「コロナで解雇」「労災保険がない」…仙台に暮らすベトナム人の相談に乗るド・バン・トゥアンさん

【鈴村加菜】ベトナム出身で、仙台市太白区で暮らす来日8年目のド・バン・トゥアンさんのもとには、ベトナムをはじめとする在日外国人から「携帯の契約の仕方がわからない」「コロナで突然仕事がなくなった」「急に解雇されてすぐにアパートを出ろと言われてしまった」「仕事中、指を切られて、病院に連れてもらったけど、翌日に仕事に行きなさい、それから労災保険がないと言われてどうしょう」など、たくさんの相談が毎日絶え間なく届く。これらに応えるため、一人で休みなく支援を続けるトゥアンさんにお話を伺った。

トゥアンさんは2012年、奥様の勉強の関係で来日し、日本での生活を始めた。大阪府豊中市にいる間に自身で初めてつくったのが「TVA」(在豊中ベトナム人協会)であったことから、仙台に越して立ち上げた「SenTVA」(在仙台ベトナム人協会)にも「豊中」の「T」が入っている。

ド・バン・トゥアンさん

トゥアンさんが行う活動には「SenTVA」の団体としてのものと個人のものに分かれる。「SenTVA」としては、日本語教室(4クラス、毎週土日)、ベトナム語教室(1クラス)、サッカーやバレーボールなどのスポーツ交流、日本とベトナムそれぞれの文化体験を行っている。トゥアンさん個人としての活動は、仕事紹介や住居・食料の提供、そして日本に暮らすベトナム人の心を支えるための「助け合い―支え合いのプロジェクト」だ。

「SenTVA」の活動として第一に挙げられる日本語教室を始めた理由について、トゥアンさんは「私自身がベトナム人たちが日本に来てまず最初にぶつかり、それによって生活や心に様々な問題が起こる原因は『言葉の壁』だと感じたからです。例えば、日本に来る実習生たちは日本語学校で半年〜8カ月くらい勉強してから来日します。外国語を学んだ人なら分かると思いますが、それだけでは十分にコミュニケーションを取れませんよね。言葉さえきちんと通じていれば起きなかっただろうと思われる、誤解や行き違いはとても多いです。『言いたいこと』をきちんと言えるようにするための言葉の勉強はとても大切です。言葉がわからなければ孤独になります。そして、心の余裕がなくなり、悪いことを考えてしまうようになります」 

トゥアンさんが集めた日本語学習用テキスト

日本語学習は心を健康に保つためにも必要だ。個人として行っているという「助け合い―支え合いのプロジェクト」は、日本人と日本に暮らす外国人を個人レベルで繋ぐもので、簡単に言うと専属サポーターのようなイメージだと言う。「目的は、①日本語学習②困ったときに相談できる関係づくり③お互いの文化理解。このプロジェクトには、現在、仙台だけでなく北海道から沖縄、海外に住む日本人も参加してもらっています」と話す。

また、交流を通して、相手の考え方や習慣、文化の違いに気づくことも目的の1つだという。例えば日本語教室では、先生(日本人)と生徒(外国人)との間で、お互いに「なるほど」となることがよく起きているそうだ。

仙台多文化共生センターで行われている日本語教室の様子(トゥアンさん提供)

インタビュー中のたった数十分の間にも、トゥアンさんの携帯は問い合わせや相談の連絡で通知が何度も鳴った。トゥアンさんは1つずつ確認し、「私にできることなら何でもしてあげたい。助けたいですよ」と話す。

現在はフリーランスで通訳などの仕事をしながら支援活動をしているそうで、「お休みはありますか?」と聞くと、「正直に言うとありません」と苦笑いした。「朝も夜も関係なく私の携帯には連絡が来ます。しかし、言い換えれば、これ(携帯)さえあれば、どこにいても『私と繋がっている』ということを困っている人たちに伝えることができるのです」

トゥアンさんから話を聞いて驚いたのは、大阪府の豊中市の「TVA」では日本語教室やサッカーチームのボール代、仙台の「SenTVA」ではバレーボールチーム、サッカーチームのボール代を始め、食料や部屋を提供までほぼすべてを自らのお金で賄っていることだ。「私達の活動を知って、寄付をくださる方もたまにいらっしゃいます。それはありがたくいただいています。ただ、私は自分で寄付を集めるために使う時間があったら目の前の困っている人を助けることに使いたいと思っているんです」

「自分の時間やお金を犠牲にしてまでなぜそこまでできるのですか」と聞くと、トゥアンさんは真剣な表情で語ってくれた。「今、日本には、『ベトナム人』というとネガティブなイメージを持つ方が多いように思います。私には、そういったイメージを良くしたい、日本に暮らすベトナム人が精神的にも生活的にも『快適な状況』になるようにしたいという夢があります。そのためには、たとえ一人きりでも休みがなくてもやり続けなければならないと思うんです。せっかく夢を持って日本に来たので、日本を好きなまま仕事や勉強を頑張ってほしい。そして、困ったときには日本の方々から手伝ってもらえるようなベトナム人を増やしたい。そういう思いで頑張っています」

*「SenTVA」の日本人ボランティアに興味のある方はまずはこちら(https://www.sentva.com/)をご覧ください。

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