【続・仙台ジャズノート#95】仙台ヒストリージャズコンサート。演奏とトークで歴史をたどる

佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】仙台中心に活動しているジャズ演奏家たちが企画した「仙台ジャズヒストリーコンサート」が2023年12月8日、仙台市青葉区の戦災復興記念館で開かれました。20代から30代のプロの演奏家たちが時代を代表する曲を実際に演奏しながら聴衆と共にジャズの歴史120年を振り返る趣向。仙台のジャズの歴史をたどった著作「かしむのなしは」のある白津守康さんがコーディネーターとして進行役を務め、ジャズの歴史について解説しました。聴衆の多くは長年ジャズ音楽に親しんできた中高年世代で、ジャズスタイルの変遷に向き合う若手の演奏に声援を送っていました。

この日、演奏したのは「仙台シティジャズクインテット」。廣海大地さん(サックス)、今村陽太郎さん(ドラム)、三ケ田伸也さん(ベース)、菊田邦裕さん(トランペット、フリューゲルホルン)、田辺正樹さん(ピアノ)の5人。いずれも幅広い視野とネットワーク力でコロナ禍を乗り越えたプロの演奏家です。「ニュー・オーリンズ」「ビ・バップ」「モード」など、時代ともに変化してきたジャズスタイルを実際の演奏でなぞりました。

聴衆の多くは50、60代以上の、古くからジャズに親しんできた世代。ジャズスタイルの移り変わりとともにジャズ音楽に親しんできた人が多かったようです。

ヒストリージャズコンサートで快調な演奏を披露した仙台シティジャズクインテット

ニュー・オーリンズから始まったジャズ音楽は地域や時代、ジャンルの違いを超えて広がったことで知られています。その割には音楽としての歴史と実際の演奏をセットにし、解説する試みは案外少ないものです。この日のコンサートでは演奏家自身がそれぞれの楽器を使いながら説明したこともあり、ユニークで臨場感に富む雰囲気になっていました。

「仙台シティジャズクインテット」が演奏した曲のうち「セカンドライン」は、ニュー・オーリンズ特有の「葬儀列」に由来します。ニュー・オーリンズの葬儀・葬列は、親族中心に静かにしめやかに進む「ファーストライン」と、ブラスバンドを先頭に続く「セカンドライン」からなり、帰途はにぎやかなお祭りのような雰囲気で故人を送ったそうです。仙台シティジャズクインテットのメンバーたちは、主にメロディーを受け持つ「フロント」が2人、「リズム」が3人の小規模な編成でしたが、天に上った故人の冥福を祈る葬列の雰囲気を表現していました。

仙台とジャズのかかわりについて幅広い視点で解説したコーディネーターの白津守康さん

マイルス・デイビスが1959年に発表したアルバム「カインド・オブ・ブルー」で提唱したとされる「モード・ジャズ」の理論と実際の演奏「So What」をセットで聴けたのが個人的には収穫でした。白津さんとのやりとりのなかで「モードはハーモニーではなく音階」「調性(長調や短調による終止)感がない」「その分、即興演奏の自由度や解釈が広がった」とコメントした三ケ田さんらメンバーの解説や経験談をもっと聴きたいと感じました。

仙台ジャズヒストリーコンサートは今回が2回目。昼の部、夜の部の2部構成で開かれました。夜の部では「仙台シティジャズクインテット」のほか、仙台出身のピアニスト片倉真由子さんがゲストで登場。ピアノソロを披露しました。東北大のビッグバンド「NFJO JAZZ SPECTORS」が出演したこともあり、昼の部とは対照的に若い世代が多くみられたのが印象的でした。ジャズ音楽の愛好者は年配が多く、「ジャズは年寄りの音楽」と言われることも多いのですが、要は、誰が、どんな演奏をしているかによって左右されるのかもしれません。

演奏家自身のジャズ解説が好評でした。楽器の特色について説明する菊田邦裕さん

白津守康さんの話 仙台にはジャズの街として多くの音楽家に愛された歴史がある。ニュー・オーリンズに始まるジャズの歴史をしっかり受け止め、音楽の街としてのまちづくりに取り組んでいきたい。今回紹介したジャズの歴史に加えて、2000年以降のジャズは「仙台シティジャズクインテット」のメンバーの世代が作り出すものだ。若いみなさんにジャズ音楽を愛してもらうため今後、若い世代向けの「ジャズキャンプ」のような取り組みを実現したい。

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