【文・写真/相沢由介通信員=宮城県登米市】
昔むかし、遥か銀河の彼方で・・・
宮城県登米市はゆるやかな衰退期を迎えていた。特に少子・高齢化に伴うコミュニティの担い手不足はこれからの地域存続に関わる重大な問題だった。この状況を打開する新しい取り組みが求められる中、フォースの導きによって地域に調和をもたらさんとするジェダイの道場があった。
考えるな感じろ、フォースはそこにある
「最近フォースでものを動かせるようになったんです」
登米でジェダイの修行をする道場“セイバーファイトスポーツクラブ”の代表佐藤達也さんは、スマートフォンで撮影した動画を筆者に見せた。ガラス製のボウルふたつの口どうしを貼り合わて密封した中に糸で吊るされた紙の風車、佐藤さんがボウルの外から手をかざし仰ぐような仕草をすると、ボウルの中の風車がゆっくりと動き出した。
映画「スターウォーズ」が大好きで、映画の背景にある東洋哲学や武術にのめり込んだ佐藤さん。様々な知見を得てフォースの存在を感じるようになった。
「中国では硬気功と言って、空手なんかでもあるんですけど、気合で相手を飛ばしたり、目線で相手がこちらの動きに引き込まれてしまうとか、フォースはそういうものに通じています」
信じるものはフォースに導かれる。毎日「元気に伸びろよ」と佐藤さんが気を送り続けたコスモスは2メートル以上に伸びた。
スターウォーズから生き方を学んだ
佐藤さんは若かったころの自分を嫌な奴だったと振り返る。お店のサービスが悪いと、きつい物言いで店員にクレームを言った。
「相手の気持ちになって考えるということがなくて、でも禅の教えを色々学んだことによって、たとえ本当のことを言っているのだとしても、相手の気持ちを考えずにそれを言うことは正しくないと気づきました」
スターウォーズを起点に、佐藤さんは生き方を学んだ。「お父さんとお母さんが“私”というものを構成する最小単位で、二人がいるから今の私ある。その他にも、例えば自分の体をつくる食べ物もそれを作ってくれる人がいて、豚肉だったらお肉になる豚がいて。もっと大きく言うと、空気とか太陽も生きることに必要なものですよね。自分の周りにある森羅万象全てが自分に必要なもの。私が私であるために必要なものが全て私である。それに気づくと思いやりが持てるようになりますよね」
フォースの導きで地域に調和を
セイバーファイトスポーツクラブは毎月一回のペースで開催。ヨガや古武術、体幹トレーニングを取り入れたウォーミングアップから始まり、殺陣の練習、スターウォーズの映画さながらに戦うチャンバラ“セイバーファイト”等で汗を流しながら、楽しくフォースを学ぶ。また、真のジェダイとして、地域貢献のボランティアやイベント参加も行う。
「登米市の人たちを元気づける活動をしたいなと思って、特に地域に昔からあって活かされていないもの、郷土芸能や美味しいお米だったり、そうしたものをもっと活かすことでまちおこしできると思っています」
スターウォーズを媒介に、地域にあるものの魅力を地元の子どもたちへ伝えたいと佐藤さん。「例えばお神楽のすごさをもっと地元の子供達に知ってもらいたい。この地域のお神楽は何百年以上も前から地元に根づいている文化で、それほど昔からやっているものってそんなにないんです」
神楽の舞にライトセイバーを取り入れる試みも始めた。東京オリンピックが開催される2020年には、セイバーファイト世界大会の開催を目指す。地域の伝統に新しい風を吹き込むことに対して、決して良い反応ばかりではないという。でも、たしかに風車は動いた。信じればフォースは使えるのだ。地域に調和をもたらす風となれ、登米のジェダイたちよ!そして、フォースと共にあらんことを。