【東北点描】雪の中の炭焼き小屋 宮城・色麻町

【文・写真/相沢由介通信員=宮城県色麻町】2月下旬、船形山の尾根筋に囲まれた宮城県加美郡色麻町の小栗山地区は、5キロほど離れた市街地と比べて雪が深い。冬枯れの山々は沈黙し、重く固まった雪があらゆる色彩を冬という季節に閉じ込めていた。音も色も失い、時まで止まってしまったかのような景色の中でただ一つ、小さな小屋から立ち上る白い煙だけが絶えず動いて変化し、春へと歩み寄る時の流れを感じさせた。

角材や太い木の枝を組み合わせた部材にトタンやベニヤを張っただけの簡易な作りの小屋は、中の窯を雨風から守るものだ。小屋は炭焼き小屋だった。「二十歳前からしでっがら、今80だがら60年以上になんでねえが。後継者いねえがら、俺の代で終わりだな」そう言って、橋本一意(かつい)さんは両手にしていた軍手を取って、窯の上で手を暖め始めた。同じように手を置いてみると、まるで生き物に触れているようなじんわりとした暖かみが伝わってきた。

「火の様子は、煙の温度で見んの」火を入れて4,5日間、近くの家から通って窯の火を絶やさないようにする。ひとつの火が起こって消えるまで、その一生の世話をするのが炭焼きなのだ。窯は深く深呼吸でもするように、ときどき大きく煙を吐いていた。





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