【続・仙台ジャズノート#140】ドラマ性十分な「DOXY」。入り口はフィル・ウッズだった。

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

佐藤和文】アマチュアのバンド活動を長い間続けているうちに、多くの曲と出合うことになります。学生時代に始めたドラムではどちらかと言えば、リズム一辺倒で、選曲は他のメンバーにおまかせでした。60過ぎてアルトサックスに移ってからは、ジャズスタンダード中心に、メロディ、ハーモニーの世界でたくさんの曲と新しい縁ができました。その中でも特に印象的な曲の一つ、ソニー・ロリンズ(サックス)の「DOXY(ドクシーあるいはドキシー)」は筆者がジャズ音楽の魅力に気付くきっかけとなった曲です。曲の理解やアドリブ技術の習得など、まだまだ未熟ですが、演奏する側に回ることの楽しさを教えてくれた曲でもあります。

「DOXY」が初めて世に出たのは1954年。マイルス・デイビス(トランペット)との10-inch LP『 Miles Davis with Sonny Rollins』に吹き込まれました。1コーラス16小節。通常の曲より半拍早く始まるアウフタクト(弱起)が印象的です。

インターネット百科事典ウィキペディアによると、コード進行は1918年に米国で大ヒットした、ボブ・カールトンの「Ja-Da」から借りたもの。コード進行を他の曲から借りる作曲法はジャズではよくあるある、です。実際、「Ja-Da」の楽譜に合わせて「DOXY」を歌うことができます。遊び心が楽しい。

「DOXY」との付き合いは学生時代から数えて54年になる。どうアドリブすればいいのか。課題山積中。

曲名「DOXY」は古典的な表現で「恋人」「愛人」「娼婦」などの意味があるそうです。長い間、「恋人」「愛人」かと思ってきましたが、今回の取材でよく確認したところ、この曲はソニー・ロリンズの一行がヨーロッパツアー中、イギリスのホテルで毎日食べた「パン・スプレッド」にちなんでつけられたのだとか。「パン・スプレッド」にはパンにつけて食べるチーズやバターのほか、さまざまな工夫を凝らした多様な製品があります。残念ながら直接の記述は見つからないのですが、「DOXY」は当時の「パン・スプレッド」のメーカーあるいは製品の名称のようです。

筆者の場合、フィル・ウッズ(サックス)の「ヨーロピアン・リズム・マシン」の「DOXY」を学生時代に初めて聴きました。『Phil Woods and His European Rhythm Machine – Alive and Well in Paris (1968, Pathe)』のラストで、フィルウッズが2コーラスだけアドリブして締めくくるライブ作品でした。あのユニットのスピード感とジャズダイナミズム、ドラマ性は今聴き直しても驚きです。

さて、肝心のアドリブです。手元にある楽譜はとても複雑なので、愛用の伴奏アプリ「iReal Pro」のコード進行に合わせてコードを追うことを目標にしています。F7やA7など、いわゆる7th(セブンス)コードが続出します。あいにく練習量も、練習の質も足りないので、現在の力量ではどう演奏すればいいか迷います。コードを機械的に追うだけではアドリブにはならないし、ジャズらしい雰囲気を醸し出すとされる7thの音の使い方も難しい。7thコードというと、「ミクソリディアン」「オルタード」などのスケールを思い出します。日々の練習では2小節単位で、いろいろ試してみて、響き具合を試しているところです。

*この連載が本になりました

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