「西遊記」ではなく「最優記」仙台の演劇の舞台裏に迫った

【若栁誉美通信員=宮城県仙台市】仙台市宮城野区で9月14日から、仙台の劇団による演劇「最優記(さいゆうき)」が上演される。制作補佐として舞台づくりに関わった筆者が、上演間近に迫った稽古場のようすをレポートする。

結成14年目の劇団が作り上げる舞台

「最優記」を上演するのは、来年で結成15年を迎える劇団「A Ladybird Theater Company」。昨年は、劇団の代表であり脚本演出も務める箱崎貴司さんが、宮城県の芸術選奨新人賞を受賞。第13回公演『露と消えても〜幕末刃風伝〜』での演出や作劇が評価された。主な稽古場は、仙台市若林区卸町のせんだい演劇工房10-Box。「10」部屋の、稽古場や作業場から構成される演劇空間で、上空から見ると建物配置が「10」に見える。その一室で稽古が行われていた。

「そこ、左足から踏み出さないで、右足からすっと行って」。稽古場にお邪魔した時には、小返し、と呼ばれる、各シーンを細かく止めて演出をつけている場だった。冒頭の言葉は演出の箱崎さんが、舞台上から退場する役者に”振り返った時の足運び”を説明する内容だ。動きや所作を伝える時、実際に箱崎さんが一度動いてみせる。相手に何かを伝えたい時、やってみせるのが一番正確に情報が伝わる方法だ。それを見て、役者は何度かその場で繰り返して身につける。そうして、少しずつシーンができあがっていく。

目を奪われたのは、殺陣(たて)。いわゆる時代劇のチャンバラを想像していたが、今回は脚本のタイトルからも想像できるように、中国の「西遊記」をモチーフにした作品。棒術の殺陣だ。至近距離で初めて殺陣を見る。自分が棒を扱う筋力だけでなく、相手の衝撃を受け止める筋力もいる、ということに気づく。殺陣の手が決まっているにしても、集中していなければ相手も自分も怪我をする。テレビや映画で観ている時にはわからなかったことを、肌で感じた。

出演者は総勢26名、取材に伺った日は20人以上が稽古場に集まっていた。5月末に台本読み、という、初めてキャスト全員が集まって脚本を読むところから、約4ヶ月かけて舞台を作りあげる。

「1000人よりも、1001人がいい」

今回の作品は、中国古典の「西遊記」の登場人物をモチーフに、箱崎さんが書き下ろしたオリジナルの脚本だ。三蔵法師一行は、天竺へ向かう途中、小さな孤児院へ立ち寄る。時は、人間とバケモノが憎しみ合う時代。身寄りのない子どもたちの面倒を見る院長。そこに関わる釈迦如来や牛魔王、唐の軍人。人間とバケモノは、わかりあうことができるのか・・・。

稽古の合間に、出演者に話を伺った。木曽寛子さんは、旗揚げから劇団に関わっている。結成は2004年なので、今年で14年目。「あっという間でしたね・・・」と笑う。「お芝居は敷居が高いと思われがちですが、笑ったり泣いたりできるお芝居もあります。食わず嫌いせずに来ていただけたらな、と思います」(木曽さん)

「たとえば一人でも、僕たちのお芝居を見て元気になってもらえれば。1000人と1001人では違いなんてほんの少しですが、それでも、1001人が元気な方がいいな、と思ってお芝居をしています」(箱崎さん)

公演は9月14日から16日まで、宮城野区文化センターで全4公演(開演日時は14日18時30分、15日13時・18時30分、16日13時)催される。チケットは劇団ホームページの予約フォームから予約可能。

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