今回の研修には多くのメニューが用意されていた。閉校した小学校の校舎を利用、アワビを養殖し、地元のホテルなどに出荷している養殖場を見学。稚貝から約2年間育てた後、小さめだが年間7,8万個を出荷しているという。漁協女性部「ひより会」では、ハタハタを使ったしょっつる(調味料)の作り方の説明を受けた。魚市場に行くと、その日に水揚げされた、さまざまな魚の荷揚げ、セリを見学できた。少し荒れた海の現場で、底曳き網漁の模様に目を凝らした後は、そこで獲れた数種類の魚を「ひより会」のメンバーの指導を受けて調理。自分でおろした刺身を味わった。釣竿を手にサバやメバルなどの手ごたえも体験した。
「日本海は荒れるが、魚の種類が豊富な恵みの海だ。店で売っている魚の3分の1か4分の1が漁師の手取り」などと説明した、秋田県漁協北部総括支所の庄内章業務課長は「この研修が町に移住するきっかけになってほしい」と期待する。本人も定年を迎える来年には「タイ、メバル釣りの漁師としてデビューする」と笑顔を見せた。一方で「ひより会」会長の岡本リサ子さんの目は厳しい。「漁業者になりたい、という人は来るには来るの。でも長続きしない。半月か1か月で辞めてしまう。サラリーマンと違って、給料は歩合制だしね」。岡本さん宅は底引き網漁に従事しており、体験がそう言わせる。それだからこそ「漁師は厳しいけど、漁に出るのは、時化とかで、月に14日ぐらい。こういう機会に、だれか1人でもいい、本当に漁師になってくれる人がいれば、本当に嬉しい」と願いを込めた。
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