらしいのです。#系のスケールでは「F」「G」「C」に#がつくことは頭に(指にも)入っているのですが、F#のハーモニックマイナースケールではもう一つ、「E」に「#」がついて「E#」=「F」の音も使えるようになります。

確かに「F#ハーモニックマイナースケール」を使うべきところで、まず「F」と「F#」を使えることが頭に浮かべば、臨時記号のつかない、他の音と組み合わせるなどしながらアドリブフレーズを作ることが可能です。大いに素人っぽいけれども、手掛かりさえつかめず、どんな音を使えばいいか判断に迷い、立ち往生したり、飛ばしたりするよりははるかにましでしょう。

楽譜も大事だけれど自分で作成するメモ書きも、ときには役に立つ。いつしかメモノートがたまっていく。シニアゆえの特殊事情なのだろうか・・。

「これはいい」と思っていろいろ試しているうちに、この「F・F#連打」方式は「F#ハーモニックマイナースケール」だけに通用するわけではなく、すべてのハーモニックスケールに有効であることも分ってきました。つまりは、ハーモニックマイナースケールを使う場面が出てきたら「ルートの半音下とルートは使える」を「マイルール」とすればいいのではないか。

「思い出し効果」「再発見効果」の例をもうひとつ。メモノートの中で「Aハーモニックマイナースケール」の記述のそばに「『G』に孤軍奮闘の#がひとつつくだけ」と書いてあるのを見つけました。個人レッスンの最中に先生が説明の中で最初に使った言葉「Gにオンリー#」を書き留めておいたのを、しばらくたってから見つけ、記憶に残ったケースです。今では「Aハーモニックマイナースケール」を使える場所を見つけると、少し安心するほどの癒しのスケールになっています。

いったん忘れたものをしばらくたって思い出すプロセスが記憶との関係でどんな理屈が成り立つのか、専門的なことは分からないのですが、自分で片っ端から作ったメモを後でながめる作業をレッスンの一つとして組み込むのも、案外有効かもしれません。メモをながめるだけなら楽器は必要ないので、集合住宅につきものの、近隣騒音の心配もありません。マイメモさまさま、です。

【編注】このコラムはジャズが好きだけど「アドリブが難しそうだ」とか、アドリブに挑戦しているけれど「なかなかうまくいかない、難しい」という人向けに書いています。練達の技でアドリブを繰り出せるみなさんには初歩的すぎて何のことか分からないと思われます。読み飛ばしてください。

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

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